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冤罪! 全身拘束刑に処せられた少女  作者: ジャン・幸田
第一章・全身拘束刑に処せられた少女
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001・被執行者がみるべき説明動画

 粗末な留置場の衣服を着せられた少女が連れてこられたのは、地下倉庫のようなコンクリートの壁で囲まれた閉鎖空間だった。そこは非正規な組織が運営しているようにみえた。その壁をスクリーンにして投射された画像は正規のものであった。タイトルには「司法省行刑局監修」とあった。


 画像には一人の中年女性が拘束されていた。説明によれば彼女は「ヘイトクライムによる大量暴行および保険金目的で従業員二人を殺害」したという。ほんの十年前なら死刑か無期懲役になるはずだが、この女はもっと過酷な運命が与えられようとしていた。それは「全身拘束刑」だ!


 死刑制度が廃止され、懲役刑も新規に受けると刑務所に入ることがなくなったのは八年前のことだ。それからというもの犯罪者の程度によって身柄を拘束されて社会で過ごすようになった。罪が軽ければ居住制限を受けGPSを体内に埋め込まれ、半ば強制的に社会奉仕活動に従事させられるが、罪が重くなれば様々な措置が課せられるわけだ。


 そのため、殺人犯のような凶悪犯罪者はほぼ全身の肉体改造を受け、ロボットのような姿に変えられ、また精神を司る脳も、電脳化され記憶も書き換えられ、あとは社会の下僕もしくは機械的奴隷にされるわけだ。死刑の代替刑が全身拘束刑というわけだ。


 凶悪犯と断罪された中年女性の身体は機械に拘束され、体内に肉体改造用のナノマシーンを投与された。そしてしばらくすると体表が青白くなってきたところで特殊な樹脂と金属で構成された外骨格を身体にはめられた・・・


 一時間後、中年女性だった身体は消失し、代わりにロボットの機体に生まれ変わっていた。彼女の身体は人間と寸分変わらぬ姿をしたAIガイノイドが量産化されているご時世では、時代遅れでしかない、メタリックな光沢をもつ機体をしていた。その中にある彼女の肉体はナノマシーンによって機械へと改変されていた。そして電脳化された彼女の意識は書き換えられ、国家によって害とされた存在は消され、機械化された元の身体を統括するだけになっていた。一体の機械奴隷が誕生した瞬間であった。


 「こんな身体になるなんていや! ここまでの事はしていないわよ! これは冤罪よ!」


 少女は泣き叫んだがそれは無駄だった。泣き叫ぶ少女の襟首を掴み上げた刑務官ロボットはこう言った。


 「なによ今更! 決まったことなんだよ! お前の身体はもうすぐ血が通わないものになるんだからな、せいぜい泣いていろ!」


 鈍く光る刑務官ロボのボディは正に地獄からの使徒であった!

 

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