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42 三人の足取り

 ロキとナナリーは、屋敷から逃げた二人組を追うべく魔法ギルドの外にでた。

 日差しは高く上がっていて、冒険者のローブが少し暑いぐらいだ。

 ローブから顔を出し、前の部分を大きく開けたロキが、一歩踏み出して立ち止まる。

 ナナリーがその背中に顔をぶつけた。



「痛いですわっ。ロキ様、急に立ち止まるとぶつかってしまいます」

「ああ、ごめん。念のためにカレンに連絡入れたほうがいいかなって、数日いなくなる訳だし……」

「往復でも三日ぐらいの仕事ですわよ。過保護な――」



 ナナリーの言葉にロキが、うっと、呻く。

 過保護、その言葉に反応しての事である。

 その様子を見てニヤニヤしたナナリーであったが、顎に手をあて考え込む。



「でもまぁ、それぐらいが丁度いいのかも知れませんね。ミナトに伝言を……、頼むと余計な事に成りそうですわね。不本意ですが冒険者ギルドに寄りましょう」



 もちろん余計な事というのは前回、砂漠に行ったさいの事である。

 留守番を頼まれたミナトは、カレンとナディを砂丘に向かわせるようにけしかけた。

 今回もミナトに頼むと、何時の間にかカレンが後を追いかる。そういう心配事が頭に過ぎったからである。

 


「そうしよう。カレンが今日もギルドで仕事を探しているはずだ、フォーゲンに頼んでおけば連絡も付く」



 二人は町の反対側にある冒険者ギルドへと足早に進む。

 使い込まれた扉を開けると扉についているベルがギルド内に鳴り響いた、カウンターで暇そうにゴールドを数えているフォーゲンが二人を見る。



「よう、ロキ。お前は兎も角後ろのは珍しいな」


 

 ロキの後ろにいるナナリーを見つけると、満面の笑みで挨拶をするフォーゲン。

 一方ナナリーのほうは、感情をむき出しにして嫌そうな顔をする。



「別に来たくて来たわけじゃありませんわ。相変わらず貧乏そうなギルドです事」

「ヘン、何処かのギルドみたく成金ばっかり相手にしないのさ、ウチのモットーは、一人一人助け合いだ」

「でも、仲介料は取るんでしょ?」

「そりゃまぁ、それを言ったら魔法ギルドだって取るじゃねえか」

「あら、こっちは成功報酬ですし、話を聞くだけでお金を取るギルドとは違いますわ」



 見えない火花を出しながら言い争う二人、ロキは溜息を付いて仲裁にはいる。

 まずは、ナナリーを引っ張り、フォーゲンから離す。いつの間にかカウンター越しに言い争っていたいたからだ。

 次にフォーゲンに、わるぎはないんだと、謝る。



「ロキ様が謝る事は――」

「話が進まないから」



 静かに注意されるとナナリーも押し黙る。フォーゲンは、ナナリーをみては、ほれみろと言わんばかりの笑顔である。



「フォーゲン。カレンに伝言を頼みたい、今日も薬草取りでしょ」

「伝言は別にいいが、あの嬢ちゃんなら数日帰らんかもだぜ」



 ロキは以外な答えが返ってくると、目を丸くする。



「え。薬草とるだけで数日も掛かるわけがないっ」

「俺のほうもお前さんに伝言あってよ。今回の仕事は、護衛だ護衛。ほれ北の山岳をぬけて首都方面に行く護衛よ。ちょっと手合わせして見たんだけど、ありゃそこ等の戦士よりも強いぞ。俺の剣筋を見切って根元からドンッよ」



