◆1話「はじまりの出会い」
エピローグに続き、冒頭から主人公の中二病っぷり、ご容赦下さい。
強烈な発光から視力が回復すると、そこは一望千里の広野だった。
「え?」
あたりを見渡すと、一面草原が広がっており、近くにきれいな川が流れている。北方は森。南方に川が伸びており、水車と田畑が見える。田畑の向こう側には村があり、なんとも牧歌的な風景だ。
「おかしい。タイムトラベルをして、僕のいた時間軸から100年後の未来に来ているはずなんだけど・・・。」
困惑をしつつ景色を眺めつつ考察に入る。
「間違えて過去に戻ってしまったのか?しかもここはあきらかに日本じゃない。時間と空間の座標を間違えたのか?いやしかし、計算式に間違いはなかったはず・・・。x’=(x-Vt)/√(1-(V^2/C^2))y’= y/√(1-(V^2/C^2))z’= z/√(1-(V^2/C^2))として・・・ブツブツ」
思考に耽りながら、川辺を歩く。
ふと川を覗くと、そこには覚えのない顔が映し出される。
「これが僕!?」
川に映った顔は、茶髪に茶眼、目鼻立ちが整った西洋風の顔だった。
身長は、168cmくらい。見た目は、15歳くらいである。
「タイムスリップによる弊害か!?にしても、若返って整形できるなら、
それだけでタイムスリップする価値があるんじゃ・・・。」
そんなことを考えながら川を覗き込んでいると、森の方角から女の子の悲鳴が聞こえた。
「だ、誰か!!お母さん!!きゃああああ」
「フゴッ!ブヒィイイイイイイイイイイ!!」
声がする方を見ると、赤い髪をした15歳くらいの少女に、全長5mはあろうかという巨大が猪が襲い掛かっていた。
「!?女の子が野生の猪の襲われてる!!」
助けを呼ぶにしても周りには誰もいない。
尻もちをついて泣き叫ぶ女の子に、涎を垂らしながら襲い掛かる猪。
人助けなんて柄じゃないが、さすがに女の子の危機的状況に己の保身なんて考える余地はなかった。
「や、やめろおおおおおおおおおおおおお!」
気づいたら僕は走っていた。だが、どう考えても間に合わない。女の子と猪のもとへたどり着く前に、猪は女の子に牙をたててしまうだろう。
「ぐっ・・・間に合わない。くっそおおお!とまれええええええええええ!」
世界が止まった。
「は?」
僕は思わず走る速度を緩めてしまう。
女の子は泣き顔で恐怖に怯えながら縮こまったまま動かず、猪は涎を垂らしたまま口を開けて静止している。
川の流れる音、風に揺れる草木の音が消え、心臓の鼓動だけが聞こえる。
「時間が止まった!?」
戸惑い気味にあたりを観察していると、ゆっくりと世界が動き始める。
「急がないと間に合わない!!」
全速力で女の子と猪のもとまで駆けつけると、世界はスローモーションで動き始めていた。
僕は、女の子を抱き、転がるようにして猪の攻撃を回避する。
「きゃっ!」
「フゴッ!?ブヒイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
女の子は、僕の胸元で可愛く驚いている。猪はというと・・・
「めちゃくちゃ怒ってる・・・。めっちゃこっち睨んでるし・・・。」
「えっ!?あの、え?」
突然現れた僕に驚いているのだろう。
「大丈夫。絶対に助けるから!」
僕は、なるべく小さい女の子を落ち着かせるように心がけて、力強くそう言ってあげる。
「は・・・はい・・・」
女の子=アンナは、頬を染め惚けている。
この猪どうしよう・・・・。
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