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44 合流

 ロキ達は灯りも付けずに山道を歩く。

 こちらの光が、相手側に見つからないためである。

 少し開けた場所に出ると立ち止まる二人。複数の人間が地面に落ちている何かを調べていた。

 ナナリーが、ロキの袖を引っ張ると隠れましょうか? と、眼で合図をする。

 ロキは黙って首を振ると普通に歩いていった。



「やぁ」



 男達がロキに振り向くと、戦闘態勢を取り始める。



「敵意はない。先に言っておく、魔法使いだ」



 ロキは左手に氷で出来た杖を出すと、その先を蛇のように動かし相手をけん制した。

 その背後からナナリーが出ると、小さく咳払いをして自己紹介を始める。



「精霊使いですわ」



 小さな火の鳥を手に出すナナリー、その姿を見て男達が持っている剣を下げる。

 ロキも出した氷の杖を空中に四散させ敵意が無い事を示す。

 やろうと思えば暗闇から奇襲もかけれる、それをしないという事は敵意がないと行動で示したのだ。



「俺達は見てのとおり山賊だ。小さい方は確か魔法ギルドの店主だよな」

「あら、知ってましたの」

「魔法使いに先手を取られているのに戦うほど馬鹿じゃない。なにかようか?」

「この惨状を知りたいかな」



 ロキはゾンビドッグの破片をしながら山賊の一人に聞いた。



「こっちが聞きたい。見回りに回っている奴が発見した、どっかの冒険者が戦闘した後だな」

「良ければ埋葬しますわ」

「頼む」



 別に山賊は全部が全部非道ではない。

 山賊は、旅人を遅い金品を奪う、ここまでは常識である。

 しかしだ、その道を通る人間が居なければ山賊だって仕事にならない、いかに通りやすく道を整備するのも備わっている。

 なので、国も冒険者ギルドも徹底して排除はしない、した所で第二第三の新グループが出来るなら山賊は山賊達で動いてくれた方が助かるのだ。

 そのほうが道を整備しなくてもすむ。


 実はフォーゲンがカレンに手渡した袋にも、この旅人はギルドのトップ関係者という証が入っている。

 山賊はそれをギルドに持っていくと幾らかの礼金を貰う手はずになっている。

 もっとも、山賊だって人間だし、約束を守る保障もなければグループが違う場合もある、フォーゲンなりの保険であった。

 

 ナナリーは小さな火の鳥を、いまだうごめいているリビングドッグへ羽ばたかせる。

 赤い炎が体を包み不死の魔物を浄化させる火の鳥。次々に処理していくと辺りは綺麗になった。

 残った液体に砂をかけて掃除する山賊。煙草をくわえると持っていたランタンに入っている火を使い煙草を吸う。



「で、用件はなんだ」

「此処を通った人間を知りたかったんだけど、その様子じゃ知らなさそうだね」

「めんぼくねえな。もう先に行ったみたいだ。状況を見る限り戦闘はあるが怪我人は以内みたいだな……。魔物の腐った液体ばっかりで血液がみえねえ。そんな所だ」

「ありがとう」



 ロキは、自らのポケットから小さな宝石を山賊へと投げる。器用にキャッチすると、ランタンの灯りで品定めをする山賊。後ろにいる仲間に渡すと再びロキ達に向き合う。



「なんなら手伝おうか」

「辞めておく、あいにくと、もう渡せる物もないし」



 空になった金貨袋を逆さにして見せると、山賊は小さく笑った。



「おっさん、面白いな」

「そりゃどうも」

「一つ忠告しておく、どの死体も見事に倒されていた、何を追っているかしらんが中々の手誰だぞ」

「肝に銘じておくよ」



 ロキとナナリーは再び闇の中へ向かって歩いていく。

 残った山賊達の一人が、追わないんですかと、一人に聞いていた。

 


