美有貴×鈴 『帯』
「鈴ちー。結んで、結んでぇ」
甘えるように語尾を伸ばしながら美有貴が鈴に帯を差しだした。
実年齢より幼い仕草は、幼少期から芸能界で働いている美有貴の自然体だ。鈴にだけ特別そうだというわけではなく、誰に対しても同じように年少者の立場で接している。彼がKISSMEの弟担当と言われる所以である。
「帯はまだですよー。腰紐からです。少しキツいかもしれないですが、頑張ってください」
「うっ。頑張るけど、あんまり痛くしないで」
「痛くはないから大丈夫ですよ。ホントにダメなときは言ってくださいね。はい、背筋伸ばしてくださーい」
「はぁい」
鈴は衿の合わせを首元から直し、ぐっと力を込めて腰紐を結んだ。美有貴は言われた通りにぴんと背を伸ばし、衿をずれないように押さえて補助する。
中腰になった鈴が帯を美有貴の腰に抱きつくようにして巻き付けた。はじめに垂れとして残しておいた部分は押さえながら、巻き付けたほうの帯の先をきつめになるよう引っ張った。
今日は浴衣での撮影だ。鈴が美有貴のために用意したのはネイビーの市松模様。
「ふふふ」
「なになに? なんで笑ってるの?」
「久しぶりに浴衣姿の美有貴くんを見たなぁって思って」
「あー。そう、そうだよ。ぼく甚平ばっかだったよね」
「美有貴くん似合うから、つい着せたくなっちゃうんです」
ともすれば子ども扱いにも聞こえる台詞だが、美有貴は納得したように頷いている。
「ぼくもそんなに着たいって思わないからなあ」
「あれ。どうしてですか?」
「女の子みたいーってファンの子に言われちゃうんだ」
「あはは……美有貴くん華奢ですし、かわいいから。そう見えちゃうんでしょうか」
「ぶー、カワイーはいいけど、女の子みたいってのはやなんだ」
うーん、と鈴は首をひねった。
「女の子みたいっていうのは、表現があいまいなだけでかわいいの変形というか。お友達になりたいなとか、親しみやすいっていうことなんじゃないでしょうか。一緒に遊びたいなって感じです。若い女の子は男の子っぽい男の子だと緊張してしまうでしょうし」
「男だってのはちゃんと分かってくれてるのかな」
「もちろん、そうですよ。わかっていて、だから『みたい』なんて言葉を使うんだと思います。KISSMEのみなさんとじゃなくて、ちゃんと女の子の浴衣と並べば、違いがわかりますから」
「そーだよね! 色使いとか全然違うもんね」
女の子の浴衣、と聞いて、美有貴の顔がぱっと明るくなった。
「鈴ちーには金魚の浴衣が似合うと思うな。ピンクのやつ。そんで一緒にお祭り行きたい!」
「いいですねー。花火も見たいですねえ。ツアー中に日程が被る地方もありそうです。みんなでわいわいするのも楽しいかも。……さすがにバレちゃうでしょうか」
「えーっ。四人じゃ意味ないじゃん。二人っきりがいい。二人で並んだら違いが分かるってことなんでしょ」
「はあ、でもわたしは知ってますし意味ないですよ」
「ぼくは鈴ちーとじゃなきゃ嫌だよっ。ねー、行こうね! 行けたらでいいから。約束」
「う……、は、はい」
甘えるような口調と押しに弱い鈴は、少しの譲歩に心動かされて了承した。
「わーい! 浴衣でデートだ!」
「あ」
二人きりの意味に気づいたときには後の祭りだ。




