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◆2話「ブラックベア討伐~アンナ視点~」

~アンナ視点~


今日は、森の入り口付近でキノコや山菜、木の実などを採って帰るつもりだった。


森の奥へは行ってはだめ。暗くなる前に森を出るというお母さんの言いつけを守り、まだ日が高い未の刻に入り口付近で採取をしていた。


うちにとっては、日常的なことだった。


(なのになんでなん!?なんで森の入り口近くにブラックボアが現れるん!?)


ブラックボアは、森の奥に生息しており、大人4~5人がかりでやっと倒せるモンスターだ。


非常に凶暴で、このあたりに生息しているモンスターの中では最も強い。


(とにかく気づかれんこと逃げな!!)


そう思い、足音を消しながら森を出ようとした。しかし、突然目もくらむような光りに覆われ、木の根元に躓いてしまう。


「あっ」


転んだ拍子に声を出してしまった。


猪が凶悪な顔でこちらを見て、恫喝どうかつさせんがごとく吠える。


「ブヒィイイイイイイイ!!」


すぐに立ち上がり、足をもつれさせながらも森を走り抜けた。


ドドドドドドドドドドドドドド!!!


ブラックボアがすぐ近くまで迫ってきている。


死・・・


うちは恐慌に陥り、呼吸の仕方を忘れる。足に力が入らなくなり、転んでしまう。


(あかん。いやや、このままやと死んでまう。そんなんいやや!!)


振り返ると、ブラックボアが森を抜け、もの凄い勢いでこちらへ向かってくる。


うちは恐ろしさのあまり、泣きじゃくり、慟哭どうこくする。


「くっ、うぐぅ……、あぁぁぁぁ!」


「フゴッ!ブヒィイイイイイイイイイイ!!」


ブラックベアは獲物を捕らえたとばかりに涎を垂らしながら吠える。


「だ、誰か!!お母さん!!きゃああああ」


(誰か助けて!うち、なんも悪いことしてへぇやんかあ。死にとうない!!)


ドン!


「きゃっ!」


目の前の景色がかわった。数舜前まで凶悪なブラックベアが牙を剥き出しにして迫っていたが、今は、男の人の胸しか見えない。


「フゴッ!?ブヒイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


「めちゃくちゃ怒ってる・・・。めっちゃこっち睨んでるし・・・。」


「えっ!?あの、え?」


何が起こったのかわからない。ただ、この人がうちを絶望の淵から救ってくれたのはわかった。


「大丈夫。絶対に助けるから!」


「は・・・はい・・・」


頬を染めて助けてくれた彼に見惚れる。


背はうちより10cmくらい身長が高い、茶髪に茶眼。目鼻が整っていて薄い唇。体は線が細いながらも、うちを抱きしめたときに力強さを感じた。


歳はうちと変わらんくらいかな?たぶんこの人も15歳くらいやと思う。


私を背にしながらブラックベアに向いた彼は、すごく逞しく感じた。


「・・・さっきと同じことができるなら、ブツブツ。ねぇ、君。君の持ってるナイフを借りていい?」


「え?これ?ええけど、これ採取用のナイフやよ?」


「大丈夫。それで猪を仕留める。」


うちはナイフを彼に渡す。刃が相手に向かないように手渡し、手が触れてちょっとドキドキした。


「よし。行くぞおおおおおお!」


「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


彼は、ブラックベアへ向かって駆け出す。


(うそ!?はやっっ!!)


彼は、ナイフを片手に縦横無尽に高速跳躍し、ブラックベアの喉元へナイフを突き刺す。


「フゴッ!?フヒィ・・・」


ブラックベアは、喉元から大量の血を放出し、白目を向いて絶命した。


ドーン!!と音を立てて、絶命したブラックベアが倒れた。


「ふぅー。よかった倒せた。立てる?」


「うんっ」


彼に手を握られ、どぎまきしながら立つ。


「助けてくれてありがとう。強いんやな?」


「いや、たまたまだよ。それよりナイフをだめにしてごめん。」


「ええって!さらのやつまたこうてもらえばええし。それより、自分名前なんて言うん?うちはアンナ!」


「僕は・・・ユウキ。ところで、この猪どうしようか。」


「そうやな。とりあえず、うちの住んでる村行かへん?ブラックベアは、大人の人連れてきて解体してもろたらええんちゃうかな。」


「へぇ~。ブラックベアって言うんだ。」


(あれ?ブラックベア知らへんってことは、この辺の人やないんかな。)


「そうやよ。この北の森に棲んどるモンスターの中でも最強レベルやのに、一人で倒してしまうとか、ほんますごいで!もしかして名だたる冒険者様?」


うちは、憧憬の眼差しを彼に向ける。


「いやいや、そんな大した人間じゃないよ。僕は・・・旅人かな。遠くから来たからブラックベアって名前を知らなかったんだ。」


「ほんまぁ~?」


ユウキに近づいて上目遣いで尋ねる。


そのまま彼を見つめるような感じになってしまい・・・


「と、とにかく!村へ案内したるから、付いて来て。」


頬をほんのり染めながら、ごまかすようにそう言う。

そして、「はぐれたらあかんから!!」と言って、彼の手を握って村まで案内した。


お読み頂きありがとうございます。

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