目がさめるとそこは異世界だった。-3
光が終息すると、見えたのはまさに地獄だった。
混沌。
そう形容するしかない。
目の前の状況は、まさにそのような酷い有様だった。
積みあがる死体。
漂う血肉の腐臭。
耳を劈く絶叫。
その全てが今の現状が狂っていることを伝えていた。
「シルフィ走れ!!」
俺は反射的に絶叫していた。
シルフィの手を取り全力で駆け出すと先ほどまで立っていた地点は灼熱の溶鉱炉と化していた。
今ので一緒に転移してきた他のタッグが全てやられた。
それも惨いことに跡形も残らずだ。
通常、このVRMMORPGではたとえ、火炎などで焼かれ死亡したとしても、バイオレンスは極力排除されているので、死体は生前のそのままの形で残され、数秒後に最寄りの街に転送される。
それが、ないという事はこれは本当にデスゲームなのだろう。
巨竜は先ほどの攻撃が俺たちに避けられたのを見ると、追撃を加えた。
巨竜の吐いた火炎弾が流星群の如き速度で俺とシルフィに迫る。
それらをすれすれでかわしながら打開策を考える。
「くそっ、シルフィ何か盾になるようなもの召喚できないか?」
「わかったわ、ジョブスキル《巨壁》!」
祈るようにして握られた手に、蒼い光が宿る。
それは、一つの玉に収束すると輝きを失いシルフィの手を離れて地面に落ちた。
「え?どうして!?どうしてジョブスキルが発動できないの!?」
シルフィの顔には驚きと焦りがにじみ出ている。
ここは、俺がどうにかせねばならない。
俺は腰の鞘に納められていた刀を抜く。
だが、それはいつもの感覚――身体の一部のように馴染んでいく――ものではなく、ずっしりとした慣れないものだった。
だが、そんなことを気にしている暇はない。
「シルフィ、下がっていろ」
「でも、それじゃナギ君が!」
「俺なら大丈夫だ。シルフィは他のスキルが使えないか試しといてくれ」
シルフィはシュンとしたように俯く。
だが、すぐに顔をあげるとなにか決心したように言った。
「……うん、わかった。気を付けてね」
「ああ!」
足裏に力を込めて、大地を大きく蹴飛ばした。
すると巨竜は咆哮し、火炎弾で迎え撃つ。
俺はそれを軽くあしらおうと、刀で流そうと切っ先から峰を使い上に弾く。
だが、まるで爪楊枝で岩を持ち上げようとするかのように、刀は中ほどでバッキリと折れてしまった。
「なっ!?」
そのまま態勢を崩した俺は屠られる運命だと悟り目を閉じた。
カッコつけて飛び出した割にはあっけなさすぎる最後だったのかもしれない。
だが、シルフィの為に死ねるのならそれは本望だ。
ふいに体が軽くなった。
何事かと目を開く。すると、眼前にはシルフィの整った顔があった。
「どうして、お前が!?」
「分らない。でも、確かなことが一つある。私たちのジョブが入れ替わってしまっているのよ」
「なっ!?」
シルフィの告げたことはその時の俺たちにとって一種の敗北宣言に等しかった。




