長月(強恋)
リョウスケは臓器提供を主治医に相談した。
主治医リョウスケの相談に驚いたが、前向きな対応をしてくれた。
リョウスケはライヴチケットをタイシにあげた。
タイシは喜んでアプリーノライヴに行った。
だかそのライブで爆破が起きた。
タイシは爆破で犠牲になった。
幸せの前借りってあるのだろうか?
タイシは風になった。
ぼくのほほを何度も今、通過してる。
そう考えると多少は気がまぎれた。
タイシはぼくの身代わりだ。
もし、ぼくがいたら‥‥‥早いか遅いかの違いで済んだ。
タイシに申し訳ない。
この数ヶ月でコトミとタイシがいなくなった。
今回の爆破、通り魔犯人ともまだ、捜査難航中らしい。
2人とも報われない。
悔しくて上空を見上げた。
タイシやコトミと海に行った入道雲が、なくなっていた。
季節はうつろい、気がつかないうちに過ぎている。
ぼくだけ残して、全て前に進んでいる。
ぼくはただ現状で足踏だ。
ただ死におびえているのだ。
何も進化しようとしない。
無進化な殻に閉じこもってばかりだ。
むっ、むなしい。
今はコトミからもらったアプリーノライヴチケットだけ残 ったままだ。
じっとチケットを見つめることしかできない。
くそっ!
ずっと抑え、ごまかしてきた。
よしっ行こう!
生かされたわずかな人生。
悲観的に生きてきた。
病気のせいにして生きてきた。
性格のせいにして生きてきた。
家庭環境のせいにして生きてきた。
ぼくはシングルマザーで育てられた。
3歳の時に父ちゃんが去った。
その時、双子の弟もいたらしい。
名前はリョウタ。
ぼくは父ちゃんやリョウタと遊んだ記憶がない。
最近ばあちゃんが教えてくれた。
母ちゃんに聞くと話しをにごすだけだ。
もうそんなこと、どうでもいいや!
そんな負の重荷だった過去を背負った生き方はやめる。
ぼくは様々な場面で、ただ負の仮面を被りなおしただけ だ。
(枕営業してメンバーに入ったらしいわよ)
ほんとの事実を知りたい。
ゆっくり流れていた血流が熱い。
これが血潮なのか。
ぼくを揺り動かし負の仮面を壊してくれたのはチグノだ!
だからチグノにもう1度だけ会いたい。
ライヴチケットをぼくは強く握りグシャグシャだ。
ぼくはゆっくり握りつぶしたチケットをのばした。
まだ、こんなエネルギーが根底に眠ってる。
信じられない。
ぼくはチグノに恋してるのだ。
だから今も生き残ってる。
ライヴの日程は今日だ。
幸せの前借りだなんて必要ない。
言葉は自分が発することで表面化するのだ。
思うことでは伝わらないし意味がない。
もうすぐ消える存在だからこそチグノに会いたい。
ライヴの日、胸がドキドキする。
会場も、爆破されたホームの地下ではないのが幸いだ。
久しぶりの会場は熱気で窒素しそうだ。
最初に興奮したワクワク感が足早に歩かせた。
ライヴ会場に入るとチグノグッズを自然と買った。
これが推しと言うものなのか?
コトミからのライヴチケット特典は、2つあるらしい。
まず新作のペンライトプレゼントだ。
4人のカラーブルー、レッド、イエロー、グリーンが1度 に光る。
しかも回転する新商品らしい。
チグノのカラーはグリーンだ。
「くじ引いてください」
ぼくはスタッフに言われるがまま引いた。
「おめでとうございます! ライヴ後チグノとチェキで写 真が写せますよ」
「えっ! チグノと一緒に写真?」
「あとチグノと握手。それと30秒間の会話もできます」
受付でスタッフが拍手喝采で盛り上げた。
「そんな特典だったのだ」
自分の気持ちを押し殺してまで、コトミが応援してくれて るようだ。
ライヴは、新曲からスタートだ。
ぼくの知らない曲だ。
ファンはノリノリだ。
ここでもぼくだけが止まっていた。
それでもペンライトを振った。
ぼくの推しチグノのグリーンだけを選んでいた。
熱狂残しライヴは終了した。
初秋の風が吹き始めたのに、
まだここはギラギラした真夏だ。
場内が明るくなり四方にそれぞれの推しがいた。
第2部の撮影会&握手と会話の始まりだ。
ぼくには新鮮な光景だ。
今まではライヴが終わるとすぐに帰っていた。
でも今は違う推しのチグノがいる。
ファンはそれぞれの推しに並んだ。
どれも行列が長い。
会場を見渡す。
どの列も長い。
ぼくはチグノの列で最後尾にだった。
少しずつ前に進み、チグノが少しずつ見えた。
笑うと三日月目になり白い歯がこぼれる。
あの時見た、地上を目指すチグノの顔だ。
ほんとに枕営業して今ここにいるのか?
光と闇が身体中いききする。
待つ間、胸中をぐるぐるエンドレスだ。
手汗が出る。
何度もズボンで脱ぐったが止ま
らない。
ぼくの番だ。
手首につけたリングを見て、スタッフがすぐチェキで写真 を写した。
「きてくれありがとう!」
先ほどまでの手汗を忘れ、チグノと握手した。
チグノは両手で握ってくれた。
弾力ある柔らかさだ。
チグノの笑顔が温もりまでつれてきてくれる。
「きてくれありがとう」
「うん」
「最近インスタ見てくれてないねぇ」
ギクッ!
‥‥‥チェックしてる。
「これからも応援してね」
写真にチグノがサインをくれた。
ぼくは写真を見て驚いた。
こんな慢心な笑顔をぼくができている。
新発見だ。
「写真の裏見てね」
小声でチグノが耳元でささやいた。
自販機前で!
今回も閲覧してくださりありがとうございます。
今回は開き直って強い気持ちを書いてみました。
熱い日が続きますが、毎日の生活も熱く生きれたらと思います。




