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リズレルは悪役令嬢なのです

なんてことだ。私は気づいてしまったのだ。


優美なドレスに身を包み、チョコレート菓子で口まわりを汚しながら、豪華絢爛なベッドに横たわる美少女リズレルは思わず、チョコレートを布団の上に落とした。この時ばかりは金髪ドリルヘアーも、まっさらストレートになるほどの衝撃だった。


私の名前はリズレルク・ラル。

由緒正しき公爵家の息女であり、王家第一王子の婚約者にして、最終的にヒロインに婚約者を寝とられた揚句、処刑される悪役令嬢リズレルク・ラルと同姓同名である事に気づいたのであった。


所謂この世界は乙女ゲーの世界って奴だ。

布団の上に落としたチョコレートを口に放り込み、傍で待機していたメイドに口を拭いて貰いながら、リズレルの内心は冷や汗ものである。


どうして気づいてしまったか。

私のパパが、リズたんの婚約者は第一王子のローレン王子になったからね! と物凄い娘への甘い態度で決まった事が告げられたのが今朝の事だった。シェフの作ったふわふわオムレツが美味しくておかわりをしまくっていたので、ほとんど話を聞いてなかったのだが、そういえばと、王子の名前をメイドちゃんに再び聞き返して、ようやく聞き覚えのある名前に様々な事を思い出してしまったのだ。


「大変だぁ! 大変だぁ! このままじゃ処刑されちゃうよぉ!」


アバババ、と声にならない狼狽を曝け出すリズレルにメイドは冷静に頭を撫でてて落ち着かせてくれた。

彼女はリズレルと同等、いやそれ以上に美しい黒髪の美少女である。

今日のおやつを提案するかのように、さらりと美しい声で提案してくれた。


「ならば王国を滅ぼしましょうか?」


「まだ早いよー」


メイドの物騒な言葉にもリズレルは気にした様子はない。

何せ彼女はダンジョンマスターだからであった。


いや、今はそんな事はどうでもいい。問題は処刑されるということだ。

この乙女ゲー『LOVEは戦争☆ラヴァーウォーズ』はタイトル通り、頭の悪そうな乙女ゲームだ。


平民の主人公が特待生として、貴族たちが通う学園に通う事になることから始まるラブストーリー。

六人くらい攻略キャラが居た気がするが、リズレルはヒロイン萌えするタイプなので、ほとんどの攻略対象をガン無視していたので、あんまり覚えていない。


唯一覚えているのが、そう、リズレルの将来のダンナ様、ローレン王子くらいだ。

王子の名に相応しい攻略難易度……と言いたいところだが、所詮は乙女ゲー。

難易度なんて、あってもないようなもんである。


呆気なく、ヒロインたんの可愛らしさに陥落した王子はヒロインと逢い引きをし始め、それに気づいた悪役令嬢こと、リズレルはとことんヒロインたんを虐めるのであった。

それを知った王子が逆上し、リズレルを処刑して、ヒロインたんと国を治めて、仲良く暮らしましたとさ、というのが大まかな内容だ。まぁ、よくある内容で真新しさもない。


私は王子×ヒロインたんカプより、ヒロイン×悪役令嬢×ヒロインの百合に萌えてたので、別に何の感想も抱かなかったし、王子ルート以外では、悪役令嬢ちゃんが出てこなかったので、仕方がなく王子を攻略していたのだ。

むしろ、悪役令嬢たんの苛めとか、そういうプレイの一環じゃん、と興奮してたくらいだし。

いじめの内容も可愛いもんが多かったし、なんでこれで処刑されるのかわかんないくらい幼稚なものばっかなのに、王子が俺様DVヤンデレ腹黒暗黒微笑系という詰め込み過ぎた要素が故にヒロインたんを苛めた悪役令嬢ちゃんが許せなかったんだろうね。だから王子が悪役令嬢たんを処刑したんだろう。


私は攻略しながら、王子クソ過ぎ、と大量の草を生やしていたが、実際のところ、ヒロインと一生を添い遂げられないならいっそのこと、悪役令嬢ちゃんを処刑してあげた方が幸せだよね☆だって、他の男に取られないし☆くらいに思っていた。


今では前言撤回する。百合ヤンデレバッドエンドは嫌だああああああああああああ。


思いの丈をぶつけるように美少女メイドの胸で泣く。無言で頭を撫でてくれるメイドちゃんは優しい。

おっぱいも大きいし、ふわふわやで。


あ、でも、今すぐ王国を滅ぼすのは駄目だけど、ヒロインたんを拉致監禁洗脳するのはいいよね?


「サリュー、私くらいの年齢で桃色の髪の美少女を見つけて連れてくるのです!」


「かしこまりました。我が、マスター」


彼女は立ち上がり、スカートのつま先を摘んで優雅にお辞儀する。

その背中には黒色の翼がバッと広がる。彼女の双眸は赤くギラギラと光っていた。

歪んだ口元から鋭い牙が垣間見える。


ゲームっぽくいうなら、彼女のステータスはこうだろう。


サリューシュ / 眷属(吸血姫) / レベル80


鬼じゃなくて姫ってところが、キュートなポイントである。可愛いは正義。

因みにこの世界の国の軍に所属する兵士の平均レベルは10だ。

サリューだけでも無双出来るところに私はとっても優越感を持ってしまうのだった。


「早く帰ってきてね」


「もちろんでございます。我が愛しのマスター」


艶やかに笑う彼女こそ、まさしく漆黒の姫。窓縁に足をかけ、闇夜へ飛び去っていく。

リズレルはふわぁ、と一つ欠伸した。これで処刑から免れるよね?



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