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帝国陸海軍、最終決戦開始ス  作者: かめ
房総沖海戦
15/39

降伏

「酒匂」を「矢矧」に訂正しました。

「左舷、雷跡!」

 見張り員が報告する。

「取舵一杯、急げ」

「隊列を崩すな、全速で走り抜けろ」

 古村が指示する。

「敵艦を攻撃しないのですか?」

「空母に肉薄する。駆逐艦など捨て置け」

 米艦隊にとって不幸であったのは、重巡を持っていなかった事であった。重巡をはじめとする護衛艦隊の主力はテニアンに集中していた。

 米駆逐艦がまた1発の魚雷を発射した。ほぼ同時に「磯風」の艦体が持ち上がり、水柱が「磯風」の姿を隠した。水柱が消えたとき「磯風」の後甲板は既に海上に無く、前甲板も沈降を始めていた。

「『磯風』被雷!」

「構うな、進め」

 狂気とも言うべき突貫であった。

「敵空母周辺に多数の駆逐艦を視認」

 次々と情報が入ってくる。

「砲撃で片を付ける。主砲、右砲戦用意」

 15cm連装砲が旋回する。後続各艦も「矢矧」に倣い砲撃を用意する。

ーッ」

 戦艦砲に比べ遥かに小規模な砲火が迸る。命中弾はない。30ノット近い高速で航行中なら当然であった。

 要は威嚇である。攻撃によって米艦隊の行動を牽制すればそれで十分だった。

「敵空母、距離1400」

「敵空母の前面に出ろ。針路を遮るんだ」

 水雷戦隊が米空母群を追い抜く。

「おもーかーじ」

 発射管の脇では、兵員が発射命令を今や遅しと待ちわびていた。発射管の眼前には米空母の艦首がある。

ッ」

ーッ」

 復唱と同時に九三式酸素魚雷が発射された。

 

「前方より雷跡!」

 米空母艦上では混乱が発生していた。度重なる爆撃によって艦内通信が遮断され、CICに居る艦長らとの連絡が取れなかったのである。やむなく当直士官や航海長の独断で魚雷を回避したが、これが更なる混乱をもたらした。各艦が統一された回避運動を取らなかった為に、衝突する艦や衝突直前で回避する艦が相次ぎ、先頭付近を進む3隻が衝突すると、目に見えて艦隊の行き足が鈍った。

 その時、米空母に絶望が舞い降りた。

「後方に煤煙、日本軍の戦艦です」


 「長門」艦橋、

「目標、距離4200」

「砲撃を再開します」

 砲術長の具申に対し、宇垣は待ったをかけた。

「米空母に降伏勧告をする。『榛名』を先行させろ」

「はっ…」

 艦橋に異様な空気が流れた。20隻近い空母にたった4隻の戦艦で降伏勧告をするなど聞いた事も無い。

「発光信号、送れ」

 「長門」の艦橋からチカ、チカ、と発光信号が送られた。「直ちに機関を停止し武装を解除せよ」

 既に「榛名」が米空母の先頭を抑えようとしている。号令一下、砲撃を開始する構えだ。

 ややあって・・・、「エセックス」が機関を停止した。続いて各艦が減速する。

 

 艦橋のマストには、・・・白旗が掲げられていた。

 

 「長門」艦橋の幕僚達は息を呑んだ。

「臨検隊を送る、ボートを降ろせ」

 落ち着いているのは宇垣だけであったが、その宇垣も内心では興奮を抑えるのに苦労していた。

 臨検隊を送ると言ったが、そこからが大変であった。15隻の空母に臨検を行うのである。各艦から士官を降ろすだけでも1時間近い時間を要した。その間にも日は暮れていく。

 臨検を終えたとき、既に18時であった。夏の日は長いとはいえ、既に東の空は暗くなりつつある。

 空母の乗員は全員、日本海軍各艦に移乗させられた。ただし機関員を残してである。日本に回航するにあたって、操艦を行う要員が足らなかったのである。米空母は日本士官の監視の下で日本に回航された。

 サイパンや硫黄島の米陸軍航空隊の存在が不安要素であったが、第1艦隊の上空援護もあって、空襲は受けなかった。

 21時頃、空母が15隻追加された艦隊は横須賀に入港した。

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