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殺し屋と葬儀屋  作者: トムボーイ
5/9

ブラックリスト


葬儀屋は自分のガラケーに届いたメールを見ている

 差出人は紅詩

 そこにはとある住所が書かれており、レッドウィングというお店でお待ちしています。とだけ書かれていた。

 レッドウィングは裏路地の奥の奥、更に奥に向かった先にある地下にある外観からも分かる非常な怪しい雰囲気が漂う店


「……なんでアイツこんな所に」


 と独り言を言いながらその重々しい扉を開くすると、外の閑散とした雰囲気とは打って変わり中では大量の人で賑わっていた。

 そして葬儀屋はその人々が普通の人間ではなく殆どが殺しを生業にしている者達なのだと察知した。

 

「いらっしゃいませ~」


 と言ってエプロンを着た紅詩が葬儀屋に近付いて来た。

 そんな紅詩を視て葬儀屋は眼を丸くする


「な、なにやってんだお前?」

「あ、……えっと、バイトです」


 と困惑気味に答える紅詩と暫く見つめ合う葬儀屋


「バイトってなぁ……お前この状況でバイトするか? なんつーか図太いというかイカれてるというか……」

「ご、ごめんなさい、今日来るはずだった子が来れなくなってしまったみたいで店長にどうしてもと言われて……」

「罠だとは考えなかったのか?」

「えぇ、店長はそんな人じゃありませんから!」


 と自信満々に答える紅詩を視て葬儀屋はとうとう彼女に呆れる


「あっそうかい、まぁいいやそれで? あの赤ん坊は?」

「お店の裏で預かって貰ってます」

「ふーん……死んでなきゃいいけどな」

「だ、だから店長は――」

「そんな人じゃないってか? 分かった分かった。分かったよ」

「やぁ、葬儀屋久々だね」

「あ、店長!」


 紅詩と葬儀屋の前にスーツを着た老婆が現れる


「店長は葬儀屋さんと知り合いだったのですか?」

「あぁそうさ」


 と店長は言うが葬儀屋は浮かぬ顔


「……オレは知らないぜ、アンタ」

「なんだよ、ノリが悪いね、葬儀屋の知り合いだって言った方が泊がつくじゃないか、そこは黙って頷いとけばいいんだよ」

「なるほどね、変な奴だなアンタも」


 葬儀屋はその店長に誘われるがままにカウンター席まで案内された。


「で? 何にする?」

「……水、タダのな」

「はいぃ?」


 葬儀屋の横暴な注文に店長は睨みを効かす。


「日本じゃ水はタダだろ? 言って置くがミネラルウォーターとか出して金取ろうなんてケチなことすんなよ、それで前に酷い目にあった事があるからな」

「……ここはお店だよ? アンタだって稼いでるんだろ? ケチケチしてんじゃないよ」

「クククッ店ねぇ、タダの店じゃねぇだろ、殺し屋専用の店だ」

「失敬な、偶に普通の客が来ることもあるよ」


 と言いながら店長は水の入ったピカピカに磨かれたコップを葬儀屋の前に差し出す。


「毒でも入ってるんじゃないだろうな?」

「試してみな」

「いやなこった。それよりココはどういった店なんだ? 殺し屋ばっか集めて仲良しこよしとは異常だぜ」

「”安全”な料理と”安全”な酒の提供と仕事の斡旋、主にこの二つをやってる」


 葬儀屋は顔を顰める


「仕事の斡旋? 殺し屋が仕事探しに中間業者を挟むのか? おいおい冗談だろ、殺し屋になってまで中抜きされる事を選ぶ馬鹿がこんなにいるのか?」


 と言って葬儀屋は賑わっている店内を見渡す。


「全員アンタみたいに強い訳じゃない、最近じゃ仕事をさせるだけさせて報酬を支払わず始末されちまう奴も多い、だが内を通せばそんなこともなくなる、ここに居る連中は”安全”に金を払っているのさ」

「安全が恋しきゃこんな世界に来なきゃ良かったのにな、クククッ」

「ま、全員が全員この世界に居たくて居たい訳じゃないさ」

「そりゃごもっともだな、それとアンタの後ろにあるそりゃなんだ?」


 葬儀屋は店長の背後にある黒板を指さした。


「これかい? ランキング、殺し屋のね」

「……ランキング……まるで見世物だな」

「こっちが国内のでこっちが全世界のランキング、累計の報酬額で格付けされてる」

「累計の報酬額を記録してる連中がいるのか?」

「あぁBKの連中が情報を管理してる」

「BK? マフィアの? フリーランスの殺し屋も情報で縛り付けるつもりか?」

「さてね」


 葬儀屋の前に熱々のオムライスが置かれた。

 置いたのは紅詩


「あ、あの私が作りました。良かったら食べて下さい」

「いらねぇ」

「……」

「くってやれよ」

「腹が空いてないもんでね、それに不味そうだ。異臭もするしな」

「ったく……まぁそれぐらいの警戒心でもなきゃ伝説にはなれないってことかね」


 しょぼくれた紅詩がオムライスを下げる


「……前から気になっていたのですけどなぜ葬儀屋さんはランキングに入っていないのですか?」

「ブラックリストに入ってるからね」

「ブラックリスト……? 初めて聞きました」

「ブラックリストに入れられた者に仕事の依頼をする事を禁ずる裏社会にある唯一のルールさ」

「裏で仲良くそんな協定なんて組みやがって、情けないったらありゃしない」

「ブラック”リスト”と言ってもそこに名前が載ってるのは一人しか居ないがね」

「名前はないんだがな」

「す、すごい……でもじゃあ葬儀屋さんは今までどうやって仕事を貰っていたのですか?」

「裏の人間が依頼して来なくても表の人間が依頼してくる、それに今回は例外だとか言って何かと理由をつけて裏の連中が依頼してくる事もあったな、だからそのブラックリストとやらはあまり効果はなった」


 ほうほうと紅詩が食い入る様に葬儀屋の話しを聞いている


「クククッだから安心しな、どれだけ裏で恐れられても仕事はちゃんと向こうから羽を生やして律儀にやってくる、それにブラックリストとはオレにお似合いだな、髪の毛も眼も服も黒、これで肌も黒だったら完璧だったのにな、アンタみたいに」


 と言って葬儀屋は隣に座っていた黒人の大男に絡む

 葬儀屋に絡まれた大男はプルプルと震え出す。


「お? 怒った? 怒った? クククッまぁまぁ落ち着けよ、いやそれはクロンボの遺伝子的に無理か」


 と挑発をしながら大男の右ストレートパンチを葬儀屋が待っていると大男は大泣きし始めた。


「ひ、酷いじゃないか! な、なんでそんなことをいうんだぁ!!」


 大男はその場でうなだれてしまう、予想外の展開に葬儀屋は困惑する


「アンタがどうにかしなよ、私は知らないからね」

「お、おい、泣くなよ、殺し屋がこんな安っぽい挑発で泣いてどうすんだよ……わかったわかったから奢るよ奢るから泣くのはやめろ、勘弁してくれよ……」



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