反撃の火蓋
「第1次攻撃隊が全滅だと?」
米海軍第3艦隊旗艦「ミズーリ」艦上のハルゼーは驚愕を隠せずに唸った。
「はっ、攻撃隊は2機を除き全機未帰還とのことです」
「なんということだ・・・」
ハルゼーには150機の攻撃隊が全滅したということが信じられなかった。いや、信じたくなかったのだ。
報告によれば日本軍機は母艦からはるかに手前で迎撃してきたということである。日本軍が攻撃隊を遠方から発見したということから、ハルゼーはある1つの結論に到った。
「奴らはピケット艦を配置しているに違いない」
ということである。実際には日本軍はピケット艦を配置するほど兵力の余裕があったわけではなく。偵察機を活用したに過ぎない。ハルゼーにも偵察機の存在は知らされていたが、ただの触接だと考えていた。
ならばピケット艦もまとめて地獄送りにするほか無い。ハルゼーは次なる命令を下した。
「第2次攻撃隊を300機、発進させろ。猿共を生かして帰すな!」
ハルゼーはあるいは感情的になっていたのかもしれなかった・・・
同時刻、「鳳翔」
「第1艦隊から入電、『我、敵攻撃隊ヲ撃滅セリ』です」
「全機発進せよ」
飛行甲板で待機していた18機の攻撃隊が大須賀の命令で発艦を始める。旧態依然とした、しかし優美な外観を持つ九六艦爆、九六艦攻はプロペラの回転音を響かせながら米艦隊に向って飛び去って行った。第1艦隊の戦闘機隊に比べると小規模に過ぎるように見えたが、彼らの機体でこそ可能な作戦であり、彼らが勝利への鍵であった。
「全機へ、低空飛行を続けろ、敵に発見されるわけにはいかん」
「鳳翔」攻撃隊隊長、淵田美津雄大佐は僚機に手信号を送った。作戦の都合上、無線電話は使用できない。真珠湾以来の熟練の攻撃隊は10フィートの高度を保って米艦隊へと接近していった。
この頃、第2艦隊も米艦隊への接近を開始していた。