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帝と平凡な恋  作者: 沢本 桃吏
第一章
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帝と平凡な恋 第八話 朱江

第八話です。

「よぉ、よ!」



あぁ〜やだ。


橙は心の声をグッと抑えて笑みを湛えたままにする。


「お久しぶりですね。兄さま」



「あぁ、久しぶりだな。さて、何の用かな?お前、滅多に俺に会おうとしないだろう」



今まで、何度も会おうと言っていたみたいだが面倒臭いことになるので全て断っていた。


元々、先代皇帝が生きていた時に次の皇帝と言われていたのは朱江だった。


だから、タメ口を許しているのだが今は一応立場的には臣下である。


なので、橙の言うことの方がもちろん優位だ。




「用がないと会いませんよ。では、単刀直入に…兄さんは四夫人に子を孕ませたようですね」


朱江が微妙に目を逸らす。



「どういうことだ?朱江」



自分でも驚くくらい迫力のある声が出てしまった。


まぁ、これくらいしないと威厳が出ないのかもしれない。


「さすがに幻滅しました。兄さまとは言え、許せませんよ」


「いや、あのな」


この部屋には朱江の行いを弁明してくれるような部下はいない。


「異論は許さん。手を出したな?」



「…はい」


朱江は素直に認めた。


認めなかったら斬首の刑にしてやろうかと考えていたところだ。


「なるほどな。…半年、謹慎処分だ。帰れ」


「半年…」


妃に手を出して、さらには子を孕ませたとなると謹慎だけだと甘い処分になるだろう。



「さっさと帰れ。当分の間、顔も見たくない」


朱江は、無言で部屋を出て行った。






「橙さま、少し休憩なさっては?」


可昕は、優しく提案する。


「いや、そうしたいんだけど…仕事がなぁ。それに、魔術の強化練習もしたいし」



可昕は少し考えると、にやぁと怪しげな笑みを見せた。



「沙々を貸しますから、好きなように使ってくださいな」


「沙々を?」


直属になったとは言え、向こうの仕事を邪魔するわけにはいかず話す機会がない。



「そうか。分かったありがたく貸してもらう」





次の日、沙々を自室に呼び出していた。


「沙々、今日を俺にくれないか?」


「はい?」

思わず疑問符がついてしまう。





何でこうなっているのだろうか…。


頭を抱えたくなる気持ちになる沙々。

橙と出会ってからこうやって感情がよく動く。



「あの、どこに行くのですか?」


沙々は馬車に揺られながら尋ねる。


「市場調査だ」



楽しそうな顔で言う橙を見て子供だな…と思った。


そして、それが私情・・調査にならないといいなと周りの護衛たちは思ったのだった。



「さぁて、楽しい楽しい買い物の時間だ」



語尾に音符マークがつきそうなテンションで話しながら街の大通りを進んでいく。



「あの、こんなに堂々と人前に出ても良いのですか?」


沙々は心配していることを口にした。

一歩後ろにいた護衛は少し得意げに言った。



「大丈夫です。護衛は表に五人、隠れてついてきている者が五人いますので。それに、相手は主上ですから」


橙だから…?

疑問を持ちつつ、そこまで聞くのはどうかと思ったので黙って橙の後をついていく。




それから、しばらく橙は買い物という私情を挟み市場調査を進めていた。


その姿は大国の皇帝のものではなく、一人の子供のようで見ていたとても暖かい気持ちになる。


こんな平和が続くと思っていたのだが、先ほど護衛が大丈夫だと言っている意味がこんな形で分かるとは思わなかった。




そして、その事件は起きたのだった。


ありがとうございました。

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