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帝と平凡な恋  作者: 沢本 桃吏
第三章
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帝と平凡な恋 第四十二話 緊急事態と皇帝の異変 前編

第四十二話です。

しばらく走っていくと村が見えてくる。


その村を見て、橙は驚愕した。


村は荒れていた。

いや…荒れているというよりも乱れていると、いうのが正しいのかもしれない。


久しぶりに全力で走ったので、ふらふらである。



「なんだ、この村は」


物が散乱して、全体的に乱れていた。

この村は昔、交易で儲かっていて村としても安定したはず。


なのに…なんで?


「とりあえず、村長を見に行くか」


一応、皇帝は後宮と、東西南北の地域を統括して治めている。


なので、問題がありそうな村などには目星をつけて管理するのだが、ここはどちらかというと援助を必要としている村を助ける側だったはずだ。


それくらい金銭的にも魔力量も安定していた。



村長の家の前まで来る。



案の定、護衛が一人立っていた。


護衛に見つかると時間がかかるので家の裏にまわった。

「…クリアライクは使わない方が良さそうだ」


村の魔力空間の秩序が余計に崩れる。

今、崩壊しかけている魔力空間でさらに橙ほどの魔術を使えば、村が完全に壊れてしまう。



見つかるかもしれない…がそれよりも村長の様子が気になる。


ここの村長は魔力量拡大円形板を使わず、村の管理ができるはずだ。

それくらい保持魔力があったはずなのに、なぜ魔力災害を起こすほどに魔力量が不安定になっているのだろう?



窓から部屋の中を覗くと、老人というにはまだ若いような男がどんよりとした雰囲気を纏い、座っていた。


「村長、村長」


村長を呼ぶと露骨に驚いたような様子で反応する。


「誰だ?お前は」


「こう、…いや通りすがりの救世主ってとこかな」

皇帝と言って怯えてしまい、まともに話ができなくなっては元も子もない。



「はぁ」

相槌とも吐息とも言えない声を漏らす。


「少し、来てもらえないだろうか」

スッと目を細めて村長を見る。


雰囲気からただの平民でないことが分かったのかすぐに裏口から出てきた。



「それでどうされましたか?」


「なんだ、その態度の変化は?」


「先ほどは申し訳ありませんでした。皇帝さま」


気づいてしまったらしい。

たんなる青年の姿なのに態度が偉そうだったからだろうか?

それとも年の功というやつか。


「気づいたなら、普通に話そう。ここの村の状況が聞きたい」


「御意。とりあえず、中に入られてください」


変化の魔法にかかったままなので、姿が普段と違うのだが、皇帝がここにいると皆にバレても大変なのでこのままでいく。



「なら、お言葉に甘えて」

中に入り、お茶を出される。


「じゃあ、この村の事と村長…お前の話を聞かせてくれ」


「分かりました」

村長は渋い顔で話し始める。



「異変が起きたのは、数ヶ月前のことです…」


朝起きたら、異常に体が重くて何かに操られているようだった。


村の魔力量が不安定だったので調節しようと保持魔力を使おうとすると、保持魔力が空っぽみたいな感覚で調節することができなかった。



異変に気がついた頃にはもう遅く、村はあっという間に廃れてしまった。



金銭面でも裕福であったため、すぐに復興作業に取り掛かろうとした。


だが、その甲斐もなく村の様子は悪化していく一方だった。



何が起きたのか、分からないまま日にちだけが経ってしまった。




「そういうことか…」


「はい、実は私もそろそろ国へ報告しようと思っていたところです」


「それは丁度良かった。それと聞きたいことが…」



その瞬間、部屋の扉が壊れんばかりの勢いで開く。



「村長!村が!」

ただそれだけだったが緊急事態ということはよく伝わってきた。



「村長、私も行っていいか?」


「えぇ、来ていただけると助かります」

広場に行くと人垣ができていた。



「どうした?」

村長が村の者に訊ねる。


「実は…」

村の者は人々の視線の先を指差す。



「なんだこれは」

村長と橙は目を見開いた。


そこには地面にぽっかり穴があいていた。


「試しに」と橙は地面に落ちていた石ころを拾い指で弾いて穴に落とした。


耳を澄ませても石が落ちたような音はせず、そこだけ別空間のようだった。



「少し、そこを退いててくれないか?」

橙は周りにいた人に言う。


周りの人たちは訝しみつつも穴から少し離れたところに避けた。


「それじゃあ、怪我しないように」

穴に向かって橙は手をかざした。


「フルアクア」


手から放たれた水の球は穴の中をに向かって勢いよく放水された。


水の魔術の最大限魔法である。

勢いが強く、穴から溢れて周りにも水がかかる。



「この魔法はおおよその深さまで分かるんだが、困ったな」

橙は全く困った顔をせずに言う。


「どうしたのですか?」


「底なしだよ。この穴は」


「え?」

村長と周りのものはさらに穴から離れる。


底なしということは落ちたらどうなるか分からないからである。


「この穴は今日、突然現れたのか?」


「は、はい。ついさっき」



「なるほどな」

橙は一人で納得しながら穴を覗く。


「まるでこの穴は、魔力を吸っているみたいな感じがするな」


橙は不適な笑みを浮かべて顎を撫でた。

周りは不謹慎だと思いながら橙を眺めた。



「この穴の正体と犯人が分かったかもしれない」


探偵の気持ちになって橙は一つの仮説を立てた。



ありがとうございました。

また、よろしくお願いします。

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