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34 犯人得定箱

 里の見回りを頼まれたナナリーとカレン、二人は現在、里の中心部へと歩いている。

 本当は、ロキとサブロウで回るつもりだったのだが、怪我をしたロキはベッドで寝ている。代わりに二人に頼んだのだ。


 どこの家も窓は少ししか開いていなく、中の様子は見えないようになっていた。

 人通りも無く黙々と歩く二人。

 サブロウは、護衛という形で二人の後を少し離れて歩いてる。



「に、しても。お店とか無いんですね」

「隠れ里ですからねぇ、お土産やを開いても買う旅人が来ませんわ」



 ナナリーの言葉に、手を叩いて感心するカレン。



「それ所か、食べ物や家、その他全ても配給制と思いますわよ」

「へぇ」

「前にも少し言いましたけど、わたくしが居た里もそうでしたので」


 エルフの隠れ里、人間に似て人間じゃないエルフは、人と距離を取って生きていた。

 一番の違いは寿命である、それゆえにエルフからみて短命な人間と話が合わないときが多く、一部のエルフ達は今でも隠れ里に住んでいる。

 

 一番のかみ合わないのは約束である。

 エルフが今度会おうと約束すると、人間にとっては数年であったり。逆にエルフが人間にに何かを貸すと、いつの間にか貸した相手が死んでいて回収が出来ないなどもあった。

 ナナリーは、そういう過去を思い出したのだろう少し笑うと先に歩く。


 二人で中心部にある井戸の前を通り過ぎる。

 ぐるりと里を一周して長老の家の前まで行くと、モミジが外で洗濯物を干していた。

 三人を見かけると小さく手を振る。

 ナナリー達より後ろに居た、サブロウが走ってきた。



「モミジ殿。外に居ては危険でござる、何時犯人に襲われるかもしれないでござるっ!」

「あら、でも天気はいいわ。洗濯物を干さないと……、それにこんな良い天気ですもの。犯人だって襲ってこないわ」



 モミジは笑顔を絶やしながら、長老が着ている服を物干し台へと干していた。

 干し終わったモミジは、三人に笑顔を向けて喋りだす。



「そうだわっ。ケーキを焼いてみたの、良かったら食べて」

「ケーキ……」

「あら。良いですわね」

「任務中でござる」


 

喜ぶ二人に、モミジは一人で食べるのは少し多くてと、言う。聞けば長老は甘いものを好まない。では、カレンが何故作っているのかと、言うとモミジ殿の趣味でござると、サブロウが教えてくた。



「あら、お散歩じゃなかったの?」

「任務でござる」

「でも、他の二人は食べたいみたいよ」



 モミジの言うとおり、カレンは目を輝かせているし、ナナリーも満更じゃない顔をしていた。

 サブロウは、渋い顔をした後に、我だけ見回りをしてくるでござると、言い、長老の家を後にした。

 残った三人は顔を見合わせて、モミジが喋る。



「本当、頑固なのよねぇ。でもお二人は、受けてくれるんでしょ?」

「あの。サブロウさんの言うとおり見回り中なので」

「あら、カレンさん、いいじゃありませんか。あのだけ……」


 

