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74 カレン一部復活と突然の暴力

 昼の鐘が城下町に響く頃、カレンはエレノアの家から離れた。

 現在は城へ行くために貴族用の馬車に乗っている、乗車しているのはカレンを含め四人。

 カレン、マチルダ、アリシア女王、ラッツ王子。

 

 カレンは端に座り、その横にいるマチルダは家族と離れてのお出かけに、不安が隠し切れなく、きょろきょろと窓の外を見ている。

 反対の席には、そのマチルダを様子を母親のように見つめるアリシア女王。

 さらに、その横ではラッツ王子がカレンのほうを熱い眼差しで見ていた。

 

 カレンはその視線を避けるためにマチルダを見るか足元をみてるかにしていた。ラッツ王子がこの視線を送り出すようになったのは馬車に乗り込む前からなのだ。



「ラッツー……、そんな熱い目でみても、カレンちゃんにはロキが居るのよう」

「ん? なっ! そんなんじゃないっ! それに、母さん、普段はロキ、ロキと五月蝿いのに、この子と、そのロキ男爵がくっついてもいいのかっ!?」



 前半は反論で、後半部分は母親への反撃として放った一撃だ。



「だって、母さんがロキ男爵と『表で』くっつくわけに行かないじゃない」



 さらりと、不穏な言葉を混ぜて返り討ちにしてくる。

 ラッツはその部分に気づかず『くっついたらと』の部分であわて、カレンは『表で』のと所であわてる。



「いえ、あの。別にそんなんじゃないですし……、ご自由にどうぞというかっ、あっラッツ王子様、視線は、その私なんかを見ても何も出ませんけど」

「ああ。すまなかった。とはいえ、女王である母親がさん付けで呼ばれてるんだ。僕もオフの時は呼び捨てで構わない」



 さらりと言うと、続きを話し出す。



「僕が君を見ていたのは先ほど話しだ。送られてきた石。たしか魔法石の原石に見えた。手紙を見せてもらっても原石と書いてあったので間違いないだろう。君はそれに手を当てると中の魔力を吸いだした……。その姿が、あまりにも綺麗で、それに――」



 ラッツ王子の頭が、アリシア女王に叩かれる。



「いっ」

「あんたねー。だから、カレンちゃんを口説いてどうするのよ……」

「いや、僕は口説いているつもりは無くてっ!」


 

 あわてるラッツ王子に、アリシア女王が苦言した。



「それと、さっきも言ったけど。カレンちゃんが行った行動は秘密よ」



 カレンが静かに頷き、アリシア女王はラッツ王子に確認をさせる。



「わかっている、前例がないのだろう。あの手紙でも使い終わった石は研究材料として、カーメルに送るように書いてあった。それと、僕が言いたいのはあんな簡単な事で僕より強くなるってのがとても信じられないって話をしたかったんだ、身体能力があがってるんだろ?」



 ロキからの手紙の内容は、カレンの魔力を戻すのに魔法石を送ったこと、魔力を吸収するには魔法玉のイメージと反対の事をする事。内容は見られた場合は別として、自分から言いふらすような事はしない事。

 

