弥生(深愛)
古民家にリョウスケが行くとリョウヘイが照明をつけた。
そこにはチグノが椅子に縛られていた。
リョウヘイはチグノをスクープした話しをした。
原因はリョウスケからくる嫉妬だった。
リョウスケは愕然とした。
そんな時チグノが本名はノグチカナだと伝えた。
チグノの初恋の人はリョウスケだと。
リョウスケもチグノが初恋の人だった。
「そんな夢物語などクソ食らえだーー!」
高潮したリョウヘイが再会の歓喜を砕き冷気に戻した。
氷河で覆ったリョウヘイの鎧に跳ね返えされた。
「やっ、やめろ!」
鈍光な刃物は氷河まで切り裂く刃先だ。
「リョウスケ! おまえも、これで生きる希望がなくなる よなぁ」
殺気を帯びたリョウヘイが牙を向けた。
その度、ぼくの暖かな部分までが凍りつく。
「わぁーーぁぁ!」
ぼくは無心で凍りつく前に、リョウヘイに体当たりした。
こんな力がまだ残っていたとは信じられない?
両足の指先から腐り、切断するほど悪化してる。
肺で呼吸するのがやっと‥‥‥なのに。
それでも血潮から力が湧いてくる。
これがぼくの底力だ。
リョウヘイは、ぐらつき刃物が床に落ちた。
ぼくはチグノの縛られた縄を解いた。
「チグノちゃん大丈夫? 早くここから逃げて!」
「‥‥‥1人で逃げるのは嫌よ」
チグノの眼球に吸い込まれそうな強い意志の表情だ。
「ぶっ殺すーー!」
リョウヘイの目は血走りデビルに変身した。
空気を裂きながら刃物をふりかざす。
リョウヘイと魂同士が激しくぶつかりあう。
同じ母ちゃんから生まれた。
顔も性格も似てない双子だ。
一緒に遊び笑い兄弟らしいことがないまま終わる。
そっ、そんなのいやだぁーー!
リョウヘイとは同じ血が流れてる。
だから決してデビルにさせない。
闇を切り裂き、暖かな光を与えたい。
リョウヘイの足元にチグノが縄を投げた。
その縄につまづきリョウヘイはよろめいた。
ナイフが手元から再び離れた。
外壁にあたる雪音が激しい響音でナイフ音をかき消した。
その瞬間に、ぼくはリョウヘイを強く抱きしめた。
氷山を温め溶かすように抱きつく。
リョウヘイは凍りつき凍死しそうだ。
ぼくはチグノが助かったので、死ぬことは怖くない。
「はっ、放せ!」
リョウヘイの結んだゴムがほどけ金髪が揺れる。
リョウヘイの氷山が崩れ落ちる激震にぼくは耐えた。
「リョウヘイ、母ちゃんを頼んだ」
熱湯をかけるように頬で温め溶かした。
「オレには母ちゃんなんていない」
喉を引き裂く叫声を響かし抵抗した。
「母ちゃんは、いつもリョウヘイのこと心配してたよ」
ぼくの誕生日ケーキにリョウヘイの名前まで書いてあるこ と。
クリスマスプレゼントやお年玉も準備してたこと。
ぼくはずっと不思議だった。
離婚して、もう会わないのに‥‥‥
でもその答えが熱海で分かった。
母ちゃんは2人のへその緒を肌身もち歩いてる。
ばあちゃんが最後に教えてくれた。
「ぼくは、もうすぐ死ぬ。だから、母ちゃんの場所へ行け ばいい!」
「放せぇーー放せ!」
「母ちゃんに温かい豚汁を飲ませてもらえ。世界1美味い から」
リョウヘイが腕に噛み付いた。
それでもぼくは離さない‥‥‥
たとえ腕がちぎられても‥‥‥
このまま離すと、もう会えない気がした。
「リョウスケくん大丈夫?」
チグノが呼吸もせずに口を開けたままだ。
一瞬リョウヘイの動きが止まった。
「リョウヘイ、ぼくの人生バトンタッチだ」
抵抗するリョウヘイに、おでこを合わせた。
「リョウヘイーー生きろ!」
これが最初で最後の兄からの願いだーー
ギィーーギィー!
建物全体から軋む音声が鳴る。
リョウヘイの叫声と軋む音は、建物を包む。
埃と塵が舞うように上空から降り注いだ。
ドォーンーー!
建物は屋根から突如倒壊した。
今回も閲覧してくださりありがとうございます。
いよいよ次回完結です。
様々な試練を乗り越えて出会った2人。
リョウスケの寿命も残りわずか。
2人は今後どのようになって行くのか?




