帝と平凡な恋 第二話 女官選抜会
第二話です。
女官選抜会とは…応募された中から、いろんな課題を与え、総合的に優秀な者を後宮の女官にするというものである。
「お集まりいただきありがとうございます。帝の橙だ。よろしく」橙は壇上に立ちながら声を張る。
今の橙の格好は純白の外套を身に纏い、皇族の紋が入った飾りで留めていた。
「皆さんには、今から女官選抜会を受けてもらいます。注意事項としては、、、」司会役は必要なことを話していく。
そして、その間も舞台の端にいた橙の容姿に見惚れるものばかりである。
橙は、かなり整った顔をしていた。
綺麗な顔で、優しい表情に皆、心を奪われる。
「それでは、皆さん頑張ってください」橙は誰もがときめく笑みを浮かべた。
黄色い声が響き渡る。
審査員は、橙と高官の二人。
教養、素行、容姿、そして…
言い忘れていましたが、ここは魔術が使われる世界。
皆、魔法使いということになるのです。
「初めは、魔術披露です。皆さんの得意魔術を披露してください。五班に分けて審査します皆さん自由に披露してくださいね」司会役が軽い口調で言う。
「始め!」
その一言と共に一斉に動き始めた。
水の魔法に、火の魔法、風の魔法と披露していく。
すごいものもあるが大したことないと二人の高官たちが鼻で笑っていた。
橙は全体的に見ながら評価していく。その中で動いていない人がいた。
不思議に思い、じっと見ているとその人と目が合った。
何の感情も含んでいない目と。
目が合ったかと思うと彼女は目を背けて手を胸の前で合わせる。
その瞬間、淡い光が彼女を包んだ。
そして水の、いや火の、風の…どの魔術とも言い難い魔法を披露する。
彼女は水に包まれて、火を操っていた。風に乗せて。
幻想的な景色に皆、手を止めて見入ってしまう。
そんな魅力があった。だが、彼女はふらりと倒れてしまう。
橙は気づいたら立ち上がり、近づいていた。護衛たちもついてくる。
「医務室へ運ぶ。選抜会は休憩にする。他、数人の女官も保持魔力をかなり使い果たしたみたいだからな」
保持魔力。
名前通りに魔力を保持しておく器官に日々、魔力を貯めておく必要がある。
それには、個人差があり上級になる程、保持できる魔力の量が増える。
そして、その魔力を使い果たしてしまうと身体的な影響が出てしまう。
「レッジェーロ」橙は体重を軽くする呪文を唱える。
魔力を使い果たしている女官をまとめて武官たちに運ばせる。
「今回の女官はすごい奴がいそうだな」思わずニヤけてしまう橙。
その後、選抜会は再開されて後宮女官になる者たちが決まった。
後宮の新体制が決まった。
これからどうなることやら、あのすごい魔術を披露してくれた彼女は橙の侍女になった。
ありがとうございました。
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