兆し
初めてネット小説を書いてみました。どうか暖かい目で見て下されば幸いです。
序章
その昔、正確には四千年程であろうか突如天より分厚い雲を光が引き裂きその切れ間から神が地上に降臨した。その時代の人々は突如現れた神を崇め奉った、神は信仰の見返りとしてこの世にそれまでなかった「魔力」を与え、この世界に魔法という概念をもたらした。これにより神への信仰は強まった、しかし突如神へ反旗を翻した10人の愚者が現れた、彼らは魔力を動力とする鋼鉄の巨人「ガイスト」を駆り、愚かにも神に戦いを挑んだ。彼らは一人残らず掃討され、彼らのガイストは1機を除いて神と人にわたることになった。人類は四千年の間にガイストを解析し量産に成功した。そしてこの世界に長い安寧が訪れた。
第一話
神紀4021年4月30日、レイスト帝国北方周りを山と森林に囲まれた場所に僕の通う国立第一士官学校の校舎はある、通称第一学校と呼ばれるこの学校は帝国の明日を担う軍人を養成する場で、主に一般兵士過程、技術開発過程、ガイストパイロット養成過程の3つに別れている。因みに僕の名前はユーリ・カインサーで、技術開発開発の4年生で自分で言うのもなんだけど成績優秀、スポーツ万能、武道の成績も良いいわゆる優等生だ、でも1つ重大な欠陥がある、まぁそれは良いとして、
キンコーンカーンコーン
ありきたりなチャイムが鳴り響き授業の終わりを告げる。
「はぁー、腹へった!なぁユーリ、食堂に行こうぜ!」
この学校に入って何回も繰り返したやり取りだ。
「もちろん、今日は食堂のおばちゃんが美味しい鳥肉が入荷したって言ってたよ。」
「よし!決まりだな、急げ、早くしないと席が全部埋まっちまう。」
「そうだね。」
僕と友人のカールは授業後すぐに教室を飛び出した。
僕ら4年生の教室は食堂から一番遠くにあり、急がなければテーブル席には座れない。そして食堂に向かうには一旦外に出ないといけない。そして僕ら2人がグラウンド前を通過するときにある光景を目にする。
機械音をたて互いに武器をつき出す2機の巨人、ガイストだ、2機のうち青いほうの機体が膝を着く、恐らくさっきの攻防で軽い脳震盪を起こしたのだろう、大丈夫だろうかと心配しているともう1機の赤いガイストのコックピットが開き中から女性がでてきた。
「おーい、大丈夫ー?」何となく間の抜けた声で声をかける幼なじみの姿があった。彼女の名前はジェシカ・ライトソー、容姿端麗、スタイル抜群のパイロット養成過程の4年生で軍からも一目置かれている女の子だ。
「今日の模擬戦はこれまでとする。解散!」教官の大きな声で彼女らの授業も終わったようだ。ふとジェシカと目が合った、すると彼女はこちらに笑顔で駆けてきた。
「ユー君!今の見てた?凄いでしょ!」
「うん見てたよ、相変わらず凄い戦闘だったね、次からは相手の生徒にも配慮しようか、君は他の生徒より頭二つくらい飛び抜けてるんだから。」
「エヘヘ~、だって相手が弱いんだよね~、それよりランチはまだ?まだ済ませてないのなら一緒に食べよ!」
「うんいいよ、僕とカールで席を確保しておくから着替えておいで、じゃあまた後で会おうね。」
「うん!解った、また後で。」と言ってジェシカは女子更衣室へ駆けていく。
「ヒューヒュー、お熱いねぇ相変わらず。」
「茶化さないでよカール、前にも言った通り僕とジェシカはそんな関係じゃないよ。さぁ行こうか、急がないと席が埋まってしまう。」そしてまた二人は駆け出す。
「うっめー!やっぱりおばちゃんの料理は最高だな、味付けといい、香りといい、特にこのクロック鳥の香草焼きなんていままで食った料理で一番うまいぜ。」
「それこの前も同じ事言ってたよね、まぁ気持ちは解らないでもないけど。確かにこの香草焼きは格別だね。」
二人は無事に席を三席確保し、先にランチタイムを楽しんでいると、「お待たせ~!」と大きな声をたててジェシカが合流した。
この学校に入ってこの三人でランチタイムを迎えるのが僕らの習慣となっている、そして周囲の注目を集めるのも…
「遅かったね、何かあったのかい?」
「また告白されちゃった。この前断ったばかりなのにまた告白してきたの、しつこくてイヤになっちゃう。」
そう実はジェシカは学校でも三本の指に入る美女で去年のミスコンでも見事グランプリを獲得している。故に彼女に言い寄る男子は星の数ほどいるが、未だに告白が成功したことがない。中には何度も告白する強者もいるが連戦連敗している有り様だ。
「ねぇ、午後の予定って空いてる?空いたら久しぶりに麓の町に行かない?石鹸とか切らしちゃってさ。」
