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抜刀術と異世界生活  作者: タルタルチキン南蛮
1章…生活基盤編
3/14

2.職探し

「…………」


 何が起きた?なんか柵が真っ二つになったぞ?落ち着け、考えるんだ。いつ如何なる時も思考を捨ててはならん。

 整理すると、


 ①抜刀術を見せた

 ②なんか銀の靄が切っ先から出て飛んでった

 ③柵が切れた


「わかってたまるか!」


 こっち来てから分からない事だらけだなおい!誰か説明しやがれ!チラッと爺さんを見ると、目を見開いて固まっていた。一人でパニックになっているのかと思ったら爺さんもだったらしい。良かった。


「おい坊主」


 あ。やべ、柵壊したの怒られるかな……?


「……やるじゃねぇか」


 違った、なんか褒められた。しかし何だ今のは。いつから俺は真空仏◯切りなんて使えるようになったんだ。第一あのモヤモヤはなんだったんだ?

 ものは試しともう一度やってみるが、今度はさらに前方の岩が真っ二つになった。


「岩も切れんの!?」


 どんな威力だよ。流石は真◯仏陀切り、並みの威力では無いな。これなら後◯刃もいけるかもしれん。

 その後も色々試したが、射程距離は刀の速度にもよるが約30m、威力はざっくり鋼以下のものなら切れるらしい。


「とんでもねぇな、こりゃ…。不用意に稽古も出来ねぇぞ……」

「……剣氣が使えたとはな」

「剣氣?」

「ああ。……熟練した剣士は魔力では無い不思議な力を使える、それが剣氣だ。なかなか使える者は居らんがな。」

「…………?」


 よく分からんが、さっきの銀の靄は剣気と言うらしい。しかしこんなものが使えるようになっているなら、魔物退治とか出来ちゃうかもしれない。けどなぁ……魔物退治となるとやっぱり危なそうだしなぁ…

 と、これからの事を悩んでいると、不意に閃いた。


「すいません、一つお願いがあるのですが」

「………言ってみろ」


 そう、安全にかつ俺の刀の技と知識を活かすためには、鍛冶屋であるここに関わった仕事が良いだろう。つまり、


「俺をここで働かせて下さい!」

「…………?」

「雑用でも何でもします。その代わり、俺が知っている刀についてを全てお教えします」

「……なるほどな」


 等価交換と言うわけだ。働く代わりに、未知の武器について話す。爺さんにも悪くない話だろう。


「悪いがそれは出来ねぇ。弟子は取らねぇんだ。第一、俺も職人のはしくれだ。その『刀』とやらは、自力で作るのが鍛冶師の意地ってもんだ」

「そう、ですか」


 うーん、これが就職難。世知辛い。


「…だが、お前のことは気に入った。手入れ位なら俺にも出来るだろう。刀の試作品を作った時はお前に試して貰わないとだし、たまに顔を出せ」

「ありがとうございます、分かりました」

「それと仕事がないなら冒険者ギルドに行け。薬草摘みから討伐依頼まで色々仕事が転がってるぞ」


 おお、薬草摘み。それくらいなら俺にも出来そうだ、早速行ってみよう。


「そう言えば、お名前は?俺は光流です。日向光流」

「…ゴードンだ」


 あれ?どっかで聞いたな。さっきの金物屋がなんか言ってたっけ、まぁいいか。

 とりあえずは冒険者ギルドに行けば仕事は貰えそうだ。組合(ギルド)というくらいだから、国中に支部があったりするのだろうか。折角だし冒険したりしてみたいな。差し当たり今日中に宿代を稼げれば良いが、最悪野宿だな。日本のように治安が良いといいのだが。


「それでは失礼します」

「……おう。良いものを見せて貰った」


 見せ物じゃないんだけどな一応…。

 ゴードンさんにはこれからもお世話になりそうだ。何かあったら手伝いに来よう。俺はゴードンさんに頭を下げると、教えられた道を辿り始めた。


 ============================================


「ここか?」


 こっちに来てから会話が成り立っていたせいで気にしなかったが、やはり文字は違うらしい。翻訳の魔法やらが使えると助かるんだがなぁ。

 とりあえず、デカデカと看板に何やら書いてある建物まで来た。他にそんな建物も無いし、冒険者っぽい人達も入っていくから間違いないだろう。


「失礼しまーす……」


 ギギギ…と音を立てながら開いた木の扉の先には、古びた受付や休憩所、掲示板と言った、いかにもな感じの空間が広がっていた。とりあえず受付に向かいながら、周りを観察する。

 そこには屈強そうな戦士や理知的な魔法使いっぽいの達が、ガヤガヤと会話をしていてなんだか賑やかい。その内の一人がこちらに気付くと、ヒソヒソと周りに何か話しかける。するとその周りの奴らもチラッとこっちを見る。いつの間にかギルドのざわめきが息を潜め、全員がこちらを訝しんでいた。


(怖いなぁもう…なんなんだよ…)


