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神の試練?

修行編?

八坂刀売神やさかとめのかみ様が本殿に続く石階段で仁王立ちしながら宣言する。


「今から貴様の神格を上げる特訓を行う!」


ワァー、パチパチパチ


後ろの鳥居の上に並んで座ってるオリジンちゃんや神々が拍手で応える。








俺の今日の朝は、いきなり八坂刀売神やさかとめのかみ様に叩き起こされて始まった。

元々、八坂刀売神やさかとめのかみ様は諏訪大社に祀られる神様だ、諏訪大社の創建は古事記の国譲り神話まで遡り、最も古い神社の一角として知られる。

そんな由緒正しい神社の神様がこんな田舎の寂れた神社の管理をさせられる、いくらトップの天照様の命とは言え驚天動地きょうてんどうちの人事と言えよう。

これも俺が先日オリジンちゃんの眷属になってしまったのが原因だけに、誠に申し訳ない気持ちが大きいのだ。

後、八坂刀売神やさかとめのかみ様がお召しになってる巫女服の袖に自分の名前が筆字で書かれているんだが、なぜか特攻服にしか見えない、顔も黒髪ロングで綺麗なんだけどどこか元ヤンぽいんだよな。





かしらには100回くらいは殺しても構わないと言われている」


天照様さぁ、それ人事の不満に対するストレス発散も兼ねてませんか。

その気遣いを俺にもくださいよ。


「あの〜、やっぱり神様がちっぽけな私のような人間ごときに、直接手を下されるのはどうかと…」


「貴様はもう人間ではなかろう」


チッ、この人、頭硬いんだよな、融通が効かないと言うか加減が効かないと言うか。


「組の者としてかしらの命令は絶対だ、かしらが白と言えば黒いカラスだって白いんだよ、わかったか」


今の時代、それはパワハラで訴えられるんじゃと思いつつ、日本の神は体育会系の縦社会だからしょうがないのかと、神に仕える神職と言う自分の立場を恨む。

一介の宮司が神様に逆らえるわけねえじゃねぇか!!あいつらプロ野球の1軍レギュラーでこっちは高校野球のマネージャーみたいなもんだぞ。






ジャリ


境内で八坂刀売神やさかとめのかみ様と向かい合う、うわぁ緊張してきた。


「えっ?」


正面に立つ八坂刀売神やさかとめのかみ様が消えたかと思えば、いきなり目の前に彼女の膝が飛び込んでくる。

真空跳び膝蹴り、彼女の得意技だ。この蹴りでスサノオ様が膝をついたと聞いた事がある、あの脳筋神も恐るその威力はまさに神様の折り紙付きだ。


グシャッ


あ、頭蓋骨が砕けた、こりゃ目玉も潰れているな、衝撃で後頭部から脳みそ出ちゃってるんじゃ無いだろうか、

てか、痛ぇな、死にそうなほど痛いぞ、あ、もう死んでるのか。







「お、起きたな。どうだ気分悪くないか?」


気がついたら目の前にイシュタムさんが一升瓶片手に覗き込んでくる。


「あぁ、やっぱり死んだのか俺」


「て言うか、日本の神は怖ぇな、それに容赦ないわぁ」


「いや、蹴り一つで死んじゃう俺が弱いだけですよ」


「蹴り一つ?あいつあんたが再生するたびに笑いながら頭潰してたぞ、多分40回は死んでんじゃね」


「マジかぁ、本当に容赦ないわぁ」



「ふん、繰り返してれば再生速度は上がるらしいぞ、感謝しろグズ」


八坂刀売神やさかとめのかみ様が冷ややかな目で見下して罵ってくる、罵られて喜ぶ趣味はないんで勘弁してほしいんですけど。


「ほれ、再生したなら早く立て、今日は50回はるぞ」


「あんまり死に急がなくても良いんじゃありません?神様には悠久の時間があるんですから、もっとゆっくり優しく……」


「あんまりチンタラやってたら、いつまで経っても私が諏訪大社に戻れんだろうがボケ」


「ごもっともで」



参道横の奉納相撲用の土俵に立たされる俺。


「今度は弱〜く蹴るから頑張れよ」


「さっきは思いっきりだったんですね」


「そんなわけあるか、ちゃんと手加減してるわ!」


ん、手加減してて即死ということは、弱く蹴ると…。


ボギャン!



