運命の5分間
投稿遅くなりました。すんません
「まだ発艦出来んのか!」
ハルゼーは焦っていた。第2次攻撃隊に投入する機体は第1次攻撃隊と同じく150機の予定であり、150機を追加する指示に各艦は混乱をきたしていたのである。こうしている間に日本艦隊が移動してしまっては元も子もない。しかし、ハルゼーは命令を撤回しようとはしなかった。この状態で命令を変更すれば、更なる混乱を生むことは目に見えている。ハルゼーの緊張が限界に達したその時、
「全機、発艦準備完了しました。また、直掩機の燃料が少なくなったため、着艦を要請しています」
「よし、攻撃隊発艦後、直掩機を着艦させる。全機発艦開・・・」
ハルゼーが命令を下さんとしたその瞬間だった
「敵機直上、急降下!」
「なに!」
日本軍機は雲の中から機会を待ち続けていた。そして米艦隊の発艦準備が整ったと見えた。米空母は上空から見て18隻、他に空母は見えない。
「よし、やれるな。ト連送発信!」
「トトトトト」
「全軍突撃せよ」を意味するト連送が淵田機から打電された。
まず、9機の九六艦爆が急降下を開始した。本来なら接近した時点でレーダーに捕捉されているはずであるが、木と布が主な材質である九六艦爆、艦攻はレーダーには反応せず、堂々と米艦隊に接近できたのである。
米艦隊は必死に対空砲火を撃ち上げたが無意味だった。米軍が誇るVT信管も、電波を反射しない機体には反応せず、無為に飛び抜けるのみであった。
艦爆隊が艦隊にさらに接近すると対空機銃が撃ちかけられたがこれもまた効果を挙げられなかった。熟練の搭乗員たちは機体を滑らせ射弾を回避し、時折命中する機銃弾も布では信管が作動せず、炸裂しなかったのだ。そして艦爆隊は各々が目標の空母へと突進し、爆弾を投下した。続いて緩降下してきた艦攻隊が、着艦するかと見まがうような低空から爆弾を投下する。
通常、この程度の攻撃では空母は沈まない。しかし日本軍からすればこれで十分であった。
投下された爆弾は真っ直ぐに甲板上の艦載機に向っていく。
そして、命中した。
爆発自体は小規模であったが、火災が発生した。そして、火焔に炙られたガソリン、魚雷、爆弾が次々と誘爆を始めた。米海軍が誇るエセックス級をはじめとする空母18隻が次々と炎上した。
日本軍機が飛び去ったとき、海域には黒煙を噴き上げる空母の残骸と、慌てふためいて放水を開始する援護艦艇、複葉機相手に何もできなかった新鋭戦艦のみが残されていた。
「あぁ・・・」
ハルゼーは呻くことしかできなかった。
米海軍はものの5分の間に米海軍は主力空母18隻大破という大損害を蒙ったのである。この戦闘は後に「運命の5分間」と呼ばれ、歴史に名を残すことになる。