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31 カレン。魔力の高まり。

 カレンは自分の荷物から杖を取り出す、ロキに貰った上級者用の杖であり魔石が一つ付いている。

 スティックのように二回転させてロキの場所へと戻った。



「師匠、準備できました」

「えーっと。魔法球を作って」

「出来ませんっ!」

「……。自信満々に答えなくても、仕方がない。じゃぁ前と同じ体勢で」

「はーい」



 ロキが前に立ち、背後から抱くようにカレンが杖を握る。

 二人羽織みたいなポーズである。

 カレンの胸の部分にロキの頭が当る姿勢である。ロキは真面目な顔をしているが、カレンはほんのり顔が赤い。

 ナナリーがその様子をみて、おや、意識し始めてますねと、小さな声で呟く。

 聞こえてない二人が持つ杖先に光が灯り始めた。


 

「次のステップに行くよ」

「はいっ!」

「火、風、水、氷、土……後は。いや、後はいいか、何でもいいから魔法球に込めるように意識を。人それぞれに得意なのがあってね。僕は氷。ナディは風だったね。一応僕はある程度できるから。見本を出そう」



 魔法球に、赤い点が現れると火が現れる。魔法球全体を包み込み完全な火球へと変化した。ロキはその火球を小さくし、魔法を消す。



「すごい……」

「慣れてくると簡単。でもそうだな……。最初は魔力を固める感じがいいかもしれない」

「師匠も、この練習したんですか?」

「前にも言ったけど、僕は最初から魔法旨かったからね」

「うーん。不公平」

「あのね。僕から言わせれば君は魔力は豊富にあるんだから、それを持ってない人から見ると不公平なんだよ。文句を言う間にやってみようか」

「はーい」



 カレンは、言われた通りにする。最初は火球をイメージして杖を握るカレン、球の色は光のまま変わらない。水、風、氷などイメージはしているのだが、魔法球の中身は何も変化はない。


 結局は作った魔法球に、再度魔力を込めるイメージする事にした。瞳をゆっくりと閉じ手に杖の感触を大きくさせる。

 魔法球の中に一本の黒線が入った。最初は細く段々と太くなっていく。

 ロキも、ナナリーもそれを見て言葉を出さずに居た。ロキが汗を掻きながら球を制御しようする。


 黒い線は太くなり、生き物のように動き回る。

 魔法球の中が狭く、出口を捜すように動いていた。


 黒蛇。


 確かに、二人にはそう見えた。中の魔力を食べ始め、体が大きくなっていく黒蛇。



「カレンっ! ストップっ!」



 ロキの叫びに、体をビクっとさせたカレンは眼を開く。その衝撃で魔法が四散した。

 黒蛇もその衝撃で消えていく。



「もう、師匠っ。急に声を出さないでくださいっ、今何かつかめそうな感じがしたのにっ」

「そ、そう」

「どうでしたっ。私の魔法っ」



 ロキは言葉に詰まると、自然にナナリーが喋りだした。



「ええ。見事な球体でしたわよ。でも少し楽しい事をかんがえながら集中したほうが、いいかもしれませんわね」

「んー。割と考えていたんだけど。師匠っ、もう一回チャンスをくださいっ! 次は成功させますのでっ」



 元気に答えるカレン。中止にしようか考えたロキであるが、カレンの魔法を見て見たい。そう思い、真剣な顔で頷く。



「わかった」

「師匠なんだか怖いです」



 再び同じ姿勢になる。ロキが立ち、その後ろにカレンが優しく抱くようにロキを包み込む。

 一本の杖を二人で握った。

 静かに呼吸をすると、魔法球が出来てくる。

 カレンからあふれ出る魔力をロキが押し留めていた。

 


「いいかい。僕がゆっくりと手を離すから、そのまま集中するんだ」

「はいっ」


 ロキは杖を、離したり触ったりとして調整をする。

 暫くすると、ロキの両手が離れていても、綺麗な魔法球を維持する事が出来るようになったカレン。

 耐えず魔力を出し続けているカレンは、ひたいや、背中などに汗を掻いており疲労の色が少しみえる。

 

 

「ゆっくりと、目を閉じて楽しい事を考える」

「はいっ」



 杖の先にある魔法球の色が変わっていく、先ほどと同じく中心に線が現れると周りの色が黒く染まっていく。


 ロキは、ナナリーと顔を見合わせる。ナナリーが何か言いたそうな顔をしているのを手で制すロキ。



「カレン、ゆっくりで良いから眼を開けて……」

「ちょっ! ロキ様っ」



 カレンはゆっくりと瞳を開ける。自分が出した魔法球の色を確認した。



「わー。黒いですねっ! これが私の魔法かぁ。初めてにしては凄いかもっ?」



 その口調は明るく、ロキとカレンが拍子抜けするほどだった。

 ロキは、緊張した顔を解く。



「そうか、それもそうかな、カレンにとっては、出来た事のほうが大きいか……」

「何がですっ?。所で師匠っ、これからどうしたら?」

「先ずは消そう。その球をゆっくりと小さくするイメージを」

「はいっ」



 ロキの言うとおりに動こうとするカレン。

 少しずつ、小さくなって来ていた。

 ほっとするロキ。しかし途中まで小さくなった黒球の大きさが瞬時に跳ね上がった。

 その大きさは、人間一人は入る大きさになる。



「わっ。師匠っ!」



 カレンから出る魔力が、カレンの制御を振り切った。先ほどまではロキが補助していたが、今は一人だ。



「手を離して伏せろっ」



 カレンの叫び声と、ロキの叫び声が同時に響く。

 杖を捨てて伏せるカレンに、ナナリーを引っ張りカレンの上に被さるロキ。


 無詠唱で魔法を放つ。三人を守るように氷の壁で三人を包み込む。

 カレンが目を開けると、ロキの顔が間近にあった。その背後には青空が見えた。

 


「大丈夫かい。カレン……」

「は……い」

「よかった。魔力の暴走、いや、魔法の暴走って所かな」

「ちょっと、二人とも、わたくしが潰されてますっ」


 二人に潰される形になったナナリーが、這い出ると悲鳴を上げた。



「ロキ様っ!」



 ロキがカレンに抱きつく形で目を閉じる。カレンの手に熱い液体の感触が伝わった。

 ロキの背中が見えており二本の傷から血があふれていた。



「師匠っ!」



 カレンも叫び声を上げると、ロキの意識はそのまま、途切れる。 

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