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65 反動と師の秘密

「あのー師匠の方はっ。大丈夫です?」

「大丈夫。と言いたいけど、流石にこの歳には応える」

「案外折れるのが早いというか……」

「なんとでもどうぞ、重いのは重い」



 現在二人が居る場所は、訓練所から街道にでる獣道、即ち森の中。

 カレンの魔力消失、その副作用はカレンの体力すら奪っていた。

 見た目は変わらないが、以前の半分ほどしか力が出ない事と判明、手分けして運ぶ事になったが、すでにロキの体力は底を付きそうになっていた。



「師匠、とりあえず街道ですっ!」

「少し休もう」



 カレンもその提案を何も言わないで受け入れる。

 街道の草むらに荷物を置き腰を落ち着ける二人。

 二人の間にある、微妙な空気。

 肩で息をしているロキへと声をかけるカレン。



「あのー……」

「流石にだめだろ」

「まだ何も言ってませんけど」

「この荷物捨てるって意見だよね」

「あのですね。いくら私でも捨てるってのは思っていても口にだしません。私も魔力と共に体力も落ちてるとは言え、ここまできついとは思ってませんでした」

「少しは思ったのか……予定では一個は僕が持つ予定でもあったんだけどね。見通しが悪かった。ごめん」

「えっ! いえっ! 別に師匠を責めてるわけでもなくっ」



 ロキが素直に謝ったので、カレンは慌てて立ち上がる。

 ロキのほうでは気にした様子も無く口元を隠し考え込んでいた。

 

 考え事をしているロキを邪魔しないように見つめるカレン。

 再び遺跡の欠片が入った木箱へとお尻を落とした。



「師匠ー。魔法でなんとかなるとかないんです?」

「無い事も無いけど、目立つ。あと僕が倒れる」

「はいはいはいーっ! 案だけでも聞きたいですっ」

「氷の魔法でソリを作り、それに乗せる。まず目立つ、常に魔法を維持しなきゃならないので魔力の消費も激しい。溶ける」

「やっぱり、依頼された荷物捨てていくんですっ!?」

「捨てないっ! 旅馬車を待とう。割高になると思うけど次の街いったら宅配に出す」

「路銀……」

「だ、大丈夫っ」



 ロキは引きつる顔で路銀安全宣言を出す。

 この運搬の仕事も実際は重要ではなかった、ただ旅のついでで運んでくれればと、ナナリーが特別に手配した仕事。

 カレンには言って居ないが、カレンが途中で背負えなくなった場合も考えての前払いで賃金を貰っている。

 さらには、先日の貴族から頂戴した金貨なども手付かずだ。

 

 問題は、ロキがナナリーにさらに恩を作った所であろう。

 ロキはナナリーからかなりの優遇を受けている。返そうにも金銭は受け取らない、全ては、惚れてるからいいのですわと、かわされる。

 


「まったく……。僕の何所に惚れるんだ……」

「はいっ!?」

「あ。気にしないでくれ」

「かなり気になるんですけどー。そうだ師匠っ! 昨日の白蛇の魔法の事教えてくださいっ!」

「ああ。あれ……。まぁいいか旅馬車も通るまで動けないし」



 珍しくロキが昔話をすると聞いて、カレンは驚く。

 驚いた顔を見せると話をしなくなりそうなのでなるべく平常心でいようとしている。

 ロキの眼が半開きでカレンを見ていた。



「別に、そう緊張して聞くような話じゃない。カーメルの街がまだあそこまで大きくなる前、近くの水源には古い白蛇姿の魔物が居てね。いや、魔物というよりはあの土地を守護してた神族みたいなものかな。僕が倒した」

「あのっ! ぜんっぜん端折られすぎてるんですけどっ! 倒したのはまだわかります。で、なんで師匠がその白蛇を召喚みたいにできるんですかっ」



 カレンのまともな突っ込みに、ロキは困った顔をする。



「駄目かな?」

「いえ、あのですね、駄目とかじゃなくて……。あ、いえ話したくない事情でしたら、そのすみませんでした」



 カレンが急にテンションを下げるのでロキは少し笑顔になる。

 急に喋りだした。



「今の僕は、氷魔法を使えるんじゃなくて、ほぼ氷魔法しか使えない」

「え。でも、師匠前に色々使えるって……。あっでも、確かに」



 カレンは思い出して見る事にした、ロキの使う魔法は氷系だ。

 凍らしたり槍にしたり、時には壁にして回りを守ってきた。



「氷の白蛇はもう寿命も近かったんだ、自身の後継者が居なくてね、倒される代わりに僕と同化したというか。まぁこの辺りの話は面倒なので省くけど。余り回りには言わないように。知ってるのはナナリー達と今話した君ぐらいなもんだ」

「へえ……。だから火を起すのにも渋ってたんですか……」



 ケチですね。といわれる前にロキは反論した。



「火種ぐらいは作れる、納得した?」

「一年ちょっと一緒にいますけど、やっと師匠の事が少しわかった気がします」



 カレンはウンウンと頷くと、街道に顔を戻す。

 遠くから馬と馬車の車輪の音が聞こえてきた。

 ロキもその音を聴いたらしく、細目になり遠くを見る。

 カレンへ向き直ると慌てて首を振った。



「カレン、まっ――」

「すみませんー。其処の馬車の人止まってー」

「遅かった……」

「え。馬車だから呼び止めましたけど、不味かったです?」

「直ぐにわかるよ」



 カレンの呼び止めた馬車は段々と近付いてくる。

 荷馬車かと思った馬車は、豪華な作りになっており、直ぐに貴族用の馬車と判明した。

 どこかで見た顔の御者と執事が二人を見ている。

  


「カレン。君が止めたんだ、君が交渉して」

「無理無理無理、師匠えーっと、ごめんなさい、すみません、なんとかしてください、お任せします」



 かなりの早口でロキへと助けを求める。

 何所かで見た執事は馬車を二人の前で止めた。

 背後にある小窓が開かれると、これまた何所かで見た子爵が顔を出す。

 


「これはこれは、ロキ男爵。こんな街道で偶然ですな」

「そうですね。ええっと……ウイーザ子爵」


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