おやつは300円まで、今時そんなんじゃ足らんわ！
八坂刀売神様との特訓を始めてから早いもので1週間が過ぎた。
結局この1週間で、八坂刀売神様に732回（内アヌビスには32回）殺された。あれ？天照様には100回って言われててたんじゃなかったっけ。多くない？
そのおかげで頭を吹っ飛ばされても1分くらいで再生出来るようになった、筋が良いと八坂刀売神様に褒められた、だからって嬉しそうにポンポン殺すのはやめて欲しい、耐久力は変わらないし痛いものは痛いのだ。
「ぷはぁ、うまい！！」
この身体になって良かった事は、酒に強くなった事だ、どれだけ酔っても気持ち悪くならない、おかげで酒量が増えた、アヌビスちゃんは日本酒が体質に合わないらしい。
特訓 （コロコロされてるだけだが）の後の酒は格別だ。
「学、この1週間で貴様の根性は十分見せてもらった、これで貴様も立派な頭 （天照様）の肉の盾になれるぞ」
八坂刀売神様が上機嫌で一升瓶を床に置いた、この1週間でこの女神様とは随分と仲良くなれた、すっかり舎弟扱いされている。
「あら、ガクは私の眷属ですのよ、天照さんの弾除けになんかさせませんわ」
オリジンちゃんが八坂刀売神様の言葉に口を尖らし文句を言う、俺を庇ってくれる姿はとても可愛い。
「そんな事より、そろそろ北海道に行こうではないか、私は毛蟹なる物が食べたいぞ」
イシュタムが酒臭い顔と大きな胸を近づけて来る、大迫力だ。
八坂刀売神様も蟹が好きなのか、うんうんと頷いている。
「おう、とっと行ってとっとと帰ってこい、それまではこの神社は私に任せておけ」
八坂刀売神様がドンと自分の形の良い胸を叩く。あ、胸がプルンと揺れた、ブラ付けろよ。
そうそう、この１週間でこんな小さな神社にも劇的に参拝者が増えている、やっぱり八坂刀売神様が居るからだろう、人間には見えない神様だけどこう言うのには人は敏感なんだな。
八坂刀売神様、神格はめっちゃ高いから人望はあるんだよな、性格はヤンキーだけど。
「毛蟹の前に牛タンが食べたいぞ、肉！」
「喜多方ラーメン……」
犬と貞子が話に割り込んでくる、こいつら本当に日本食べ歩きをしに来たんだな、俺も長崎ちゃんぽんやタコ焼きは食べたかったな。
次の日、これからの旅に必要だと思ったので、善光寺の良庵上人に整備を頼んでおいた俺のハイエースが、神社に横付けされた。
「どうよ、この仕上がり！バッチリでしょう！！」
良庵上人めっちゃドヤ顔である。
「なんじゃこりゃ！」
真っ白で地味な社用車みたいだった俺のハイエースが。
「あぁ、お金の心配ならいらないわよ、私の寺儲かってるから。檀家さんにこういうの得意なのがいるのよ〜」
ズボボボと明らかに改造マフラーの重低音でアイドリングしている、俺のハイエース。
もしかしてエンジンもいじっちゃてる？
元々荷物運びにも使えるように買ったワンボックス車だが、随分とヤンチャな車になっちまったもんだ、神社の宮司が乗る車じゃないぞコレ、整備頼む人間を間違ったな。
「おお、ガク、すごく太いタイヤだぞこの車、カッケェ！後ろには不動明王の奴が描かれてる！メジェドの絵も描こうぜ」
「これ、何キロ出るんだ、この後ろのでっかい羽根は空でも飛ぶのか？」
「この戦車なら轢き殺すのも簡単…」
「血のように真っ赤な車体で綺麗ですわ！」
オリジンちゃんや神様達には好評らしい……。犬、オバQはいらんぞ、メジェド、あれはエジプト版のオバQだ。
「ははぁ！オリジン様、お褒めに預かり恐悦至極、阿弥陀様にもコッテリ絞られまして拙僧も猛省しております、交通安全のお守りもほれこの通り！安産祈願もつけましょうか？」
良庵上人が大袈裟に坊主頭を下げる、一応この前の騒動の良庵上人なりのお礼らしい、お礼か？コレ
「お、そうだ。学、頭からも選別がある」
後ろにいた八坂刀売神様がポイと俺に向かって何か投げてきた。ん、天照様から。
パシィ
「えっ、ブ、ブラックカード！」
おぉ、初めて見た、これっていくらでも使えるカードなんだよな、普段は蔦屋のポイントカードくらいしか持ってないからな。
「とりあえず日本国内ならどこでも使えるそうだ、こいつらはともかく貴様は持ってた方が良いだろう」
「あ、ありがとうございます」
天照様の優しさ溢れる気遣いにちょっと心が温かくなる、さすが幼女神。家の神社の貧しい懐事情を分かってらっしゃる。伊勢神宮は儲かってるのか？
「旅が終わったら、今度は義兄弟の盃交わすぞ」
げっ、そんな裏取り引きが待ってるのか。
俺の感動を返せ。
とにかく、これでオリジンちゃん達との食べ歩きツアー？の準備は整った、まずは北を目指そう！
次話は7/18予定
