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◆6話「モーニング」

目を覚ますと、やや近い距離から僕の顔を覗き込んでいるアンナと目があった。


「わっ!!お、お、お、おはよ!ユウキ!」


アンナは、飛び跳ねるように距離を置いて、いたずらがバレた子供みたいな顔をしている。


「おはよう。なんでアンナがここに?」


「お、起こしに来たんやよ?ほんとやよ?気持ちよさそう寝てたから、起こすのも悪いなぁ思て。べ、別に、寝顔を見てたわけとちゃうで!ほんまやで!!」


(朝から元気だな、アンナは・・・。相変わらず違和感のある関西弁っぽいしゃべり方だけど、どこでこのしゃべり方を覚えたんだろう。)


「そっか。起こしに来てくれてありがとう。すぐ起きるよ。」


今日は、イリシャさんと今後のことを話さなければならないし、まだまだこの世界のことを勉強したい。


とくに魔法については、昨日測定してもらった属性について実のある研究と修行をしたい。


僕は、アンナの後に続いてリビングへ向かうと、すでにイリシャさんは朝食の用意を済ませていた。


「おはよう、ユウキ君♡」


なぜか艶のある顔で僕に挨拶をしてくるイリシャさん。


「おはようございます、イリs、・・・お母さん。」


無言の圧力に屈し、挨拶をつつがなく済ませると、イリシャさんが朝食の席に爆弾を投じる。


「ハァ~。昨日のユウキ君すごかったわねぇ~。お母さん久々に感じちゃった♡」


「「!?!?!?」」


色っぽくイリシャさんさんがそう呟き、僕とアンナがギョっとする。


「き、き、き、き、昨日のユウキがどないしたん?どないしたん?な、な、な、ナニを感じたってっ!?!?」


顔を真っ赤にしながら、イリシャさんに問い詰めるアンナ。


「えぇ。凄かったわよぉ。あんな逞しいもの見せられたら、誰だって感じちゃうわよ。ふふっ」


僕は口をパクパクさせながら事態を見守っていると、今度はこちらに矢が飛んできた。


「ユウキ!?ま、まさかうちのお母さんに手を出したん!?!?た、確かに胸も大きいし、スタイルもええから、村の男の人みんなお母さんをそういう目で見てるって知っとるけど、最後の一線は超えんへんかったのに!」


「い、いや事実無根だよっ!!」


ぶんぶんと顔を横に振りながら、必死に無罪を主張する。


「なんで?なんでうちやないん!?た、確かに胸はあんまないけど、触ったらそれなりに柔らかいと思うし、うちやって・・・ほら」


胸を自分で揉むような仕草をしてイリシャさんに対抗するアンナ。


(ほらじゃないよ!なにやってんだこの子・・・)


「お母さんは確かに魅力的な体やし、胸もバインバインやと思うけど、歳はさn、ごめんなさい!お母さん!!もう2度と言いません!!」


笑顔でアンナを見つめるイリシャさんだったが、目は全く笑っていなかった・・・。


「ユウキ君の魔法は、本当にすごかったわよ?村まで魔力が感知できたんだもの。何事かと思って、遠視してみたら、颯爽と娘を助けてくれる勇姿が見れたわ。」


「「なんだ、そういうことか」」


「あら?一体なんのことだと思ったのかしら?ふふっ」


僕とアンナは目線を逸らして赤くなる。


(ん?遠視?)


「お母さんは、冒険者か何かなんですか?遠視をしたっておっしゃいましたけど。」


僕は気になって尋ねてみた。


「いいえ。冒険者ではないわ。夫は確かに冒険者だったけど。私は力も無いし、魔法も全く駄目ね。ただ、昔から目だけは良くて、魔力を目に込めると、数キロ先のものまで見ることができるの。普通、魔力は感知できるものじゃないけど、よほど高出力だったりする場合、魔力を持つ人なら誰でも感じることができるわ。昨日のはとくにすごかったわよ?」


「へ、へぇーそうだったんですね・・・。ちなみに昨日、村長さんのお宅で魔力の測定をしてもらったんですけど、目に魔力を込めるというのは、適正が無くてもできるんですか?」


