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帝国陸海軍、最終決戦開始ス  作者: かめ
房総沖海戦
9/39

交戦

「水上戦闘用意、主砲、三式弾砲撃用意!」

「三式弾を使うのですか!?」

 伊藤の命令に「大和」艦長、有賀幸作大佐は復唱することも忘れて聞き返した。三式弾は対空用の砲弾であり、空中で炸裂して無数の焼夷弾と断片を撒き散らす。航空機相手では大きな効果が期待できたが艦船を撃沈することは困難である。

 伊藤は誰にともなく呟く様に言った。

「日本海海戦では東郷元帥は敵艦を燃やしたそうじゃないか」

 有賀はその一言で伊藤の考えを察した。もはや命令あるのみであった。

「主砲三式弾、砲撃用意!」

 命令は次々と復唱され、弾薬庫から三式弾が運び上げられる。

 敵は右舷側から来るようだ。

「右砲戦用意!目標、先頭のアイオワ級戦艦!」

 敵艦隊は第2艦隊とすれ違う様に前進して来る。このままでは反航戦になる。反航戦では戦闘時間が短い上に相対速度が速くなり命中精度も落ちる。双方共損害は少なくなるが、戦果も見込めない。さあどうするつもりだと有賀が思った矢先、

 観測情報が伝えられる。

「目標、距離7300」

「敵艦隊、回頭はじめました」

 なるほど、敵艦隊は無防備に脇腹を見せている。

「敵も日本海海戦の真似事をしているようだが、我々の射撃精度を甘く見られちゃ困るな」

 またも伊藤が呟くのが聞こえた。

「距離、6800」

 有賀が目配せをすると、伊藤が頷いた。

「主砲砲撃用意」

 上甲板では警報が鳴り、爆風に晒される乗員が艦内に退避する。

 有賀は大きく息を吸い、腹の底から声を張り上げた。


「撃ち方はじめェッ!」


 海上に閃光が出現した。海面が窪み、「大和」の艦体が大きく傾いだ。砲口から迸る火焔は、一般的な砲のそれとは異なる。あたかも巨大な火炎放射器のようだ。

 続いて、後続の各艦が砲撃を始めた。

 砲撃から若干の間が空いた。

「3、2、1、だんちゃーく」

 直後、「アイオワ」の後方を進む「ニュージャージー」が炎に包まれた。三式弾が直上で炸裂、無数の焼夷弾を浴びせかけ、大火災を生じさせたのである。さらに多数の水柱が同艦の周辺に林立した。

 全艦が「アイオワ」を照準していたはずであったが、米艦隊が日本側の発砲直前に増速したために着弾がずれ、「ニュージャージー」が犠牲になったのであった。

 事情はどうであれ「ニュージャージー」は砲戦開始から数十秒でレーダ索敵機能及び目視による索敵の両方を失ったのである。さらに3分後、2発の砲弾―「榛名」の射弾であった―が命中し、煙突並びに主機関室を損傷し速力が大幅に低下、早々に戦列から落伍することになった。

 戦艦に対する戦闘は日本軍有利に進んだが、最優先で沈めなければならないのは空母である。戦闘力を失ったとはいえ、空母の高速は活きている。高速で離脱されてしまっては「榛名」以外の各艦は追いつけない。何としても射程内で仕留めなければならなかった。しかし、目の前に立ち塞がる米戦艦を突破しなければ空母を攻撃することは困難であった。


 伊藤は、新たな決断を迫られていた。

三式弾にはこんな使い方もあるかなと思っての登場でした。

これからも兵器のヘンテコな使い方を考案する予定です。

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