 元より俺は一般人だ、こんな強面のオニーサン達に囲まれたくねーんだよもう。受付のお姉さんに聞けば良いか。


「あの、すいません」

「はい、新入りの方のようですが、今日はギルドへの登録ですか?」

「えっと、よく分からなくて、とりあえずここに来れば仕事が貰えると聞いたんですけど」

「なるほど。ちなみにどなたに?」

「鍛冶師のゴードンさんです」


 そこで何故かどよめきが起きた。「あのオッサン人と喋れたのか」「もしかして腰の変な剣もあいつが作ったやつか?」「いーや、嘘に決まってるね」とか、いやいやお前らゴードンさんはいい人だぞ。後の二人はどっちも間違ってるけど。

 受付のお姉さんも何やら驚いている。そんなに大変な事なのだろうか。


「わ、分かりました。まずはギルドへの登録をして頂かないと依頼の斡旋をする事が出来ないので、登録をお願いします」

「分かりました」


 選択肢に丸をつけていくタイプの記入用の用紙を手渡され、必要事項を記入していく。


「えー、日向光流、17歳、男、使用武器は…剣にしとくか。えーと…職業?」

「あ、そちら『剣士』で結構ですよ。特に資格は要らないので」

「そうですか。えーと後は…」


 次の欄の記入をしようとして、ペンが止まった。


「あのー………」

「はい、なんでしょうか」

「この、『ステータス』欄って何ですか?」

「えーと、もしかして健康診断を受けた事は?」

「えー、………まぁ、無いですね」


 こっちではね。無いよ、うん。こっちでは。

 そこで俺は後ろの連中がニヤニヤしているのが見えた。


「とんだ田舎者が来たもんだなぁ」

「へへ、すぐに尻尾巻いて故郷に帰るさ」

「違いねぇ」


 ワハハ、と笑うおっさん共。故郷に帰れるなら帰ってるわ、チクショウ。


「でしたら奥の方でステータスの測定を致します。こちらへどうぞ」

「はい、どうも」


 受付横の扉からギルドの奥へと入っていく。そこには幾つかの部屋があり、3個ほど扉を通り過ぎたところでお姉さんが立ち止まった。


「こちらで測定を行います。入ってお待ちください」

「分かりました」


 扉を開け部屋に入ると、ベッドと机、椅子二つと、手狭な保健室のようになっていた。とりあえず手前側の椅子に座ってキョロキョロしていると、ガチャリと扉が開きやる気の無さそうな白衣のおじさんが入ってきた。キレイな女医さん想像してたのに、残念。


「んじゃまー始めるかー。俺はここのギルドで働いているヘイリーだ。とりあえず説明な」


 よっこらせと椅子に腰を下ろすと、手に提げていたカバンから色々な道具を取り出し始めた。


「初めてって事だから最初から説明すんぞー。まずステータスってのはお前さんの今持っている能力だ。ここでは簡易測定しか出来ねーが、ちゃんとしたとこで受ければ数字でお前の能力が出てくる。簡易測定の場合、E〜Aランクの5つに+と-を組み合わせた全15段階で判定する。

 測る項目は『筋力』『敏捷』『魔力』『特殊技能』の4つだ。通常ならばDや良くてC-程度だな。BやAの能力を一つでも持っていれば一流とされる。」


 なるほど、つまり最高はA+、最低はE-って訳だな。


「このステータスは見た目に依らなくてな、ムキムキでもCランクなのにお前さんみたいな細身がB越え、なんて事もある。鍛錬しても才能には敵わんとは、悲しいことだが。ま、とりあえず測ってみっか」


 そう言うと、カバンから取り出した五本の帯を俺の両腕と両脚、胴体に巻きつけ始めた。帯からは何やら管が伸び、モニターのようなものに繋がっている。


「これは?」

「あー、ざっくり言えば能力測定器だ。お前さんに流れている気やら魔力やらなんやらから、各ステータスを割出してくれる。便利だろ」

「はー、これは魔力で動いてるんですか?」

「そういう事だ。最近開発された魔力を蓄える結晶で動いてるらしいが、詳しいことは分からん。ま、性能はギルド本部お墨付きだ、安心しな」


 やはり本部があるらしい。ということはたくさんの支部があるのだろう、ワクワクしてきた。

 しかし、こっちでは電気の代わりに魔力が使われているのだろうか。だとしたら乾電池が作られたのは20世紀という事を考えると、意外に技術は進んでいるのかも知れない。


「よーし、準備出来たぞ。そんじゃあ測定を開始する。ミツルとか言ったか?あんま動くなよ」

「どのくらいで出ますか?」

「なーに、一瞬だ。………ほい、出たぞ」


 おおー、早いな。

 少しの演算処理の後、パッ、とモニターに俺のステータスが映る。


 筋力:B+

 敏捷:A

 魔力:E+

 特殊技能:気迫・集中・剣氣


 俺とおっさんは、思わず顔を見合わせた。

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