「ええ。魔力を使用して、体の部位に流せば、五感や運動機能を向上させることができるわ。ただ、緻密なコントロールが必要ね。適度な魔力量を過不足なく一定に保った状態で、一部位だけに魔力を流し続けるの。すっごく難しいのよ?私の場合は、すごく集中が必要だから目に魔力を流している間は歩くこともままならないわ。それから目以外の部位には魔力を流せないわね。魔力を流すのは、落ち着いた場所で索敵するときとかに有用よ。」


「なるほど。属性魔法以外にもそういった魔力の使い方があるんですね。」


「昨日のユウキ君は、足に魔力を流して高速移動していたのかと思ったんだけど、違うのかしら?」


イリシャはてっきりそういった魔力の応用で移動していたと思っていたようだ。


「いいえ。昨日の僕は無我夢中で。ただ止まれ!って念じて、相手が止まっている間に移動したにすぎないです。それが高速移動に見えたんじゃないですかね?」


・・・シーン・・・・


(あれ?なんか変なこと言ったかな。)


「も、もしかして、ユウキ時間止めたん?」


アンナが信じられないといった顔でこちらを見てくる。


「止めたのかどうかは分からないけど、僕以外のものは静止した状態になって、僕だけが動くことができたからこの隙にって思って走ったんだけど・・・。」


「ハァ・・・。アンナもとんでもない子に助けられたものね。必ず、ものにしなさいね?時空間魔法を使える魔法使いなんて、王国騎士団に所属する一級魔法師以外にはいないわよ。」


「うん、ゼッタイモノニスル。」


惚けた顔で獲物を見るような目を僕に向けるのはやめてもらいたい。


「時空間魔法っていうのはね、闇魔法の一種なんだけど、闇魔法に適正がある人でもそうそう使える人はいないの。闇魔法に適正がある魔法使いが使える魔法は、せいぜいマジックバックのようにアイテムを魔力量に応じた異空間に仕舞うくらいね。腕のいい魔法師なら、物を転送したり、転移魔法を使ったりするわ。でも、時間を操作する魔法が使える人っていうのは、本当に稀なのよ。」


(なるほど。属性魔法に適正があるからといって、その属性に属する魔法が全てに精通するわけじゃないんだな。)


「そうだったんですね。もし時空間魔法が使えるのだったら、僕のアドバンテージになるでしょうから、しっかりと修行をしないとですね。」


「そうね・・・。ただ不思議なのよね。魔法というのはね、突発的にできるようなものじゃないの。経験を重ねたり、魔法理論や原理を理解して、はじめて大成するの。本来であれば、師に指南を仰ぎ、手取り足取り教わって、何年もかけてやっと魔法が使えるようになるのだけれど、時空間魔法なんてどうやって・・・」


(・・・・。もしかして、僕が元物理学者だったことが原因だったりするのだろうか。確かにタイムスリップに憧れて研究に明け暮れてたけど。)


「た、確かに不思議ですね。あれじゃないですかね?アンナを助けたい一心の思いで強く念じたから為せた技というか。」


「っ!?・・・//」


しどろもどろに答えてみると、アンナは顔を赤くしながらもじもじしている。


「・・・」


言ってからセルフがキザすぎたと、僕は身悶みもだえる。


「はいはい。まぁいいわ。冷めないうちに朝食を食べてしまいましょう?今日は、ブラックベアのお肉とドードー鳥の卵で作ったサニーサイドアップよ。召し上がれ。」


「「「いただきます!」」」


ここに来てウィンネが待ってましたとばかりに元気に言ってフォークで食べ始める。


ブラックベアの肉は、薄くスライスされており、ベーコンのようでおいしかった。ドードー鳥の卵で作った目玉焼きは、1つの卵で4人分になるのか、4当分された目玉焼きが各個人の皿に盛られていた。◎の形をしていない目玉焼き・・・。黄身が4当分されて丸じゃなくなってるんだが、どんだけ卵でかいんだ・・・。

味は普通に目玉焼きだったが、カルチャーショックを受けざるを得ないモーニングメニューだった。


お読み頂きありがとうございます

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