硫黄島、壊滅
「まもなく目標上空に到達!」
報告が入るが、言われずとも分かっている。既に前方にはかつて栗林忠道中将指揮する硫黄島守備隊と、米海兵隊が死闘を演じた火山島が見えている。
そしてその中央付近にはかつて、日本軍のものであった時とは比べ物にならない程に整備された飛行場が広がっている。その一角から黒煙が立ち上っているように見えたが、気のせいかもしれない。
少なくとも長倉には黒煙の有無を確認する余裕はなかった。飛行場周辺から激しい対空砲火が撃ちかけられたからである。
編隊の周囲に砲弾炸裂の黒煙が沸き立ち、機が激しく振動する。
「2番機被弾!」
悲痛な報告が上げられた。
編隊2番機の銀河が、左翼付け根から火を噴き、高度を落としていったが、高度300m付近で爆発した。爆弾倉か燃料タンクに火が回ったのであろう。後方でも多数の機が被弾、墜落しているが、編隊は辛うじて目標上空に接近していた。
「目標上空に到達」
「投弾用意、爆弾倉開け」
長倉は爆撃照準器を覗き込んだ。
「よーそろー、よーそろー・・・」
滑走路を中心に捉えた。
「撃ッ!」
銀河の胴体下から50番(500kg)爆弾2発が投下される。後続機もそれに倣い、次々に爆弾を投下する。
無数の25番(250kg)、50番(500kg)爆弾が地上を目指して落下して行く。
数十秒が経過した後、滑走路に最初の爆弾が着弾した。大量の土砂が巻き上げられ、轟音が周囲に響き渡る。その余韻が収まらぬ内に次の爆弾が着弾する。連続する爆発によって巻き上げられた土砂に日光が遮られた。絶え間なく爆発が起こる様はあたかも地面が沸騰しているかのようであり、まさに地獄絵図であった。
狂騒が収まった後、
「滑走路の破壊を確認!」
電信員が弾んだ声で報告した。
長倉も滑走路に目をやった。滑走路には無数の孔が空き、周辺の格納庫等も煙と炎を噴き出している。
「GFに打電、我、滑走路ノ破壊ニ成功セリ」
作戦の第1段階は成功した。
あとは艦隊の働きに全てを任せるほか無い。
しっかりやってくれよ、と長倉は心中で呟いた。
攻撃隊は、日本本土への帰途についている。