 フォーゲンは、自らの手首を二人に見せる。先ほどまでは我慢していたが手首が腫れているのが目に見えた。



「北の山岳か……。僕らも其処を目指しているんだけど」

「なんだ、ロキ達も護衛か?」

「護衛というか。人探し」



 両手を叩くフォーゲン、その調子に腫れた手首に当ったのか、手を上げて痛い痛いと、言う。涙目になった顔でロキに話しかける。



「なるほど、こっちにも人探しの依頼を出しに来たって事か」

「違う。ちょっと訳ありでね、逃亡者」



 フォーゲンの顔つきが変わる。誰も居ないギルド内を見回すと、誰も居ない事を確認して声をトーンを少し落とした。



「あっちか」



 あっちとは、裏仕事か? と聞いている。

 黙って頷くロキ、そしてナナリーも、そうですわと、短く答えた。

 綺麗事だけじゃ生きていけない事を知っている三人である。



「何をしたかはきかねえ、追い人が山岳に行ったと睨むわけだな」

「そう」



 フォーゲンは一人ブツブツと呟く、魔法ギルドに頼むって事は魔法がらみ、顧客は貴族が中心、貴族の場所から何かを盗むとしたら高価な物に違いない。何かを考え喋り終わるとカウンターを両手で叩いた。



「いってえええええええ」

「腫れている手首でそんなに力いれますからですわ、で。足りなさそうな頭で何が解ったんです」

「追いかけてるのは、貴族の使用人だろっ!」

「普段なら答える義務はありませんが、そうですわ」



 天井を見るフォーゲン、ロキは嫌そうな顔で尋ねる。



「まさかと思うけど、カレンが護衛している人って、僕らが追いかけている人じゃないよね」

「悪い、その可能性が高い。男の方はレイン伯爵の家にいる使用人だな。女の方はわからんが、同じ使用人だろう。追いかける奴らじゃないのか」

「まったくもってその通りですわね」

「何でまったく……」

「すまん。俺の方は家族の危篤だからと依頼してきた」

「まったく使えないギルドですわねっ! 急ぎましょうロキ様」


 

 直ぐに扉から出るナナリー。ロキを続こうとした所をフォーゲンが呼び止める。



「俺も手伝う、馬なら少し待ってくれれば手配をするが」

「いや。大きな音を立てるのは不味い。カレンも普通の依頼と思っているだろうし僕らだけで行く」

「わかった……。じゃぁ、これをもってけ、何か責任を感じる」

「フォーゲンのせいではないっ、また来るっ!」



 痛めていない手で、近くにある筒を投げて手渡すフォーゲン。冒険者用の催涙弾である。

 紐を引き抜いて投げると当り一面白一色の煙がでる。便利な分そこそこの値段はする。


 扉が閉まると静かになる冒険者ギルド。カウンターの端にある金貨をかき集めるフォーゲンは一人呟く。



「偽造された依頼って事は、あいつらが置いていったこの金って、返さなくてもいいんだよな」


 

 ロキとナナリーは、周りに変に思われようが街中を走った。

 時折すれ違う人が何事かと振り返るが、ぶつかりもせず北門を目指す。

 額に汗を書きながらロキが、今回は普通に終わると思ったのにと、一人事を言う。

 後に続くナナリーは申し訳なさそうな声を出し謝り出した。



「申し訳ありません、ロキ様。わたくしの依頼を受けたばっかりに」

「いや、どっちにしても、カレンは依頼を受けていただろうし、誰かか巻き込まれるのは必然って所かな、兎に角。北の山岳ルートは確定したし三人の足取りを見つけないと」

「どうやって捕まえますの」

「護衛を頼むぐらいだ、普通の人間だろう。夜までに見つけられれば奇襲をかけたい」

「それは宜しいですけど、カレンさんにどうやって説明をするんです?」



 ナナリーの言葉に、走っていたロキが立ち止まる。

 その背中にナナリーがぶつかり、鼻の部分を押さえ始めた。



「痛いですわ、ロキ様」

「ご、ごめん」

「しかし、まいったな……。説明しようがない」



 ロキ達の任務は、箱の奪還と秘密を守る為の処理、即ち対象者を殺す事も含まれる。一方カレンは二人の護衛。



「カレンさんはギルドの裏仕事は知っているんでしょうか?」

「普段の行動から見る限り知らないだろう」

「ですよね。そんな気はします」



 実際カレンは知らない。裏仕事が出きるのはギルド内でも信頼された人物しか明かされないからだ。もしギルドが殺しまでしてるとなると回りからの信頼が無くなるし、安易に頼む奴が多くなる。

 今回も相手が伯爵クラスの貴族であるから知っていた事実である。



「とりあえず、追いかけよう。カレンだってずーっと護衛するわけでもない、最悪次の町で」

「わかりましたわ」


 



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