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帝と平凡な恋  作者: 沢本 桃吏
第一章
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帝と平凡な恋 第十四話 怪しげな人

第十四話です。

「さぁて、話を聞いてもらいましょうか」



凛乱は怪しい笑みを浮かべながら言った。



『一体なんの話をするつもりなんだ?』


橙はとっさにテレパシア(考えていることを伝える魔法)を使い、凛乱に話しかける。



『うわぁ、まさかこの寝起きドッキリの状態でテレパシアを使うとはぁ。結構難易度高いんやけどなぁ。さすがやわ』


凛乱もテレパシアを使って話してくる。


『せやけど、護衛に連絡されては困るから護衛に伝わる方はシャットアウトしとくなぁ』


『安心しろ、最初から護衛を呼ぶ気はねぇよ』


『なんや、つまらん』


凛乱は橙の上に乗っていたが、降りて寝台の横に座る。



『さて、なんの話をするんだ?』


橙は体を起こして、前髪をかきあげる。



『朱江さまは、こう言うててん。橙のところには災いが降りかかる。それを防げって。それでウチは橙さまのところに来たっちゅーわけや』


『なるほど…その災いとやらから守るためにお前は来たのか』


『そうです』


橙は俯いた。

その顔には怒っていた。


『兄貴に舐められてんのか。俺は』


いやだ。

あんな兄に心配とかされるのか。


兄は自分の心配をすればいいのにな。



『怒らんといてあげて。朱江さまはアンタの事思って、ウチをここにやったんや』


橙の頭を撫でる。


凛乱の手を振り払った。



『怒る怒らないの次元じゃねぇよ。あのバカが』


朱江が何を知っているのかは分からない。


というか分かりたくもないが、有力な情報を握っているのは確かだ。



朱江は節操がなくて能天気だが、誤った情報で身内を貶める様なやつではないことは知っている。



『何が起こるのか、知ってんのか?』


橙が訊ねると凛乱は首を横に振る。


『そうか。話はそれだけか?早く喋らせてほしいんだけど』


自分の口を指差しながら言う。



「そうやな。そろそろ起きんと護衛さんたちが突入してきてしまうなぁ」



指をパチンッと鳴らして魔術を解除する。


ようやく、喋れる様になった。



「ほな、さいなら」


ひらひらと手を振ってパッと消えてしまった。



「朝っぱらから本当に何なんだよ?」


額にじわりと滲む汗を拭う。


動揺を隠そうとして汗が出てしまう。




コンコンとドアを叩く音がする。


「入っていいぞ」


「失礼致します」


護衛が部屋に入ってくる。





「起きておられたのですね。なかなか出てこられないので」


「少し、体調が悪いんだ。今日は休ませてくれ」


体調が悪いフリをする。


「かしこまりました。何かあればお呼びください」


「あぁ」




護衛が部屋を退出した後、橙は寝間着を脱いだ。



箪笥たんすに入っている服を着て、伸びてきた髪を軽く結ぶ。



凛乱の話を聞いてやるべき事を決めた。



「よし」






「これでもない、あれでもない。どこだ?」


書庫で“とある”ものを探していた。



「何か、お探しですか?」


ぬぼぅっと蝋燭ろうそくを片手にやってきたのは年老いた女官だった。


「う、うわぁっっ!?」


橙は驚いて腰を抜かす。


「おい、風麗フウレイ。驚かさないでくれ」



「申し訳ございません。つい、悪戯をしてしまいました」


ぺこりと頭を下げた。



「ついってお前なぁ。一瞬、幽霊でも出たのかと…」




「失礼ですね。私はまだピンピンしておりますよ」


ぶんぶんと腕を振る。


「そのようだな。ところで何でここに?」


橙は立ち上がって服についた埃をはらう。



「廊下を通ったところで物音がしたもので気になって来てみたのですよ」



この書庫があるところは本邸から少し離れていて、人が基本的にいない。


なのに、なぜ?


まぁ、人が来ることもあるか…。


勝手に結論付ける。


「久しぶりだな。元気にしてたか?」


風麗は元々、橙の直属の侍女として働いていたが今は他の配置を任せている。


「えぇ、元気ですよ。橙さまも元気そうですね」



「あぁ、お前の綺麗な顔を見て元気が出たよ」


「お世辞にしても無理がありますよ。こんなシワシワおばあちゃんに」


風麗も年老いてるとはいえ顔立ちは綺麗な方だ。




「あははっ。そんなことはない」


まぁ、お世辞丸出しではあるけど…。



橙は書庫にあった椅子に座る。




「それで、こんな埃臭いところにいつまでいるんだ?」


橙はにっこりと笑顔を浮かべた。




「すぐ出て行きますよ。お邪魔しました」



風麗は橙が早く出て行ってほしいということに気付いたらしい。



「またな」


「えぇ、また」




何も聞かない風麗に感謝して“とある”ものを探す。



「あった」



分厚い、異国の文字で書かれた本を見る。




「これだけ…埃をかぶっていない。つまり、つい最近誰かが読んだということか」


本をぎゅっと抱える。




「なんで…」


独白が零れた。







「この卜占費、高くないか?」


書類の一部を指差しながら橙は言う。




「そうですね。けど、今年は災難の年と言われているらしく、たくさん占いを行わないといけないらしいです」


龍布はそう答えた。


「そうなのか?俺はよく分からないな」


「とりあえず、その費用は妥当かと思います」


それにしても高い気がするな。


気になりつつ、龍布の言っていることを信じてみる。



「さて、そろそろ時間だな」



上着を羽織り、前髪をかきあげる。




「出かけるぞ。東国に」



ありがとうございました。

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