「辞めとけ、辞めとけ、俺達は弱い奴から巻き上げる。夜道を平気で歩く奴らだぞ、今日の報酬はさっきの宝石だ。うりゃ三十ゴールドぐらいにはならぁ」



 ロキ達から離れた場所。森の中に二つの光があった。一つはカレンの持っているランタンの光。もう一つはルナである。



「本当なの……?」

「はい。両親の危篤だなんて嘘です。屋敷から逃げてきました」

「逃げてきたって……」

「私は平気だったのですが、彼が逃げようと」


 

 彼といわれたマキシムは今は、熱のせいで唸っている。此方の会話を聞いているようには見えない。

 


「私達を殺す為に屋敷から何人かくるでしょう」

「ちょ。殺すって……」

「だから、カレンさんは構わずに置いていって貰って言いのです」



 暫く黙って歩くカレン。暫くするとルナに聞くことにする。



「なんで、今話すの?」

「カレンさんは私達にとても良くしてもらったので、私が歩きつかれた時も、魔物の時も、今だって彼を背負ってくれてます。巻き込まれるには悪いと思って」



 カレンは押し黙ったまま歩く。急に立ち止まるとルナを真っ直ぐに見る。

 ルナも立ち止まると、二人の間が静寂に包まれた。カレンは開いている左手でルナの頬を痛みが無いぐらいに軽く叩く。



「私の請け負った仕事は、二人を隣の町に届ける事。追っては必ず来るのっ?」

「可能性は高いと思います。レイン様は国で禁止されている事を沢山しています、その中の証拠品を幾つか持ち出しました」

「なるほど、それを城に持っていけばいいのね」



 カレンが納得したように喋る。



「違います。何所の貴族も似た事はしているでしょう。彼は城に行きたいと言ってますが、わたしは違います。わたしは、ただの嫌がらせですよ。ただ秘密を知っている分口封じはするかもしれませんね」

「口封じ……。じゃぁっ、なおさら早く逃げないとっ!」

「ええ、ですから彼は急いでいるんです」



 山道の最後の休憩地点へと付く三人。マキシムの様態は悪くなり震えている。

 火を焚き、体を温めさせるカレンは今来た道をじっと見つめる。

 これ以上マキシムを担いでいくのは危険だし、かといって放置するのも危険である。


 暗闇から人影がくる。カレンは剣の柄を持ち警戒し始めた。



「どうしたんです?」

「物音が聞こえた気がする……」

「ま、魔物ですか?」

「黙って……」



 ルナはカレンの言葉に小さく頷く。

 カレンは、怪しいと思う茂みを見つめた後に、腰につけている剣をいきなり茂みへと投げつけた。

 投てきのように振り投げ、カレンが狙った場所の木へ突き刺さる。

 その茂みから可愛い悲鳴が聞こえた。



「だれっ!」



 カレンの問い掛けにシルエットが二つ茂みから出る。

 ロキとナナリーであった。



「あれ、師匠……とナナリーさん?」

「死ぬかと思いましたわ」

「同じく」



 二人が茂みからでてくる、ロキは木に刺さった剣を抜こうとするも、抜けないので諦めた。

 カレンは二人の所に小走りに行くと、余裕で木から剣を抜き二人に尋ねる。



「えーっと、どうしたんです。こんな夜中に、それもこんな場所に」



 ロキは押し黙る、二人を始末にしに来たとは口が裂けても言えない。

 ナナリーが笑顔で答える。



「実はカレンさんの依頼を聞いて、こっそりその様子を見ようかと」

「え、なんで?」

「あら、知りませんか? 初めてのお使い」



 子供が始めて買い物をするのに親が隠れてみる行動である。

 カレンは子供と思われた事で少し不機嫌になるが、心配してくれた気持ちもわかり複雑な表情になる。



「そう、少し心配でね。依頼人さんかな、僕はロキ、一応カレンの師匠であって。こっちがエルフのナナリー。魔法ギルドのギルドマスター」

「そうですか……。ここまでですかね」

「え。なんか空気が悪いですけど……」



 カレンの話は誰も聞いてなかった。


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