 後は、数週間は暮らせる旅費と共に足りなければ魔法ギルドへ取りに行けばもらえる事などが書かれていた。肝心のロキの場所は一言も書かれていない。



「みたいです。とはいえ、私自身にも何処まで上がっているか謎ですけど……。それにしても、師匠はなんで、荷物と手紙だけだったんでしょうか、裏で危険な事してるとか」

「ああ、それ? 私がエレノアの家に居るのばれたみたい、ロキってば昔から鈍感なくせに変な感は良いのよね」



 ふふん! と鼻息を荒くして胸を強調し威張り始める。

 ラッツ王子とカレンは、なるほどと、はもった。

 振り返ったマチルダが不思議そうな顔で三人を見ていた。



「さてさて。お話はおしまい。カレンちゃん。ちょーっとわるいけど……。お仕事用の顔になるから変でも黙っていてね」

「え。あ、はい」



 よしよし、と上機嫌になるマチルダ女王に、ラッツ王子もマチルダに静かにするようにとお願いしていた。

 馬車は石橋を渡ると城門前と付く。

 兵士数十人が馬車を囲むと、窓から見せる女王陛下の顔をみて安堵の顔になった。

 一番偉いのだろう、年配の兵士が小声で話す。



「お疲れ様です、女王様。あの……」

「わかっております。オリック宰相ですね、私から言っておきます。内密で外に出たのは東門警備長の責任ではありません」

「はっ!」



 兵長は頭を下げると、裏門を開けた。

 馬車は静かに城の中へと入っていく。



「あー、もう窮屈でしにそうー。皆自分のことばっかりー」

「死にはしないが、我慢しかない、そういう母さんも――いや、なんでもない」

「はー。その歳で達観しちゃって」

「反面教師がいるから、せめて僕ぐらいはしっかりしないと」

「まったく、良い両親でよかったわね」



 軽口を叩く、アリシア女王にラッツ王子。

 馬車が城内の奥までいって止まる。

 直ぐに廊下に出れるようになっており特別な場所なのが見て取れた。


 目の前に頭がつるりと禿げ上がった老人が走ってくる。顔を赤くしていて馬車の扉をすばやく開けた。

 馬車の中を見回して、アリシア女王とラッツ王子を見つけると怒鳴り始めた。



「このばかちんがー!」



 怒鳴った言葉から、カレンはすぐにわかった。

 今朝アリシアが真似した言葉、すなわち宰相である。



「あら、私にちんは無いから――」

「あの、失礼ですけど、そういう事ではないと思います」



 最後まで言わせる前に、カレンは突っ込みをいれる。

 涼しい顔のアリシア女王、困り顔のラッツ王子。小さなマチルダは怒鳴られて怯えていた。



「夫婦そろって責務をしないで、どこに。こっちは誘拐なども考慮して皆も心配もしてっ」

「あはは」

「笑い事ですかっ!」

「ごめんごめん。あと、爺ったら、怒鳴らなくても。こっちは客人もいるのよ」

「む、客ですとな……、はて、何か忘れているような」



 そこで初めてカレン達に気づくと、だれですかな? と、聞いてくる。



「は、はじめまして、カレンといいます。この子はエレノアさんの子供でマチルダ・サモンちゃん」

「失礼。先代から宰相をしております。オリックですじゃ。その子はエレノア、なるほどアレグレア書物室長の娘か、して、女王。こちらは、お前さんは何処の娘様でしょうか。身なりも、そのずいぶんと軽い格好にみえますが」



 ようは、貴族らしからぬ格好で、平民っぽいし、この場所には似つかわしくない人物だけど誰だですか? という意味である。



「私は――」



 カレンが自己紹介しようとして、アリシア女王が静止させた。



「この子は。ロキ男爵の弟子」

「む……、むむむむ……。むむむむむむむむむっ!」



 オリック宰相は、むむむしか言わなくなる。

 考え事を始めたのか目をつむりながらうなり始めた。

 アリシア女王は、人差し指を唇につけるとカレンとマチルダの手を引っ張りその横を通り過ぎる。

 その主観、ぱっと目が見開くオリック宰相は本日二度目の説教に入った。



「逃がしませぬぞっ! 今日という今日は、女王とは何かをですなっ!」

「パースー。その話はラッツかランにでもしておいてっ! こっちは客がいるからー」



 二人を引っ張り走りだす。

 ラッツも逃げようとしたのだろうが、すぐ近くに居た、オリック宰相に捕まったのをカレンは確認した。

 

 助けたほうがいいのだろうが、引っ張られている分無理な話だ。

 もちろん、カレンはラッツを引っ張ることは出来るが、そうなると手を振りほどく事になる。そして強引に振りほどくと、女王とマチルダが転ぶと危ないのでなすがままである。


 逃げ切ったアリシア女王と二人は豪華な客室へと通された。

 ベッドこそないが、ふかふかのソファーに埃一つ無いテーブル。綺麗な敷物に数々の調度品、部屋の広さは大人数十人は入れる大きな部屋だ。



「じゃ、ちょーっと女王としての仕事してくるから。信用置ける人間をよこすからちょっとまっていてね」

「はいっ!」

「おねえちゃんまたねー」



 アリシアはマチルダに抱きつく。

 マチルダが苦しいというまで堪能したあと、ゆっくりと離した。



「はー。女の子は可愛いわね。今度ランに頼もうかしら、まぁ頑張るのは私のほうなんだけど」



 アリシア女王が、マチルダには通じない冗談を言いながら部屋からでていく。

 マチルダはソファーにちょこんとすわると素直に静かにしていた。

 アリシア女王じゃないが、カレンも思わず抱きつきたい衝動にかられ腕を押さえている。

 なんとか我慢できたのか深呼吸をし始める。


 直ぐにノックもなしに客間の扉が開かれた。

 眼つきの悪い青年が部屋を見回した。皮鎧を着けており腰に長剣を備えた格好を見てカレンは自分達を案内に来た騎士の人と思っていた。


 挨拶しようと、自然に頭を下げる。

 しかし、青年はカレンへと見向きもしないと、まっすぐに歩きだす。

 椅子に座っているマチルダの前は立ちはだかった。

 当然マチルダは下から青年を見上げる形になると、次の瞬間、青年がマチルダをいきなり殴った!。

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