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76 国王様と非公式謁見

 騒動の後、カレンとマチルダはアルマの案内で城の中を軽く案内される事になった。

 書物室に、食堂、大広間に教会など、いまは手入れをされた小さなテーブルと椅子がある中庭で食事を取るという事になった。



「ここに入る人はめったに居ません。先ほどみたいな事は無いと思います。あの、今からでも私が……」

「大丈夫大丈夫、あの神父さんも言っていたじゃない。首さえ繋がっていれば回復魔法かけますって」



 カレンが先ほどあった歳の取った大司教の話を振る。

 訓練試合をする事を伝え、その医療班として来て貰う事を頼んだのだ。

 白く長い髭を揉みながらにこやかに話したのだ。



「冗談に決まっています。いくら大司教でも首と動が離れたら繋げる事は不可能です」

「おねえちゃん、しんじゃうの?」

「やだ、もう死ぬわけないじゃない。アルマさんも大げさなんだから」



 アルマはそれ以上は何も言わず、遅めの昼食を用意する。

 食堂から小さな台車に乗せてきた焼きたてのパンにサラダと紅茶。バターにハチミツ、さらにマチルダ用に果物のジュースまでテーブルに並べられていく。

 ちなみに、問題発言をしたアリシア女王は、カレン達が回る前に責務があるからと早々に離れた。



「にしても、マチルダちゃんよかったねー」

「うん。パパうれしそうだった」



 書物庫にいき、マチルダの父親アレグレアに挨拶をした三人。

 突然の来訪者に驚き、エレノア婦人によくしてもらっている事を話すと、アレグレアもカレンに対して好印象に対応してくれた。



「それにしても、アレなんですね。私が貴族でもないのにフレンドリーというか」

「……。王に女王様は身分よりも人柄を重視する采配を好みます。城全部がそういうわけではありません」

「あっ! もしかしてアルマさん、私に気を使ってくれてそういう場所を……」

「カレン様、紅茶が切れてしまいました。代わりを入れてくるので少々お待ちを」



 カレンの質問には答えず。アルマはそそくさと場を離れる。

 


「もう、素直じゃないというか」



 アルマが走って行った方向とは逆から入れ替わりに、だぼだぼの服を着た中年男性が秘密の中庭へと入ってきた。



「やぁやぁ。君がカレン君かな」

「あ、はいっ。はじめまして」

「こんにちわーっ」



 カレンは知る由もないが、かれこそ前日の日にロキと飲んでいた男性である。

 


「にしても、迷惑事をすまないねぇ」

「えっ。あの……。アレの事ですよね」



 もちろん、訓練の事であるが。秘密裏に行うといわれた事であった。

 この中年男性が知ってるのでカレンの頭は混乱する。



「ああ。混乱させたかな。アリシアから聞いてね。そういえば自己紹介がまだか、俺の名はラン、こう見えてもロキの親友でね」

「ええっ! 師匠って親友が居たんですかっ!」



 カレンの本気の驚きに、ランは暫く沈黙した後に笑い出す。



「あっはっは。確かに、あいつに親友なんて俺ぐらいな物だろう。しかし、さすがロキの弟子だ。そっくりだな」

「えっえっ!? あの私変な事言いましたっけ」

「変な所に噛み付く所とか、あいつも自分のやりたい事はいくら周りが止めても聞かないとか。そうだ思い出してきたぞ……」



 中年男性はぶつぶつと怨嗟を言っていく。

 カレンはどう言葉をかけていいかわからず、マチルダもちょっと引いてる。

 紅茶を入れ替えたアルマがカレン達に気が付いた。

 動きが小走りに変わり、近くによって来た所で小さく声を出す。



「ラン国王様っ!」

「え?」



 カレンがアルマと中年男性のランを見比べる。

 事の大きさに気づいたカレンは慌てまくった。マチルダも王様はわかるのだろう、一緒になって挨拶をしようとする。

 


