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帝と平凡な恋  作者: 沢本 桃吏
第二章
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帝と平凡な恋 第二十六話 後悔

第二十六話です。

俊朗は周りが騒がしく感じる程度に意識が戻っていた。


だけど、まだ記憶がはっきりしない。


確か、橙が助けに来てくれて…。


「うっ」

そこまで考えたところで腕に激痛が走り目が覚める。



「あぁ!動かないで!」

横を見ると橙が心配そうな顔をしていた。


手には包帯を持っている。



「やっと、目が覚めたんだね」


安心したようではぁっと息を吐く。




「包帯、ありがと」


「いいえー」


包帯をしまってお粥を持って来た。



「はい、食べなさーい」


「自分で食べれるよ。というか、こういうのって侍女がやるものじゃない?」


「俺がやるって言ったの」


橙は強引に粥を口に入れる。


「うっま」


「俺の手作り」


「嘘?」


「嘘」


「だろうな」


美味しそうに粥を食んでいく俊朗を子犬でも愛でるような目線で見つめる。



「俊朗、お前は処刑されるかもしれない」


言いたくなかったが、言うなら今だと思った。



「あぁ、だろうな」


「だけど、俺の権力でもみ消すこともできる」


「あぁ」


そっけなく答えるが本当は不安でたまらないはずだ。もちろん、そんな分かりやすく隠していれば気がつく。



「どちらがいい?生きるか、死ぬか」


「生きたい。生きたいに決まってるだろ?」


「了解」


橙は生殺与奪の権利を持っていると思う。

その人が気に入らずに簡単に処刑にかけることもできる。


それと反対に救いたい人を自分の権力で助けることができる。



この権利は橙みたいに人思いな人が持つべきと思う。


だけど、優しすぎて真の悪人を野放しにして暗殺されるなら話は別であるが…。


橙なら大丈夫だ。

正しく使える人だ。




「それと、俊朗。もう安心して良いからな」



「あ、あぁ」

涙が出てくる。


橙が助けに来てくれるまで、処刑の不安に苛まれていた。


自分で許可してしまったので、自業自得だけどそれでも…。




「しばらくこの部屋で休むと良い。俺は仕事に戻る」


パタンと戸を閉めた。







「本当にもみ消すのですね?」

先ほどから龍布に何回も同じ質問をされる。


「あぁ。アイツは悪くない。抑えきれなかっただけだ。そこに嘘はない」



「それでは、今後はどうしますか?」


「今後…さすがにこれだけの騒動に関わっているからな。もう一度、東国の主はやらせれないな」


うーん、と宙に浮かびながら考える。



「あの…その浮かびながら考える癖どうにかなりません?」


龍布はついこの間のことを思い出す。


大切な話し合いの際に橙は無意識のうちに浮かんでいたので龍布が必死に抑えていたのだ。




「気づいたら浮かんでるんだもん。仕方ないじゃん」


「開き直らないで、努力してください」


「はーい、はい…それで俊朗のことだが、アイツは俺の部下にする」



楽しそうな顔をする。

俊朗は結構優秀なので、仕事が楽になりそうだと龍布は思う。



「何かアイツが危険なことをするようなことがあれば、俺がすぐに抑えられるからな。周りも納得するはずだ」


「分かりました」



「ふぅ、仕事片付けるかぁ」


橙はあくびを噛み殺す。



「お疲れですね」


「誰のせいかなぁ?」


「こちらも頑張ります」


「そうしてくれ」







翌日…



また、橙は沙々を部屋に呼び出していた。



「なんでしょうか?」


「そこに座れ」

寝台の上を指差す。



言われるがままに沙々は座った。



深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「沙々、この前の続きなんだけど…」

そこで言葉を区切る。




「沙々のことが好きだ」


「…はい」



言ってしまっては終わってしまう。

この楽しい関係が…。

でも、もう自分の気持ちを抑えられそうにない。




「沙々は好き?俺のこと」


「…」


沙々は答えようとしない。


認めてはダメだと分かっているのだろう。


だけど…。




「ねぇ、沙々」


沙々の耳元で囁く。

その甘い声に沙々はピクリと反応する。



「妃になる気はないか?」


この前、妃は自分も沙々も面倒くさそうだし、なんか嫌だということで妃にしたくないと言っていたが、一応聞いてみることにした。


「…」



予想はしていたが、実際に沙々は自分が妃になれるのか分からなかった。


「いきなりすぎて悪い。けど、やっぱり」


橙は沙々の頬を撫でる。



「好き」


沙々を寝台の上で押し倒した。



「あ、あの…」


沙々はさすがにこれ以上先には進めさせられないと思い、橙の体を起こす。




「少し考えさせてください。明日まで、で良いので」



「…分かった」



渋々と言った様子で橙は頷いた。



「ありがとうございます。橙さま」


それだけ言うと去って行った。







「あぁぁぁぁぁぁっっ!」


橙は後悔で飽和した声を出す。



「はいはい、どうしたの?橙」


香蘭が優しく慰めてくれる。



「今日さ…沙々に気持ち伝えたんだ」


「うん」


やっとか…と香蘭は思った。



「そしたら、フラれた」



「ふっ、あはははっ。何それ?侍女が皇帝をフルって?面白い、詳しく聞かせて!」


「笑うな!と言うかフラれたって言うか押し倒したら考えさせてくれって…」


ぶつぶつと言い訳するような口調で話す。



「あぁ、ダメだよ。そりゃ」


「何が?」


分かってないのかと宦官の香蘭が呆れる。



「相手は侍女でしょ?妃じゃあるまいし、そんな告白しながら押し倒すなんて…ありえない」



「そんなもんか?」


「少なくとも俺はそれで昔、失敗した」



「ドンマイ」



「ドンマイじゃねぇ!まぁ、あの子は橙に脈アリだと思うよ?本当に」


真面目な口調で語る。



「俺の言うことを信じなさい」


「それ、説得力なく感じる」


「うるさい!昔はモテてたんだ。これでも…」


涙目で話す香蘭がなんだか惨めに感じてくる。




「まぁ、明日を待て。大丈夫だから」



香蘭が言うようにただ明日を待つことにした橙だった。


ありがとうございました。

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