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葉月(迷恋)

リョウスケは看護師からアプリーレライヴチケットをプレゼントされた。

退院の日、タイシとコトミが車で、迎えにきてくれた。

しばらく3人で騒ぎはしゃいだ。

そんな時、公園で事件は起きた。


 

 ぼくの感情が染み出る。

 目の前でコトミが刺され倒れた。


 「救急車!」


 タイシが大声で騒いだ。


 「オレ、犯人追っかけてくる」


 タイシは逃げた犯人を追っかけた。


 「大至急救急車お願いします」


 ぼくの声が震えてる。


 コトミの胸部から血がしたたり落ちる。


 ぼくは着ていたアロハを脱いで、胸部を押さえた。


 「コトミ、もうすぐ救急車くるから、がんばれ」

 「リョウスケありが‥‥‥」


 コトミのしゃべる声が弱々く途切れる。

「もう、しゃべらなくていいよ」


 「リョウスケ」

 「もうしゃべるな」


 「ずっと好きだった」


 ぼくの押さえていた両手の力が抜けた。


 こんな状況で言う言葉か。

 コトミが力ない左手でぼくの両手を触ってきた。


 その左手には力がない。

 多少の温もりが伝わってきた。


 ぼくは、強く握った。

 けどコトミの指先から力は伝わってこない。


 救急車のサイレンが近づいた。

 救急車に乗る。


 水色のアロハは真っ赤に変わっていた。


 コトミは肺部を貫通していると救命士が話してい 

 た。


 梅雨が明け夏がきたと同時にコトミは死んだ。


 病室で聞こえていたミンミンゼミとつくつくぼうし

 の鳴き声が今は煩わしい。

 

 人間って勝手だ。


 通り魔事件でコトミの話題がニュースで取り上げら

 れた。


 『ずっと好きだった』

 コトミが最後に残した言葉だ。

  


 なんで? 何度も頭をよぎるんだよ!


 ぼくは何度も首を振った。


 微かな温もりが手元に蘇る。

 ぼくとコトミしか知らない会話だ。


 ずっと‥‥‥高校時代からなのか?


 もう聞くことができない。

 考えれば、考えるほど心が重くなる。


 鉛のようなコトミの思いに押し潰される。


 「タッ、タイシ」


 タイシが号泣だ。

 顔中がぐちゃぐちゃ、コトミへの思いがこの姿で分か   る。


 ぼくは深い感情の底に沈めた。

 そこにはチグノへの想いが眠っている場所だ。

 それより深い場所に眠らせたい。


 「おれ、コトミが好きだった」

 「えっ」


 「生きてるうちに言っとけば良かった」


 タイシがぼくのひざもとで崩れた。


 「おれ、ぜってい犯人見つける。そんで、ぶっ殺し

 てやる」


 タイシは、すごい迫力だ。

 殺気に圧倒される。


 「知らなかった。タイシがコトミを好きだったと

 とわ」


 タイシが地面を叩いた。

 その振動が、ぼくの足裏に伝わってくる強さだ。


 ぼくはタイシに助けられた。

 けどぼくはタイシを助けてやれない。


 「おれ臓器提供するよ」

 「えっ臓器提供?」


 立ち上がったタイシは真剣だ。


 「そしたらコトミが、0.1%でも生きれたかも」


 タイシの思いは、ぼくのチグノへの想いより、すごい!


 「ぼ、ぼくがするよ」

 「えっ! リョウスケが?」


 なんでぼくは、そんなこと言ってしまったのか。

 自分でも言ってる意味が分からない。


 ぼくは不器用だ。

 今のタイシやコトミに、こんな誠意しか返せない。


 どうせ、ぼくの臓器提供は多分無理だと思うけど。


 「火曜日、定期検診で主治医に相談してみるよ」


 開き直る自分がいる。

 よしっ決めた。


 アプリーレライヴに行く。

 それでコトミへの供養にもなる。

 

 そんな時スマホが鳴った。


 「リョウスケくん」


 「あーあ、看護師さん」

 「申し訳ないけど」


 それ以上無言だ。


 

 「もしもし‥‥‥」


 

 通話は切れた。



今回も閲覧してくださってありがとうございます。

皮肉にも予期せねことって不意にやってきますよね。

その時、わたしはバタバタして、いつも疲労こんぱい。

よく人生には上がり坂、下り坂、まさか!ーー があると聞きます。

みなさんも、まさかに気をつけてね。

わたしはまさかの連続です。


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