「はははっ、ゴメンねジェシカ、パイロット養成過程の生徒は午後は空いてるかもしれないけど僕ら整備士過程の生徒は午後も授業があるんだ。また今度ね。」
「そっかー残念、じゃあ買ってきて欲しいものはある?」
「そうだね、石鹸とかかな、ちょうど僕も切らしてるし。」俺も俺もとカールもすかさず頼むこむ。
「解った、石鹸二つね、後で渡すからちゃんと時間作ってよ。」
「了解、それはそうと午後の時間割りってなんだっけ?カールは覚えてる?」
「ん、確か魔法実技と世界史だったと思うけどなぁ。」
「魔法かぁ~、憂鬱だなぁ。」魔法という単語を聞いただけでイヤになる。
「そんなに気を落とすなよ、今日は上手くいくかもしれないだろ。落ち込んでちゃ何も始まらないぜ。」
「そうだよ!ユー君はまだ覚醒してないだけだよ!必ず上手くいく日がくるよ!」
「覚醒って…あっもうこんな時間だ、行かないと。急ぐよカール、バーゲン先生の拳骨を喰らってしまう。」
「よし来た。またなジェシカさんまた後でね~。」
「また後でねユー君、カール君。」
こうして僕ら二人は食堂を後にした。
「えーと、これから魔法実技の講義を始めます。今日皆さんにやって貰うのは簡単な火の魔法と氷の魔法です。各自5メートル先の的へ向けて前回習った通りに魔法を放ってください。困ったことがあれば先生を呼ぶように。では解散!」
そして先生の号令と共に各自が詠唱に入る、詠唱が終わるとそれぞれが手を前にかざし魔法を発動させる。ドン、ボウ、等の音を立てて火球が放出され的へ向かって飛んでいく。
「よーし、全員上出来だな、あとはユーリ・カインサー、君だけだなさぁやりたまえ。」
「はい、よし、今日こそは。」気合いを入れて的から5メートルの位置に着く、そして詠唱を初める。
「我が求むるは炎熱、今ここに神の奇跡をおこしたまえ、フレイム!」するとかざした手から火球が出現!とはいかずウンともスンとも言わない。
「はぁ、ユーリ・カインサー、君は魔法の座学は優秀だがなぜ実技がからきしなんだ?まぁ君の場合もしかしたら魔力の精製器官に異常があるのかもしれんな。まぁいい、後で追加課題を提出しろ、それではここで授業を終了する。解散。」
そう、これが僕の欠陥、魔法がまったく使えない体質であることだ。毎回定期テストで一位をとれないのは実技の点がないから。
「気を落とすなよ、さぁ教室に戻ろうぜ。」
「うん。」こうして二人は教室へ次の授業の準備のために教室へ帰っていく。次は世界史、この学校に入学して初めて世界史を習う、期待をして校舎へ戻っていく。
「え~これが世界の成り立ちで、このように神様は我々に大いなる福音を与えなさったのです。」
世界史の教師が誰でも知っている神様の降臨の授業だ、実際これは中学校でも習うことなので隣のカールなんかはもう寝ている。
「そして愚かにも神様に逆らった10人の愚者はほぼ全員処刑されて彼らのガイストは我々の役にたっています。」
これだ、神様に逆らった10人の愚者の話、実は僕は彼らに対して好意的だ、突如現れた神様の得体の知れない力と統治に対して反乱を起こすのは何ら仕方のないことだと思う。むしろ反乱を起こした人数が少なすぎると思うくらいだ。まぁそれも過去のことで今を生きる僕達には関係のないことだ。
キーンコーンカーンコーン
「ではこれで今日の全ての講義を終わります。部活動や町に用の無い者は速やかに寮へ戻るように。では解散。」
「あっいたいたー!ユーくーん!石鹸買ってきたよー!はい石鹸!」
「ありがとうジェシカ、雨の中大変だったろう。」
実は僕らの講義が終わって間もなく雨が降ってきた、屋内にいても雨音が聞こえる豪雨だ、魔石ラジオの天気予報でこの雨は当分止まないらしい。
「早くお風呂に入っておいで、今日は女子が先に入浴のはずだから、あと30分しかないよ。」
「うそ!じゃあ行ってくるねー!また後で食堂で!」
颯爽と走り去るジェシカを見送りながら二つの石鹸のうち片方をカールに渡そうと思って寮のロビーから男子寮へ足をむけた。
それからは何もなく生徒全員で食堂で夕食を食べた後に11時に就寝、未だに止まない雨に対して少し憂鬱になりながらも僕達は眠りに就いた。
雨はその後4日も降り続きついに学校の近辺の山々の一つが土砂崩れを起こした。周りを山と森林に囲まれた学校だから土砂崩れ自体は珍しくないのだが、更に2日後に土砂崩れの調査団が現地へ赴いた、そして彼らはそこで4千年間眠りに就いていた鋼鉄の巨人を発見することになる。
これからも順次掲載したいと思いますので、よろしくお願いいたします。