 ナナリーは、駄犬と良いそうになり、咳払いをして言い直す。



「一応私達も見て回ったのですし、ここは乙女達の休憩という事で」

「さすがナナリーさん。ほら、カレンさんもこちらに」

「いいのかなぁ……」



 モミジはカレンの手を引っ張り家の中へ招きいれた。

 その後をナナリーが欠伸をしながら付いていく、その姿を物影に隠れ見ている目があった。

 結局ナナリーとカレンが、ロキのいる家に帰ったのは日が少し落ちてからだった。

 見回りの終えたサブロウ迎えに来て、二人を自宅へと送り退け、その日の活動は終わった。


 翌朝になるとロキは、カレンを呼び魔法球の訓練だけを行った。

 前回の事件で怪我を負わせた事に関係あるのか、カレンはこの特訓に逃げこしであった。



「師匠……。今日もやるんですか」

「訓練だからね。君は少し精神を鍛えた方が言い」



 ベッドの上から指示を出すロキ。

 その隣ではカレンが杖を持ち、ロキを挟んで反対側にはナナリーが見物している。



「で、では行きますっ!」

「はいはい」



 妙に緊張しているカレンをよそに、適当に返事をするロキ。

 カレンの緊張をよそに魔法球は一回で完成した。

 その様子をナナリーがうっとりした顔で見て、魔法球の綺麗さを褒め称える。



「かといって、魔法球だけ出来てもしょうがない。カレン次いけるかい?」

「次ですか……」

「はい、露骨に嫌な顔はしない。僕もアシストに回るから昨日みたいな事はない」



 ロキは断言すると、カレンの気持ちを落ち着かせる。

 カレンは一度、深呼吸をして、杖を握り締めた。


 その後暫くたってもカレンの魔法は発動しなかった。

 ロキは訓練の終わりを告げる、カレンは汗を流しながら申し訳なさそうな顔をする。



「カレン。これは、君が乗り越えないといけない試練の一つ」

「試練ですか……」

「怖いと思うから怖い。自分の中に秘めた可能性だ。と僕は思っている」

「師匠……。ちょっとだけ大人っぽくて、かっこいいです」

「あのね」



 カレンの顔が少しだけ赤くなる。ナナリーが、お疲れ様。と言うと、台所から持って来たお茶を二人に手渡してくる。



「で。ロキ様の可能性は、どこいったんですかね。宮廷魔術師は辞めますし、冒険者も辞めますし、わたくしが養うと言っても断りますし……」

「さて。ナナリー。今日も見回り頼むよ」

「ロキ様。あの、あからさまに無視しなくても」



 二日目の見回り。里に来てからは既に三日だ。

 迎えに来たサブロウが、ナナリーとカレンを連れて見回りに行く。

 そして夕方に戻って来た。

 

 カレンの魔法で、壊れた建物は日中に別の人狼が来て直して行く。

 そんな日を繰り返す日々。


 滞在し始めて一週間以上が過ぎた時に、ロキは動き始めた。

 ベッドの上で作っていた物を皆に見せた。

 四角い木の箱で箱の側面には中身が見えるように網状になっていた。その中身には水晶が入っていてた。



「師匠、なんですかこれ?」

「そうだね。カレン、手を置いてみて」

「はぁ……」



 カレンが手を乗せると、中の水晶玉が黄色く光った。



「光った。綺麗な光ですね。で、これなんです」

「犯人発見器」

「ええええっ! この黄色い光をだす、水晶が入った奴がですがっ」



 カレンは突然に叫ぶ。



「カレン、声が大きいっ」



 ロキは耳を塞ぎ、その声で料理を作っていたナナリーが部屋へ、何事かと入ってくる。



「あら、まだ服を来てましたの?」

「ナナリー。意味が解らないんだけど」

「いえ、カレンさんが黄色い悲鳴を上げたので、ロキ様がとうとう自分じゃ処理できずカレンさんを使おうとしたのかと」

「先、帰らせるよ……?」



 ナナリーの下品なシモネタに、静かに怒るロキ。

 手元の箱をみて、驚きの声をだした。



「あら、その水晶……」

「そう、サブロウに頼んで、魔法ギルドから取り寄せた」

「あの顔で町まで言ったんですかっ」

「別にサブロウが買いに言ったわけじゃないとはおもうよ。で、簡単に言うと犯人得定箱って。黄色になると無実。赤色になると犯人って所かな。カレンが見つけてくれた刀の破片。それを最後にこの隙間に入れる事で完成する」



 箱の裏に小さな穴があり、そこに差し込むんだと、教えてくれるロキ。

 ちょっと間を置いたナナリーは、手を叩き感心する。



「さすがロキ様ですわ、ではもう大詰めって所でしょうか」

「そうだね。永久に居る訳にもいかないし、あとでサブロウに相談して色々と手を考えよう、それよりまずは、朝食を取ろうか」

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