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81 君の気持ち、僕の気持ち

 時間は一日遡る。

 この日。ロキは郊外にある小屋の中にいた。

 時刻はまだ朝になったばりで外では鳥が鳴いている。

 勢いをつけて開けられた扉、中に居るロキが思わず身構えるとアリシア女王の顔が目に入る。

 その顔は、ロキを見つけると走ってきて抱きつく。そして直ぐに頬にキスをしようと顔を近づけてきた。



「近いっ。近いからっ。キスはだめだランが困っているだろうっ!」



 ロキの叫びにアリシア女王は振り向く、中年太りした国王、ランが困った顔をしていた。



「ロキ、僕に振られても困る。しかしまぁ、自分の奥さんが他人にキスをしているのを見るのは心苦しいのはある」

「あーもう、しょうがないわね」



 アリシア女王は、抱きついたロキから離れるとラン国王の正面に立つ。

 つま先立ちをすると、ラン国王の顔をがっちりと掴み突然キスをした。ロキにしようとしていた頬のキスではなく、唇と唇が繋がった濃厚なキスである。


 暫くそのままの状態の二人。

 後ろから四人目の声が掛かった。声質は若いが落ち着いた声、耳が長く魔法ギルドマスターであり宮廷魔術師長のファイブである。



「ふむ、朝からお盛んな事だ。人間の寿命は短い、頑張る事は大事と思うが今朝は親睦会と聞いたぞ、それともそういう親睦会なら、私は帰らせてもらおう」



 ちゅぽんと音を立てて口を離すアリシア女王。四人目の声の主を見て文句を言い出す。



「ファイブちゃんには歳がとり過ぎて刺激が強すぎたかしら。旦那様、これで良いかしら。ロキちゃんは大好きだけど、私が愛しているのは貴方のほうよ」

「え。ああ。うん。そのごめん。っと、ファイブごめん」

「国王、いや。いまはランと呼びすてで構わないのか、気苦労を察する」



 四人がそれぞれの場所へと適当に座る。

 椅子に座ったり、壁によりそったりだ。小さい小屋なので室内にいれば何処に居ても声は聞こえる。



「さて全員集まった所で悪いけど、早速本題に入らせてもらおう。君たちは僕に何を隠して、あの子に何を入れた」



 ロキが三人を見てはっきりと喋った。

 言い逃れは出来ないような口調である。



「もう。ロキちゃん怖いー」

「ふむ。こわーい」

「ファイブまで真似しなくていいよ。まったく……。城中の魔力吸い取ったんだろ、僕も傷は見てきた。もはや治癒などのレベルじゃない」



 椅子に座っていたラン国王が喋り始めた。



「ロキには悪いと思ったんだ。しかし、君も悪い」

「ほう。なんで僕が」

「勝手に城勤めを辞めて田舎に引きこもる。魔法使いという職の人気も下がり国をあげて象徴するような人材が居なかった」

「そういう政治的な話が嫌で辞めたんだけど……。ファイブは?」



 ラン国王の言い分が一区切り付いたので、ロキは壁に寄り添ってるファイブへと尋ねる。

 長い銀髪無造作にしたまま苦い顔をする。



「ふむ。ちょっと面白い人間が生まれたって聞いてな……。最初はこっちで面倒を見るつもりだったんだ」

「面白いって……」

「聞いてくれるかっ」

「いや、そりゃ聞かないと先に進まない」



 少し興奮し始めたファイブはロキへと力説しはじめる。



「我々が封印した迷宮にな。エンシェントドラゴンが居たんだ」

「居たって……。もちろん手に負えないから封印したんでしょ」

「言いか、ロキ。伝説級の魔物は英知があるのが多い、もちろん無い奴もいるが……。氷蛇だってそうだったんだろ?」

「まぁ。僕の場合は、向こうはもう年老いていたし。町に必要な水場でもあったから、なんとかしたわけで」

「そこだ!」



 ファイブは天井を見て直ぐにロキへと詰め寄る。



「こっちも、ある冒険者にその古代ドラゴンを何とかしてもらった。けっして研究材料が欲しかったとか、その隠された財宝の在りかを知りたいとは思わないで欲しい。現に、そのドラゴンは既に寿命が来ていてな、討伐するメンバーが行った頃には骨しかなくて収穫は全然だった」

