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CBM-015


「怪物討伐の際には国境を超えた活動は問題ないはずだろう?」


 交渉は相手の動揺から始まった。その時点で下っ端なんだろうなということが伝わってくる。俺ですらこうなのだから、本職の兵士達にとってはある意味で頭が痛い問題であろう。


「ああ、そうだ。だからこそ、協力しようじゃないか。こっちは俺たちの国なんだからな」


 そう、国境を超えての活動は国同士の決まりで問題ない。そこには当然のように別の物もついて回る。1つの国だけの問題ではないということが。


「まずは荷物とけが人からだな。さあ、こっちへ」


 この問題を考えた時、正しく利用されていればとてもいい決まりで、悪用されると国境があいまいになるという問題があると考えた。今回もどちらかというと後者のためのように思えて仕方ないのだが……。





「そして積み荷からは怪物を誘引する諸々が見つかる……と。成功すると思ってたんだろうか?」


「思ってるから実行したんでしょうねえ」


 隣国の兵士らしき集団と遭遇し、保護とは名ばかりの検問のようなものを行った結果、怪物の子供だけでなく、良くない物も出てきたようだ。人間には特に感じないが、ある種の怪物にとっては惹きつける形になるあれこれ。たまたまマスターが指摘できたからよかったものの、押収品として普通に保管していたら危なかった。あるいは見つかることを込みで、それすら計算に入れていたのかもしれない。


「俺たちとしてはお金も、物ももらえて両得だったからいいか……。どうも怪しいな、仕掛けてくる……ないか」


「戦争はこれだっていうきっかけはなかなかないらしいですからね。昔は上の人の女性の好みで喧嘩になったことが発端だったりしたこともあるそうですよ。お互いのお嫁さんが好みじゃなかったとか」


(だからって国同士の問題になるような口の出し方をするか? 人間はわからんな)


 報酬としての現金、そして薬に利用できるならと押収品もいくつか貰うことができた。既に薬に加工済みなので誘引作用は無いようだ。隣国の兵士達は、知ってか知らずか、どちらにせよ危険な物を運んでいたということで事情聴取中。表向きは協力して怪物退治をするためとしているがこうなると相手も動く憎いだろうな。


「召喚士エルサ、時間はあるだろうか」


「私は召喚士ではないですけれど……ええ、なんでしょう」


 そんなところに来客。装備はしっかりしているから討伐者でも有力、あるいは兵士の1人だろうか。やや強面だがそのぐらいじゃないとな。ここの長みたいに優男風なのが珍しいのだ。戦いだけではないということを示すためにと俺も椅子を運び、座ってもらう。マスターの横に直に座れば気の利く従者と見えるだろう。


「そこまで自主的に動く召喚獣は稀だと思うがな……まあ、それはいい。今回の件は非常に助かった。気が付かなければここもひどい目に合っていた可能性が十分ある。そこで、臨時の報酬が出た。最初は現金の追加でどうかと思ったのだが、よければだが装備の提供ということでどうだろうか?」


「こちらとしてはありがたいですね。何分、体格が体格ですから」


 うちのマスターは人間の女としては特定の場所が大きいようだし、体格としてもなかなか大きい方に思える。俺もコボルトであるから比較すると随分と小さいしな。装備というか衣服にも気を使う必要がる。この申し出は嬉しい。




 数日後、いくつかの装備の提供を受け、再び森にでかけていた。安全のためには他の人間と組むのも手ではあるが、俺という存在がその邪魔をする。見た目は怪物のコボルトと何ら変わらず、首輪と装備、あるいは喋っていれば区別がつくぐらいだ。


「万が一があるとお互いに面倒ですから」


「確かにな。さて、次あたりで一度戻ろうか」


 今日は獲物になかなか出会えず、予定よりやや長距離の移動となっている。件の国境に近く、あいつらの話が本当ならこのあたりにも怪物が逃げ込んでいそうだが……さて?


 少し進むと、川にぶつかった。この川は……陣地まで続いているか? 簡単な地図しかないからずれている場合もあり得るな。今のところ、川には怪物は確認されていないようだが、それは生き残った奴がいないだけということも考えられる。


「マスター、俺の腰を何がで縛りながらイカダに乗せて渡ってみようか」


「わたるだけなら簡単ですよ。手を伸ばせばすぐそこに新たな大地が……森の架け橋!」


 自然魔法は大規模な戦いには向かないとされている。それは術者のマナ量に威力などが直結することと、例えば広範囲に暴風をとかするとその消費もとんでもないことになるからだ。そのため、とある場所に強風をといったぐらいが限界なのである。それでも、マスターの魔法の腕は相当どころかかなり上位に思う。


 普段の威力もそうだが、こうして伸びた草木が小さな橋となるのだから。


「そのうち無くなっちゃいますからね。行きましょう」


「お、おう」


 初めての経験に驚きつつも、出来立ての橋を渡る。案外しっかりしている橋を見ていると、視界には揺らめく川面。一瞬何かが動いて……とおっ!


「飛ぶぞ!」


「はいっ!」


 説明を聞かず、マスターも一緒にそのまま対岸へと飛ぶ。少し遅れて、草木で出来た橋は何かにかみ砕かれた。わずかにだが見えたその姿は、なんだろう……トカゲを凶暴にしたような見た目だ。口も長い。


「リバニワですね。種類は違うかもしれませんけど。皮も便利で、お肉も美味しいらしいですよ。だから人間の近くの物はかなり狩りつくされたらしいです。危険ですしね」


 なるほど、確かにあれだけの大きさで肉も皮も有用で、さらに放置は先ほどのように川で何かするのに危険となれば退治もされるだろう。帰りにでも余裕があれば狩ることにしよう。


「こっちはほとんどどころか全然人が来てなさそうですね」


「そのようだ。足跡もないし、枝を切ったような跡もない」


 幸い、何かが隠れるような草も少ない。もっとも、少し歩いた先にはうっそうと茂みが……んん?


 視線の先には小高い丘。丘を覆うように草木が生え、自然の豊かさを感じる……のだが、何かが見える。ちょうど目印になりそうな巨木の脇が、黒く穴があるように見えるのだ。


「マスター、前方の巨木。洞窟か何かがないか?」


「え? あー……本当ですね。ちょっと風で一当て……危なかったら逃げますよ」


 これで案外、うちのマスターは好戦的である。正しくは好奇心旺盛。黙ってなかったことにはできない性質である。いつでも逃げれるようにして、見えた黒い穴へ向け強風を打ち出した。


「遺跡……?」


 そうして草花が押し倒され、視界が広くなった先に見えたのはぽっかりと口を開けた黒い穴、ただし周囲には石が組まれており、明らかに人工の何かだった。



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