迎撃
久しぶりの投稿
「レーダーに敵機多数、大型機です!」
米軍硫黄島守備隊は既に日本軍機の接近を察知していた。ただちにP51、40機が迎撃に飛び立った。
伊豆大島上空を通過した直後、
「右前方、敵機!」
長倉に報告が上げられる。
「全機高度を落とせ。密集し、弾幕を張るんだ!」
機間が詰められ、全機が濃密な火力網が形成される。
上方に占位したP51が逆落としに編隊を襲う。
P51が駆け抜けると同時に2機の一式陸攻がエンジンから火を噴いた。
2機の陸攻はそのまま海面目掛けて落下して行く。
だが日本側も黙ってはいなかった。
続いて急降下した3機のP51に、容赦のない銃撃が浴びせられる。
2機が弾幕に飛び込み銀色の胴体を粉砕させる。
見れば他の編隊も多数の敵機を撃墜しているようだ。だが時折編隊の中から日本軍機が煙を引いて脱落するのも見える。
「あと少し、あと少し保てば」
長倉の口から呻きが漏れた。
今は数に物を言わせてなんとか持ちこたえているが、敵に増援が加われば最後だ。それまでに硫黄島にたどり着かなければならない。
その時、長倉の目に正面から接近するP51が映った。まずい、と思ったその時、P51が爆砕した。
眼前を3機の紫電改が通過する。
「我、貴隊を直掩す」
手信号が見て取れた。
彼らは空母搭乗員としての訓練が間に合わず、内地に残されてきたのだが、攻撃隊が攻撃されているとの伊豆大島からの警報を受け、掩護に乗り出したのだ。
飛来したのは紫電改だけではない。陸軍機の飛燕、五式戦なども見受けられた。
戦闘は日本側優勢に進んだ。
「迎撃機、未帰還28機、効果不十分」
硫黄島では絶望的な報告が上げられていた。
「クソッ、続けて飛ばせ。上げられる機を全機出せ」
滑走路にP51が入る。そのまま離陸を始める、筈だった。
轟音が響いた。滑走路のあちこちに、砲弾が落下している。
「なんだ!?」
「潜水艦による砲撃です」
硫黄島沿岸、日下敏夫中佐は伊四〇〇の司令塔から満足げに砲撃を眺めていた。隣では伊四〇一、伊四〇二、伊一四も次々と砲弾を送り込んでいる。
ここからでは目標が視認できないため効果の程は不明だが、威嚇にはなっただろう。
「潜行しろ、敵の反撃が来るぞ!」
砲に蓋がされ、要員が艦内に退避する。日下も司令塔に滑り込むとハッチを硬く閉めた。
間が潜行し、波による揺れがなくなった。
海面に砲弾が弾ける音が聞こえたのはすぐ後のことだった。
硫黄島に、爆音が近づいていた。




