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帝国陸海軍、最終決戦開始ス  作者: かめ
マリアナ諸島攻略作戦
30/39

決断

「消火急げ、飛行甲板から残骸をどかすんだ。無事な艦は直ちに攻撃隊を発進させろ」

 ミッチャーの指示が飛ぶ。

 攻撃を受けなかった各艦からは攻撃隊が順次発艦している。

「残骸の撤去完了しました」

「飛行甲板の損傷は?」

「ありません。今すぐ使用可能です」

 中津留の闘志も、最新鋭の兵器の前には無力だったのだ。

「よし、発進はじめ!」

 甲板から制空隊のヘルキャットが発艦する。攻撃隊は空中集合せずに準備の整った中隊ごとに順次攻撃することになっていた。これは波状攻撃となり、敵に余裕を与えないという効果があった。


 そして、米軍と同時に日本側でも攻撃が準備されていた。

 各空母の甲板上には烈風、彗星と共に急降下爆撃も可能な新鋭攻撃機「流星」が並べられていた。上空には直掩の紫電改が飛行している。

 鹵獲艦では流星の製造が間に合わなかったために天山艦攻が搭載されていた。

「長官、攻撃用意完了しました!」

「敵の動きはどうだ?」

「はっ・・・」

 艦長が答えようとしたとき、上空の直掩機がバンクをとり翼を翻した。

「敵機来襲!」

 見張り員の声が飛ぶ。

 攻撃は米軍のほうが早かったのだ。

「戦闘機を可能な限り上げろ、全力で迎撃するんだ」

 紫電改が米編隊に向かって行く。

 米編隊の先頭を行くグラマンと紫電改が交わると同時に空中に爆炎と煙が湧き出した。

 グラマンをくぐり抜けた紫電改がアヴェンジャーに突進する。紫電改から火箭が迸ると、アヴェンジャーが火を噴く。

 米軍側もやられたままではなかった。グラマンが紫電改の後方から銃撃を浴びせる。銃撃を受けた紫電改は機体を穴だらけにされて錐揉みに入る。

 空戦場は混沌としていたが、そこに増援の烈風が到着した。烈風がグラマンに襲い掛かる。回避に転じるグラマンを20mm機銃弾が襲った。

 いかに防弾性能に優れるグラマンといえども20mm機銃弾の連打には耐えられない。翼をもぎ取られて墜落する。

 一見すると日本側優勢に見えたが、米軍機の来襲はとどまる所を知らなかった。

 次々とやってくる爆撃機、雷撃機を追って上昇、下降を繰り返すうちに搭乗員にも疲労が蓄積していた。経験の浅い搭乗員の中には操縦を誤って海面に激突する者もあった。

 そうした搭乗員を、駆逐艦は対空射撃を行いつつ可能な限り救助した。

 ついに防空網に穴が開いた。そこから米軍機がなだれ込んでくる。対空射撃が集中されるが、効果はあまり大きくなかった。

 元来、艦船の対空射撃は撃墜ではなく威嚇を目的としている。敵機が怯まなければ効果は無いのだ。

「敵機直上、急降下!」

 鹵獲艦にヘルダイバーが突貫する。直後、鹵獲艦の甲板上で爆発が起こった。その煙の中でさらに複数の爆発が起こった。甲板上の爆弾、魚雷が誘爆しているのだ。

「やられたか!」

 小沢の口から信じられないというような声が飛び出す。元はダメージコントロールに優れたエセックス級であるために沈むことは無いだろうが、空母としての能力は再び失われた。

 他の艦も必死の回避運動を続けているが、いつ被弾するかも分からないような状況だ。

「長官、後退を具申します」

 参謀の一人が言う。

「駄目だ、攻撃範囲外に出る前に全艦やられてしまう」

 航空参謀が反論する。艦橋に混乱の色が見え始めていた。

「そうだ、確かに我々は生き残れないだろう」

 小沢が口を開いた。参謀が目を見開く。

「ならばせめて、本来の目的を達しようではないか」

「では、どうすればよいのでありますか?」

 小沢は無言で右手を挙げた。そして米艦隊が居るであろう方向を見据える。艦橋の外では未だに激しい空中戦が続き、高角砲弾炸裂の爆煙が湧き出している。

 小沢の手が、振り下ろされた。

「前進!」

 参謀だけでなく艦長、副長らも目を見開いた。

「それでは艦隊が・・・」

 参謀の一人が呟く。

「よく考えろ!我々の本来の目的とは何だ」

 呟いた参謀は小沢の言うことを覚ったらしく

「はっ」

 と一言言うと黙り込んだ。

 伊藤も同じようなことを言っていたな、と小沢は呟き苦笑すると、表情を引き締め命じた。

「全艦最大戦速、敵艦隊に向かう。空母は艦載機を収容せよ」

 旗艦「利根」のマストに信号旗が翻る。

 各艦がにわかに速度を上げ、隊列を組むべく行動を開始した。

 先頭を行く「利根」は至近弾の水柱をくぐり抜け、前進する。

 小沢の決断が、動き出した。

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