◆4話「村長と魔法」
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[ルガルト村]
人口:約100人
地理:シュベイン王国領内北東部
気候:亜寒帯
主要産業:第一次産業(農業)
主要農産物:麦、羊乳、羊肉、ドードー鳥卵
納税:収穫高の25%物納(村単位)
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村長宅にて。
「君がアンナを助けてくれた子かの?」
70歳くらいのいかにもな村長だ。
「はい。旅人をしております、ユウキと申します。」
(まぁ、タイムトラベラーだから、時の旅人ってことで・・・。自分で言ってて恥ずかしいな・・・。)
「そうかそうか。よくぞルガルト村まで来てくれた。アンナを助けてくれたこと感謝するぞ。ありがとう!おまけにその歳で、ブラックベアをソロ討伐するとは。それも採取用のナイフ1本で、頸動脈を一突きじゃ。並みの腕じゃなかろうて。今わしらの村は、日照り続きで食料不足が、ちと問題になっててのう。ブラックベアの肉がとれて大助かりじゃ。おぬしは無償でくれると言うが、わしらに何かできることはないかね?」
今はとにかく、当座の住む場所と情報が欲しい。
まずは旅人でこのあたりの情勢がわからないと口実を立て、村長からこの世界のことを色々聞いた。
まとめると次のようになった。
■1日の時間24時間。時刻は、2時間ごとに十二支で呼んでいる。
09:00 巳の刻
11:00 牛の刻
13:00 未の刻
15:00 申の刻
17:00 酉の刻
19:00 戌の刻
21:00 亥の刻
23:00 子の刻
01:00 丑の刻
03:00 虎の刻
05:00 卯の刻
07:00 辰の刻
■種族は、人間、獣族、魔族、ドワーフ、そして少数だが、エルフがいる。
■貨幣経済であり、通貨は、白金貨1枚(1,000万円)、金貨1枚(10万円)、銀貨1枚(1万円)、銅貨1枚(1千円)、鉄貨1枚(100円)、屑貨1枚(10円)
■ざっとした地理は、人族のシュバイン王国(ここルガルト村はシュバイン王国に属する)、西方にノーグ帝国、東方に獣族の小国が集うフェンリル連邦、南方から大陸を横断するように連なるドワーフが住むキララウス山脈、北方にターチン砂漠、砂漠を超えると魔族領、大陸中央にエルフが住まう大森林。
■人族の国は、貴族制、奴隷制がある。
■国の中枢から近い順に、王族、皇族、政府官僚、貴族、軍人、衛兵、神父・巫女、商人、平民、冒険者、農民、奴隷といった職業ヒエラルキーがある。
■識字率=約30%。文字の読み書きができるのは、一般的に商人以上。一部平民と冒険者も扱えるといった具合。
■公用語は日本語。文字はカタカナが主流になっている。公文書や学の高い本などには漢字が使われている。
■国営の冒険者ギルド、商人ギルドがあり、職業斡旋を担っている。一部冒険者は、PTとは別にギルドを組んでいる者たちもいる。
■文明レベル=中世ヨーロッパ・江戸時代クラス。
■森やダンジョンなどにモンスターが出現する。魔族領に近づけば近づくほどその強さは増していく。
■適正があれば、属性に応じた魔法を使うことができる。魔力や適正は、種族や個々により異なる。
「魔法は!魔法は僕でも使うことができますか!?」
(魔法なんてファンタジーすぎる!未知の力とか、探求心が擽られるな。タイムスリップどころか、もはやここは異世界じゃないか・・・。おそらく、時間静止も魔法の一種だろう。)
「もちろんじゃとも。個人によって適正があるからお主の属性の適正も測ってやろう。アンナ、測定器を持ってきておくれ。」
「うん!」
そして、家の奥からアンナは測定器なるものをもって来てテーブルの上に置く。
「まずは、魔法の属性から説明しようかの。魔法には、基本4元素があり、加えて、力魔法・熱魔法・光魔法・闇魔法がある。」
[基本4元素]
炎=火を操る力
水=水を操る力
風=風を操る力
土=土を操る力
力魔法=物体の運動エネルギーを操る力
熱魔法=熱エネルギーを操る力
光魔法=治癒魔法、光エネルギーを操る力
闇魔法=時間、空間を操る力
「以上のように魔法の分類があるわけじゃが、基本的には個人で操れる属性は1つか、2つじゃな。全く適正がない者もおる。種族的には、エルフが風、ドワーフが土の魔法を得意としておる。力魔法、熱魔法を操れるもんは滅多におらん。光魔法と闇魔法に関しては、おらんことはないが、やはり珍しい属性じゃのぅ。基本4元素を除く後者の魔法は、希少ゆえにそれだけで食っていける場合もあるのじゃ。」
「なるほど。わかりました。それで、この測定器で適正を測ればいいわけですね?」
「そうじゃそうじゃ。順番に属性ごとの魔力石をはめ込んでいくから、反応があったもんが適正ありってことじゃ。さっそくこの測定器に手を乗せなされ。」
僕は測定器に手を乗せ、待つ。
(適正がなかったらどうしよう・・・でも、時間を止めたんだし、皆無なわけはないだろう。)
「まずは、炎の魔法石じゃ。」
コトンッ。魔力石が溝にはまると、測定器に描かれた紋様が光り、血流のごとく光が伝導していく。
シーン・・・・
(炎の適正なしか・・・)
「残念じゃのぅ。炎の適正は無しじゃな。」
「ええ。残念ですが、次に期待します。」
「それじゃ、次は水魔法石じゃ。」
続いて水の魔力石。
シーン・・・・
「ふむ。炎と水の適正なしじゃな。だいたいは、この2つで反応を示すのじゃがな」
続いて風の魔力石。
シーン・・・・
「そ、そんながっかりせんでもええぞい!まだ適正のある属性があるかもしれん!それに適正が全くない者もおるのじゃ!」
(それは慰めになってませんよ、村長・・・)
続いて風の魔力石。
シーン・・・・
(・・・・・)
「・・・・・・・・・・・・・」
続いて力の魔力石。
ピカーーーーーーーーーーーーー!!!
「やった!」
僕は魔法適正が見つかったことで、年甲斐もなくはしゃいだ。
「力魔法とは珍しい適正じゃのぅ!なにより、適正が見つかってよかったのう!」
「当然よ!ユウキは、すごいんやから!」
(なぜかアンナが僕より喜んでるような気がする・・・。)
続けて、熱、光、闇の魔力石を試す。
ピカーーーーーーーーーーーーー!!!
ピカーーーーーーーーーーーーー!!!
ピカーーーーーーーーーーーーー!!!
「はっはっはっ!!基本4元素がからっしきしで、希少な他属性のみ適正があるとは、稀有な人間じゃのう!おまけに計4種もの属性持ちと来たもんじゃ!」
「ユウキなら当然よ!」
アンナは小さな胸を反らして胸を張る。
(なぜアンナは自分のように誇らしげなんだ・・・。)
「えっと、せっかく4つ属性の適正が見つかったので、精進しようと思います。しばらくは、この村に滞在したいのですが、どこか泊めてくれるところはありませんか?恥ずかしながらお金がないので、仕事や手伝いをしながらになr」
「はい!はい!うちの家こーへん?家は広くないけど、うちもおるし、お母さんも優しいで。寝る場所は、う、うちのベット貸したる。」
僕の言葉を最後まで言わせず、アンナは手をあげてそう言った。最後の方は照れながらゴニョゴニョ言ってて聞き取れなかったが。
そして僕はアンナの家に居候することになった。アンナが絶対に僕を引き取るといって聞かなかった・・・。
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