「は、はじめましてっ! も、もうしわけっ」

「お、王さまっえとえとえと……」



 パニックになる二人に、ラン国王はにこやかに手をかざす。



「ああ、そのままでいい。アルマ、俺にも飲み物を貰えるかな」

「畏まりました」



 アルマはカップを置くと、紅茶を注ぐ。その他にもパンを切り分けバターと共にラン国王の前に差し出した。



「さてさて非公式とはいえ、面倒事に巻き込み申し訳ない。この場を借りて謝罪しよう」

「いえいえいえいえっ! あの、好きでやった事ですしっ」

「なるほど……。アリシアが心配していてな、最悪ラッツを出そうと思ったが大丈夫そうだな」

「ありがとうございます。ラッツ王子様ですか?」

「ああ。剣の腕に関しては強いほうだ。もっともアルマには負けるけどな」



 ラン国王の答えに、アルマが一礼して否定する。



「ラン国王様、お戯れを。ラッツ王子のほうが上でございます」

「これは、すぐ能力を隠す。さて、訓練は見に行けないか、無理と思ったら棄権でもしなさい。隣国に何言われようが我が国は揺るがない、さてアルマ後は頼んだぞ」



 ラン国王は、パンと茶のお礼をいって席を立つ。

 残されたカレンは深呼吸をし始めた。



「おねーちゃんどうしたのー?」

「もう、どうしようねー。女王様の次は国王様よ緊張したのよー」



 カレンはマチルダの頭をぐりぐりとなでる。

 手を跳ね除けようとしているマチルダをみて、アルマもカレンも微笑み返す。

 


「もう。やだっていってるのにーなんで、なんでー」



 時間がきた。

 一般の訓練場所とは違う訓練場らしく、魔法具の光で照らされた室内。

 丸い石で出来たリングがあり他は着替えのための場所があるだけの殺風景な場所であった。

 既に隣国のキール第二王子は椅子に座っている。



「ほう。逃げずに来たか」

「そりゃまぁ、約束ですし」



 キール王子が挑発するなか、カレンが全うな意見を言う。

 気に入らないのか、直ぐに鼻を鳴らす。



「用意しろ、武具がないから負けたと言われても胸糞悪いからなっ」

「わかりました」



 カレンが返事すると、アルマがこちらですと、室内にある小部屋の中へカレンとマチルダを招き入れた。

 カレンはアルマに言われるままに服を脱いでいく。上の下着まで脱ぐと大きな胸を固定するために白い布を巻く為だ。

 普段はしない事であるが、準備はしたほうがいいとアルマの願いでもある。



「おねえちゃん、おっきいー」

「どうもありがとっ。でもマチルダちゃんも大きくなるからねー」



 小部屋の扉がバンッと音を立てて開かれる。

 ラッツ王子が怒り顔で喋りだした。



「何で来たんだ。来なかった僕とキールが模擬試合をして終わる予定……だ……」



 ラッツ王子の言葉の勢いが止まる。

 ショーツ一枚のカレンと視線があった。

 ラッツ王子の視線がゆっくりとしたにいくとカレンの二つの胸が見て、ごくりと喉を鳴らす。



「ラッツ王子様、準備中です」

「ごめんっ! べ、別に覗くつもりじゃ。その忠告をしようとして」

「ラッツ王子様、一先ず外でお待ちに成られては」

「ああ。そうだった、アルマ。うんそうだな。ご、ごめん」



 ラッツ王子は直ぐに外にでる。

 アルマはカレンに謝罪をする。



「申し訳ありません、カレン様。王子は故意ではなく」

「まぁ、恥ずかしいのは恥ずかしいけど事故ですし、うん。事故事故」

「おねーちゃん、かおあかーい」



 しっかりと布を巻き、皮鎧を装着する。

 立てかけられている銅剣を握り締め軽く振りふった。

 


「剣先はつぶしてあるんですね」

「ええ。でも、怪我。いいえ、死ぬ可能性が少し減っただけです。いくら神官が居ると言っても無理は禁物です。今ならまだラッツ王子に託す事はできますが?」

「あはは。ありがとう、でも約束は約束」



 小部屋からでてくると、不満顔のキール殿下と、赤い顔のラッツ王子、その横では先ほどであった大神官が髭をなでながら待っていた。



「お待たせしました」

「ではいくぞ。神官の用意もされた。非公式とはいえ、この国を叩けるとは嬉しい話じゃないか」

「では、僕が審判をする。二人とも前に」



 キール王子と、カレンがそれぞれリングの中央に立った。

 カレンは長剣を一本腰に付け、対するキール王子は、二本の剣を腰に付けている。

 審判であるラッツ王子が大きく叫び、手が上空へと上がった。

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