敵機動部隊発見!
「嵐を抜けました。偵察機を出しますか?」
参謀がミッチャーに尋ねた。
ミッチャーは無言で頷き、了承の意を示した。
先程と同様に各空母から偵察機が発艦する。ミッチャーは敵艦隊が発見されるまでの間、航空機の整備と点検を入念に行わせることにしていた。
だが、事態は予想外の方向に転換した。
偵察機を出してから僅か15分で日本艦隊が発見されたのだ。
発見されたのは米艦隊の北方に位置していた第1艦隊であった。
この近距離で互いの発見が遅れた原因は天候にある。低気圧による電磁障害によってレーダーによる索敵はほぼ不可能な状態であり、低気圧を抜けた後も視程が悪く接近に気付けなかったのだ。
同様の事は日本側でも発生していた。
「長官、敵機動部隊を発見しました!」
「位置は?」
「それが、我が艦隊から僅か60海里の海域との事です」
報告した航空参謀が青ざめた顔で言った。
小沢は即座に反応した。
「攻撃隊発進用意!積むのは25番でも構わない、敵攻撃隊の発進を阻止しろ」
「はっ」
直ちに25番を装備した彗星艦爆25機と烈風40機が「信濃」より発艦した。
「全機、低空より接近する。我に続け」
第1次攻撃隊長中津留大尉機から指示が出される。
中津留は房総沖海戦時は鍵であった「鳳翔」航空隊に配属されていたが、現在は「信濃」航空隊所属となっている。他の熟練搭乗員も同様の者が多い。
低空から侵入する中津留の目にいくつかの黒い影が映った。
「グラマンだ」
中津留が発見したのは直掩機のグラマンF6Fヘルキャット15機だった。
「戦闘機隊は敵機を攻撃せよ、爆撃隊は最大速にて前進、敵空母を叩く」
烈風が高度を上げ、下方からグラマンに襲い掛かる。グラマンは未だに気付く様子は無い。