「なるほど……」



 ロキが小さく呟いたので、ファイブが短くほうと、呟いた。



「その討伐隊がなんらかの影響を受け。さらには、その影響は倒した本人じゃなくて子供に受けづいた。って事でいいのかな」

「ふむ。すばらしい推理だ」

「で。そこから何で僕の所に」



 アリシア女王が元気欲手を上げた。



「はいはいはいー。私でーす。これでも色々あったのよ、その子、カレンちゃんの事ね。その力を吸い出せないかとか、制御できるように訓練させればいいとか、うまく使えれば国一つぐらいは滅ぼせる力よ。三人で色々話し合った結果」



 最近では大砲など魔法使い以外でも使える兵器が開発されて来たといっても、力のバランスは魔法使いのほうが上だった。

 しかも、カレンの能力は辺りの魔力を吸い取る事が出来る。旨く力を使えば相手の国の魔法使いなど殲滅できるのだ。

 


「結果?」

「面倒なのでロキちゃんの所に送り込みましたー」



 ロキは椅子に座ったうなだれた。アリシア女王はロキの頭をなでなでとし始める。



「でもあれよ。兵器としての話は少なからず出るわよ。私もランも何時までも国を守れるとは限らないし。ファイブは、今は魔法ギルドマスターだけど、決定権はないわけじゃない? ロキが旨く育て上げて、彼女が力を制御できるようになれば万々歳」

「そうだぞ。元人間兵器っ!」

「まて、僕は何一つ悪くないっ! それに元って言い方もっ」



 ロキが顔をあげ三人に反論する。

 ランだけは同情的な目をしているが、特に何も発言はしなかった。

 ああだ、こうだと長い時間を話し合う。

 教会の鐘が昼を告げる。

 アリシア女王が素直な感想を漏らす。



「疲れたわね……」

「わかったよ。このまま話していてもカレンの事は結局代わらないとわかった」



 ロキはどうしてカレンが弟子に来る事かもわかり、ある程度説明もされて納得した。

 あとは頃合を見てお開きにしようと提案したのだ。



「彼女次第よ。ラッツの嫁になるのもよし、魔法使いになるのも良し、ロキの嫁になるものよし。よ、ロキちゃんから貰ったデーターを照らし合わせると力は落ち着いてるし定期的に魔力を発散させ、補充すれば日常生活には……、あれロキちゃん、なんで咳き込んでるのー?」

「き、きみが変な事を……」



 ロキが顔を上げると、アリシア女王がニヤニヤしている。

 ファイブがふむみ笑いをする。



「ふむ。子供が出来たら伝えてくれ、魔法ギルドは子育てのアイテムも充実している」



 それでは、失礼すると、言ってからファイブが小屋から出て行く。

 ラン国王が見送るために外に出ようとした。

 立ち止まりロキのほうをみる。



「ロキ、君の事だから忠告しておくけど、今度は逃げないように。今でもたまに思うんだ、君が国王になるべきだったんじゃないかと、お互いいい年なんだ。そろそろ子供でも作ったらどうだ? っと、ロキっ! 魔法はダメだっ! じゃっアリシア、先に城に帰るっ!」



 ラン国王が慌てて扉から出て行った、その場所には数本の氷の槍が突き刺さり直ぐに消えて行く。

 アリシアは直ぐ消えた魔法を見てロキを心配そうに見える。



「さて、私も帰るわよ。ロキちゃん、ロキちゃんは昔から、よく我慢しているけど、ロキちゃんはカレンちゃんをどうしたいの?」

「僕は、依頼された事をするだけだ」



 ぶっきらぼうに答えるロキを、アリシア女王はなだめ話す。



「ふーん。だったら別にカレンちゃんを連れて旅しなくてもいいだろうし、ロキちゃんがカレンちゃんに必要以上に魔力を与える事もなくない? ロキちゃんの魔力かなり減ってるわよね。現に全てがばれちゃった今、ロキちゃんはカレンちゃんを育てるのだって拒否出来るのよ? ま、それはそれで良いんだけど……。じゃぁまたねっ」



 ロキが顔を上げ時にはアリシア女王も外の馬車へと乗り込み帰っていった。

 


「僕の気持ちね……」



 そして時間は夜になり、ロキはカレンのお見舞いへと向かった。

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