敵艦見ゆ
「直ちに英艦隊及び護衛空母艦隊に救援を要請しろ」
ある程度の冷静さを取り戻したハルゼーは指示を飛ばしていた。
艦隊の北方から飛来した複葉機の編隊に攻撃を受け空母18隻が炎上し、その後3隻が誘爆により沈没、残りの艦も飛行甲板が使い物にならず、ただ浮かんでいるだけある。現在、艦隊の航空兵力は水上偵察機のみであった。ともかく、航空隊の増援が必要だったのである。しかし、ここでもハルゼーに運は向かなかった。
「レーダーに水上目標、大型艦数隻と思われます。高速でこちらへ接近中!」
「何だと、航空機ではないのか?」
「いいえ、水上艦艇です」
「やむを得ない、敵艦隊が来るぞ、水上戦闘用意。巡洋艦と駆逐艦は空母の援護に付け!」
艦隊は直ちに陣形の変更を開始した。
数分前・・・
「ト連送、受信しました」
「『鳳翔』攻撃隊より、敵艦に命中、米空母炎上中」
電文が次々と飛び込んでくる。そして電探は敵艦隊の姿を捉えていた。
「全艦、最大戦速」
第2艦隊司令長官、伊藤整一中将は下令した。旗艦「大和」艦長、有賀幸作大佐が命令を復唱し、チンと、軽やかな音とともにテレメーターが引き倒された。同時に増速を命じる旗旒信号がマストに掲げられ、後続する戦艦「長門」「伊勢」「日向」「榛名」、第4艦隊に伝達される。
「大和」が増速した。艦尾のウェーキが勢いを増し、艦首から白波が噴き上がる。メーターは、ほぼ最大速の25ノットを指している。
「総員、戦闘配置。見張り、疑わしい物があったら即座に報告しろ」
艦隊は米艦隊へ向けた東進を続けている。
第1艦隊が最大戦速での東進を続けている間にも米艦隊の行動は続いている。
「アイオワ」「ニュージャージー」「ミズーリ」「ウィスコンシン」「サウスダコタ」「インディアナ」「マサチューセッツ」「アラバマ」「ノースカロライナ」「ワシントン」から成る戦艦郡が日本艦隊を迎え撃つべく単縦陣に陣形を変更し、空母の盾となるように展開する。主砲、副砲、両用砲では砲術員が砲撃命令を待ち続ける。
「敵艦隊射程内、レーダー射撃可能です」
砲術長が報告する。
ハルゼーは首を縦には振らなかった。
「敵は全速でこちらに向かっている。レーダー射撃では正確な着弾は得られないだろう。発砲すればそれを目標に反撃を受けるかもしれない。砲撃は有視界射撃とする」
ハルゼーにしては珍しく弱気な発言になっていたのは、日本軍航空隊に一方的な攻撃を受けたからかもしれないが、この決断は後に日本軍に大きく利することになる。
ややあって・・・
「西方に煤煙を視認!」
「来たか」
互いの発見はほぼ同時であった。
第2艦隊司令長官、伊藤整一中将は命じた。
「水上戦闘用意、主砲、三式弾砲撃用意!」
大海戦の火蓋は、切って落とされた。
さて、伊藤中将は三式弾で何をする気なのでしょう。わかる人にはわかると思います。
次話をお楽しみに。
なんかテレビみたい・・・