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エピローグ 卯月(魂愛)

古民家に行くとチグノが監禁されていた。

そしてリョウヘイがナイフをかざし暴れた。

リョウスケは必死になってチグノを守り、リョウヘイと闘った。

それでもリョウスケと同じ血がつながるリョウヘイは抱きしめた。

そんな時、季節外れの大雪に耐えられなくなった古民家の屋根は倒壊した。

 崩壊した屋根に別雪が降りやまない。


 「チ、チグノ?」


 無意識に眼球がチグノを探す。

 屋根は半分崩れてる。


 ぼくは、うつ伏せのまま下敷きだ。


 しかも上に掛け布団のように被さっている。

 身動きできない。



 「チッ、チグノーー!」


 のどが割れる勢いで叫ぶ。


 一方通行の声は、晩夏に鳴くセミのような狂声だ。


 上体を動かすと上半身だけかろうじて動く。


 ただ下半身は下敷きだ。


「チグノはここだ!」


 数秒後に、こだまのように後方から返ってきた。


 その声はリョウヘイだ。


 「リョウヘイ無事か?」

 「おれは無事だ。チグノは、おれの足元のあたりに下敷き だ」


 早くチグノを助けたい。

 けど動きたくても屋根に捕らわれの身だ。


 動く上半身だけを左右に揺する。

 多少の隙間ができた。


 腕だけを動かして前進する。


 

 ーーぬっ抜けたーー



 偶然にも半分折れた大黒柱に屋根の柱が引っかかってくれ た。


 振り返るとリョウヘイが顔だけ出している。


 折れた柱が足元にある。

 テコの原理で持ち上げ空洞を作った。


 リョウヘイは素早く出てきた。


 「チグノ、チグノ」


 彷徨うように返事のない声に耳を傾けた。


 「このあたりだ」


 リョウヘイが指をさした。


 積もった雪をどかす。

 

 赤くはれた手は感覚がない。

 チグノの足裏が見えた。


 雲の隙間から日差しが天使の階段をチグノを照らす。


 チグノが天国に登るような気がしてしまう。


 リョウヘイと折材をどかすとチグノの下半身が現れた。


 もうすぐだよチグノ!


 「おれにまかせろ」


 リョウヘイが子ねずみのように開いた小さな隙間に潜り込 んだ。

 

 「息してないぞ。リョウスケすぐに救急車」


 リョウヘイのこもる声が嘘だと思いたい。


 スマホの数字を震えながら両手で押した。


 リョウヘイと下半身からゆっくり引きずり出した。


 チグノの顔は雪のようだ。


 「‥‥‥チグノ死ぬなぁーー」


 何度も心臓マッサージを繰り返す。


 「危ない」


 リョウヘイが上空を見上げた。


 雪の重みに耐えてた屋根も大黒柱が崩れ落下した。


 ぼくはチグノとリョウヘイの上にかぶさり守った。


 背中に鉄球をぶつけられたような重い痛みが全身をかけま わった。



 「リョウスケ!」



 天使の階段が、この中心部だけを照らし続けていた。



 ピィーポォーピィーポォー!



 気がつくとぼくは病院にいるようだ。


 「女性は肺をやられ呼吸が止まり危険な状態だ!」


 耳から聞こえるチグノの状態。

 ぼくは、もう目が開かない。


 ぼくはお守りで肌身離さずつけていた臓器提供カードを最 後の力を振り絞り握った。



 『ぼくの肺を臓器提供します』


 ぼくがもつ唯一の財産だ。


 「これなら移植できるぞ。急いで2人の緊急オペだ」


 ぼくのお守りが最後までチグノを守ってくれた。


 あーー、なんて最高の日だ!


 チグノ生きろーー!


 チグノがぼくに言ってくれた魔法の呪文。

 だから今度はぼくが言う。


 声の出ないぼくは喉仏を揺らした。



 チグノは、日々前向きに生きてきた。


 君と出会ってから毎日楽しかった。


 ぼくの寿命をここまで伸ばしてくれてありがとう。


 

 チグノを死なすわけにはいかない。


 

 ぼくは改めてノグチカナじゃなく今を生きるチグノが好き だ!



 もうぼくの足は冷たくて内臓もおかしい。


 

 でも耳だけはまだ聞こえるよ。



 どんなに内臓がやられても耳の細胞だけは譲らない。


 チグノが助かったと聞くまで。



 妙に鼓動がゆれる。


 ふと聞いたことのあるメロディーがロビーに流れてる。


 あのタクシーで聴いたラジオだ。


 パーソナリティの声は随分昔のように思えてしまう。


 「今日のテーマは愛。これから映画原作グランプリの発表 があります。お寄せいただいた愛にも様々な形がありまし た」


 パーソナリティの前置きが長い。

 これも演出のためなのだろう。


 「グランプリはリメンバーラブを書いたヨシノリョウスケ さん」


 突如ぼくの名前が呼ばれた。


 「このリメンバーラブが映画化決定しました。そしてコメ ント欄に実話と書いてあります」


 そう、ぼくはチグノと出会い育んだ愛の形を書いて応募し たのだ。

 

 「この映画の主役は、本人のチグノさんに決定しましたこ ともお知らせします」


 なんてサプライズだ!



 チグノは、これで夢だった地下アイドルから地上に上がれ る。



 ぼくの責任で、こんなチグノにしてしまった。


 何だか急に肩の荷が降りた気がする。



 「リメンバーって日本語の意味は、覚えてるよ、忘れない ようにって意味ですよね。ピュアな話しでしたよ」



 パーソナリティが好評を述べていた。


 まるでぼくの代弁者として話してくれている。



 ぼくは喜びを表現する力は残ってない。


 チグノやったよ!


 目覚めたチグノに言ってあげたい。



 身体が急に浮いた無重力の感覚だ。

 遠方には綺麗な花畑が現れた。


 

 ぼくは‥‥リョウスケではなくなる。



 ‥‥‥チグノの肺となり呼吸として生き続けるのだ。



 チグノ‥‥‥ずっとチグノが生き続ける間一緒だよ。



 「リョウスケ、ゴメンなぁ。おれが悪かった」


 今度はリョウヘイの声だ。


 「チグノへの思いはおれの1000倍だ」


 味わったことのない温風が体内を一周する。


 「だから母ちゃんだけは任せとけ」


 頼んだぞ、リョウヘイ。


 リョウヘイと最初の約束だ!



 枯れた雫も目元からもう出す気力もない。




 桜の香りが、どこからともなく鼻を賑わす。



最後まで閲覧してくださりありがとうございました。

無事に最終話までたどりつきました。

また機会があれば書きたいと思います。

その時はちょとだけ、のぞいて見て下さいね

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