風追い人
届かぬと知りながら 風を追い
掴めぬと知りながら 風に手を伸ばし
見えぬと知りながら 風に目をこらし
帰らぬと知りながら 坐して風を待つ
追いたかったものは なんだろう
掴みたかったものは
見たかったものは
待っていたものは
なんだったのろう
その疑問さえ忘れ果てたとき
風追い人は重い腰をあげる
そして風に向かって手を振り
それから風に背を向けて
歩み去っていくのだろう
生まれた時
生まれた場所
与えられた名前
風を追ううちに
なにもかも忘れてしまった
この生命の価値とは何だったのか
そんな疑問を感じるほどの心もなく
去りゆく背中 寂しき肩を
風はそっと 抱きしめる




