決戦
読者様からのご指摘で「大淀」がなぜか復活していたことが判明したので訂正しました。たびたびご迷惑をおかけしてすみません。
「硫黄島が爆撃を受けた」
という報告は即座に米海軍第58任務部隊へと伝わった。第58任務部隊は、壊滅した第38任務部隊を再編し、マーク・ミッチャー大将に指揮を委ねた部隊である。かつての指揮官ハルゼーは敗北の責任を負って退任した。
「偵察機を出せ、付近に日本艦隊の姿があるか、確認しろ」
硫黄島とマリアナ諸島の中間地点。新造の空母「ミッドウェイ」の艦橋でミッチャーは指示を出した。
偵察機に改修されたドーントレスが飛行甲板に上げられ、次々と発進する。
発進した偵察機は総勢30機。扇状に展開し、伊豆諸島から台湾までの海域を偵察する。
硫黄島南方150海里、日本海軍第1艦隊旗艦「利根」
「右舷上空に敵機!」
見張り員の声が響いた。
「機種は?」
「ドーントレス爆撃機ですが、爆弾を搭載していません。偵察機と思われます」
「駆逐艦隊、砲撃を始めました」
別の報告が入る。
「対空戦闘用意」
艦長の指示で、甲板上に配置された2連装主砲塔4基が旋回し、仰角を取る。
「撃ーッ!」
8門の主砲が轟然と火を噴いた。続いて高角砲も射撃を開始する。射程外なので機銃は沈黙したままだ。
空中に次々と砲弾炸裂の黒煙が湧き出すが、敵機は堪えた様子も無く飛び続けている。
「敵ながら、見事なものだ」
第1艦隊司令長官であり連合艦隊司令長官でもある小沢治三郎中将の口から、自嘲とも感嘆とも取れる呟きがこぼれた。
「これで、敵に我々の存在は知られたな」
「はい、恐らく敵もこちらに全兵力を振り向けてくるでしょう」
参謀の一人が答えた。
「では、予定通り第2艦隊及び、第3艦隊は前進、第1艦隊は航空支援を行う」
第3艦隊には「鳳翔」「酒匂」に加えて鹵獲艦艇の内5隻が編入されていた。
「『大和』に信号、第2艦隊は第3艦隊と共に前進、マリアナ諸島を攻撃せよ」
命令を受け、第2艦隊、第3艦隊が増速する。
同時に第1艦隊各艦の艦上で攻撃隊の発艦準備が開始された。
そして各艦隊の旗艦のマストには1つの信号旗が掲げられていた。信号は「Z」・・・
「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ」
私用により投稿が遅れました。申し訳ありません。