「ぎゃーーーーーーーーーーーーっ!」


無造作に出されたローキック、あぁ、足が折れて骨が見えちゃってるわぁ、そりゃこれだけ曲がっちゃえば骨も砕けるわな。

凄え痛い、いっそ殺して。


「ぎゃあぎゃあウルセェぞ、とっとと再生しやがれ!」


痛みをこらえて、意識すればまるで逆再生の映像を見てるように折れた足が戻ってゆく、気持ちわる。


「今の感じを忘れるなよ」


そう言いながら八坂刀売神やさかとめのかみ様は今度は左のジャブを打ってきた。


パキャン!


神の一撃に俺なんかが耐えられるわけもなく、首から上が消滅しました。


倒れてる自分を見下ろす。

あれ、頭がないのにこの映像はどうやって見てるんだ?空気中に弾け飛んだ俺の細胞一つ一つがカメラになったような感覚、自我がある。霧のようになっても再生出来るのはこう言う事か。

なんかコツを掴んだかもしれない。




今度はツカツカと長い黒髪を揺らして俺の側まで歩いて来る八坂刀売神様。

おもむろに左手を俺に向かって伸ばして…


バチーン!


それがデコピンと認識した時には俺の頭は跡形も無く吹っ飛んでいた。


「ふむ、耐久力がまるでねぇな」



「すいません、デコピンで死んじゃうような軟弱者で」


しかし、こうして神様に攻撃されてみて初めて実感したが、神の一撃は人間の筋肉や骨の強度じゃ何一つ耐える事も出来ないな、俺は本当に神になんてなれるのだろうか?





西日さす参道でちょこんと正座する俺を見下ろすように八坂刀売神様が説教を始めた。


「いいか、神には死と言う概念は薄い、基本的に死ぬことが無いからな、だが人間にとっては死はあまりにも身近なことだ」


「は、はぁ」


あれ?神殺しの伝説とか世界中で残ってるような?


「そんなもん低級神か演技に決まってるだろ、それか仕事に飽きての隠居サボタージュだな」


「はぁ」


「そして貴様は、神殺しオリジンの眷属になった事で死ぬ事がなくなった、半神半人状態だ」


確かに今日だけでもう50回は死んでるらしいから、人間じゃなくなった自覚は出てきた、だけどあの痛みだけは全然慣れることがない。


「だから、貴様はとにかく死ね、一瞬で再生出来るようになるまで死ね、そうすれば痛いのも一瞬で済む」


「そう言いながら中途半端に足だけとか手だけとか吹っ飛ばしましたよね、あれすぐ死なないからスッゲェ痛いんですよ」


「そこは根性で耐えろクズ」


なんか、八坂刀売神様が言うには数をこなせば再生速度は速くなるらしい、頭吹っ飛ばされて1時間程度で再生出来る神は、基本Aランク以上の神様らしい、それ以下だと年単位での再生となる。


「えっ、じゃあアヌビスちゃんもそうなの?あ、10秒もかからないのね、チッ、犬のくせに」


あ、コラ、犬。手水屋ちょうずやを持ち上げるな、こっちに投げようとするんじゃ無い!



ゴシャ・・・・・・・・・・・・・





とにかく、神様連中は破壊力が強すぎるんだよ、どこの小娘が膝蹴りやデコピンで人の頭吹っ飛ばせるんだ。


俺の考えを読んだのか、八坂刀売神様にギロリと睨まれた、綺麗なぶん犬っころ神より迫力がある。


「誰が小娘や、おぉ!これでも2千年は生きとる日の本組の特攻隊長やぞ」


「あぁ、それで喧嘩ぱやいんですね」


怒ゴォ!


今日52回目の臨死体験を賜った、死ぬペース早過ぎじゃないですかね。





次は7/12予定

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