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第八話 迷宮殲滅逆走RTA


 ヨトゥン・エリート乾坤一擲の一撃を単体火力特化型の必殺技(コンボ)で原形を留めないレベルで押し潰した大和。

 剣を構えたまま残心。そのまま数秒が過ぎ去るとゆっくりと撮影ドローン(ライバーズ)の方へ振り向き――、


「いやー、ヨトゥン・エリートさんは強敵でしたね!」


:ニコニコ笑顔。今の見た後だとなんか胡散臭いと思ってしまうのは俺だけ?

:この変わり身の早さにはビビる。

:正直ドン引きしたわ。

:修羅か。修羅だったわ。


「強敵でしたネ! 仕方ないですネ!」


:アッハイ。

:無敵の笑顔で圧をかけてきやがる……!

:こいつ、無理やりなかったことにする気だ!?


「いや、ガチるとつい()()なっちゃうんですよね。で、大体後でドン引かれるまでがセットでして」


:困った顔で頭搔いてる。

:悩んでるのはマジっぽい。

:こういう大和君を見るのなんか新鮮かも。

:いつも大体笑顔だもんな。悩みなさそう。


「いや、悩みはありますからね? パーティメンバーの話は100%本気なんで」


:真顔で念押し。

:見た目ソロ活から卒業したい気持ちは分かる。


「まあいいです。ともあれAランク迷宮の間引き依頼も達成。ただちょっと時間は余ってるんですよね」


:このままポータルで帰る?

:丁度25階層だしな。

:この5階層刻みの帰還装置、誰が設置したんだろうな?

:帰還オンリーなのが難点だが正直ありがたい。神機能。

:クソ難易度のくせに妙なところでユーザーフレンドリーなダンジョン君。別に感謝はしないし大嫌いだよ。


「僕も知らないですねー(棒)。まあ使えるものはどんどん使いましょう」


:なんか胡散臭い。

:知ってそう。

:じゃ、今日はこれで配信終了か。


「いえ、どうせ時間もあるしもう少し綺麗に掃除していきましょう。入口から25階層まで一直線で雑魚は放置してましたし」


:前半は気持ちいいくらいの勢いだったけど確かに取りこぼしは多そう。

:別にいい気もするけどなぁ。

:働きすぎじゃない? 大丈夫?


「そうだ! どうせなら入口までモンスター殲滅逆走RTAでもやりますか。楽しそうでしょ!?」


:訂正。こいつがやりたいだけだわこれ。

:心配して損した。

:モンスター殲滅逆走RTAwww

:Aランク迷宮で遊び倒すつもりとかマジ?

:RTAも何もお前以外誰もやらねえよwww


「迷宮攻略なんて楽しんだ者勝ちですよ?」


:こいつは理性をどこかに置いてきちまった顔だぜぇ。

:マジでやる気?

:一応確認だが事故らない? 万が一他の冒険者がいたらさ。

:いや、そこらへんはみそPの探査とナビゲートならどうとでもなると思う。


「正気でAランク迷宮攻略なんてやれますか! という訳でカモン、十束(トツカ)!」


 †《魔剣契約:十束剣(トツカノツルギ)》†《建速嵐(タケハヤノアラシ)》†


:剣帯から勝手に剣が飛び出して……浮かんだ?

:で、そこに乗った!

:風が柄のあたりで渦巻いてる。ジェット噴射?

:めちゃくちゃ細い空飛ぶサーフボードみたい。

:十束剣、神話に伝わる古代刀か。刀身と柄が一体型の両刃直剣。一度でいいから手に取ってみたいもんだ。


「色々雑になるから普段はあまりやらないんですけどね。でもまあお遊びのRTAならいいでしょう」


:ごめん待って。まさかとは思うけど。

:まさか風で浮かせた剣に乗って《建速嵐》でジェット噴射してかっ飛ばすつもりか?

:で、途中のモンスターは風で轢き潰しながら入口まで逆走RTA?


その通りでございます(イグザクトリィ)!」


:いい考えでしょと言わんばかりの得意げな顔。やっぱこいつ正気じゃねえ。

:十束剣が泣いてるぞ……。

:せめて剣として使ってやれよ。神話の名剣だぞ。


「それじゃかっ飛ばしますよー!」


:聞いちゃいねえ。

:爆音轟かせてあっと言う間に撮影用ドローンの視界から消えた……。背中も見えねぇ。

:さりげなくヤッくんが先行してナビゲートしてる。苦労人だわ。

:どう考えても速すぎてドローンが間に合わないんだよなぁ。

:うちの弟が脳みそカラッポでゴメンね?@みそP


 ◆


:あっという間に15階層。ここまで30分もかかってねぇ。

:後で詫びプリンを要求する@みそP

:これは残念でもなく当然。

:反省して?


「アッハッハッハ。ついうっかり」


:かっ飛ばしながら笑ってんじゃないよ。

:配信者としてマイナス100点。なおトータル1億点はあるから困る。

:ドローンは無理でも大和君視点のカメラはあるからまあ配信は出来るが。

:その制帽ただの飾りじゃなかったんですね。


「思いついたらテンションが上がって、こう……」


:思い付きで雑に轢き潰されるモンスター可哀そう。

:こんな緊張感のない索敵即殲滅サーチアンドデストロイ初めて見たよ。

:あ、また一匹吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

:Aランク迷宮のモンスターか。これが……?


「今のところ順調なペースですね。これは世界記録。間違いない」


:そもそもお前しか記録に挑む奴いねえよ。

:多分今後も現れないと思う。

:だからある意味世界記録も間違ってはいない。


「いやいや意外とすぐに第二第三のレコードホルダーが――うん? ()()()()?」


:うおっ、アラームうるせっ。

:一瞬ビビった。

:ちょい待ち、救難信号?

:ここAランク迷宮だぞ。

:誤検知じゃね?


「みそP?」

:確認した。1階層から1名分で間違いない。救難要請を受諾する@みそP

「了解、本気で飛ばします。配信を中断。ひと段落したらまた連絡するので今日はここまでで」


:え、ここで終わり?

:救難ミッションの配信は救出対象の肖像権がめんどい。気にしない奴もいるけど。

:大和君はそこらへん気を遣う方だから。


「それじゃおつダンでしたー。配信できれば今晩にでも再開しますのでー」


:了解、おつダンー。

:おつダンー。

:おつダンー。

:おつダンー。

:頼むぜ、ヒーロー。


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