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第十六話 バイト中の1コマ

「おい、弘樹。このダンボール倉庫に運んどいてくれ。」

「あいよ。」


 この前の大学での一件で、ほとぼりが冷めるまで大学には近づかないようにしていた俺は、バイトに来ていた。

 今が夏休みで本当に助かったと思う。

 大学の夏休みは、中学校や高校と違って長いのだ。

 他の大学が、どのくらい長いかは分からないが、ウチの大学は9月の下旬まで休みである。

 まあ、その頃には、あのカラスも諦めるだろう。

 いや〜、夏休み万歳!


「そういえば、弘樹。この前の佐々木さんとはどうなったんだ?」

「佐々木さん? 何が?」

「何が?じゃないだろう。あんな美人な子は、なかなかいないだろう。」

「またその話か。何度も言ってるけど、佐々木さんとは何もないよ。」


 叔父さんは、俺がバイトに来るたびに同じような話を繰り返す。

 そのたびに、俺はいちいち否定しないといけないんだが、毎回毎回やってると、いい加減面倒になってくる。


 

 ちなみに、俺のバイトというのは、簡単に言えば叔父さんたちのお手伝いである。

 動物病院を経営している叔父さんは、俺の親の代わりに、俺の保護者役というか監視役というか、そんな感じで俺の面倒を見てくれている。

 そして俺は、叔父さんたちのお手伝いをすることによって、バイト代という名のお小遣いを貰っている。


 と、まあ、手伝いと言っても、何も資格もない俺が、ここで出来ることなどほとんどない。

 やっていることと言えば、届いた荷物を運んだり、入院している動物のエサを与えたり、動物の話し相手になったりと、そんな感じである。

 

 ああ、そうそう。叔父さんたちは、俺が動物と話せることを知っているんだ。

 子供の頃、そこら辺にいる野良犬と話しているところを、たまたま通りがかった叔父さんに見られたのだ。

 その時の叔父さんの反応が「なんだ弘樹、動物と話せるのか。羨ましいなぁ。」だった。

 当時、気味悪い目で見られていた俺は、そんな叔父さんの軽い反応にポカーンとしてしまったのを覚えている。


「しかし、もったいないなあ。聞けば、彼女、今は彼氏がいないそうじゃないか。俺も、あと一回り若ければなあ。アタックするんだが。」


 ……こんなこと言ってるが、叔父さんは見事な恐妻家で、自分の奥さんには全く逆らえない。


「由美さんにチクるよ。」

「…………そういえば弘樹、お小遣いに困ってないか?」


 逃げたな。


 今のように俺が一言、呪文を唱えれば、叔父さんは借りてきた猫のようにおとなしくなるのだ。

 ちなみに、由美さんというのは、叔父さんの奥さんで、つまりは俺の叔母さんにあたる人だ。

 この人は、性格的にサバサバした人で、俺の能力を知ったときも「あら、便利そうね。」と、信じているのかいないのか分からないが、とにかくあっさりしていた。


 ただ、怒ると怖い。


 昔、由美さんのことを『叔母さん』と呼んだら、俺のほっぺを思いっきりつねり上げながら、「私のことは由美さんと呼びなさい」と目を吊り上げ、言ってきたのはトラウマものである。

 あの後、頬から軽く血が流れていたのは良い思い出だ。


「おい、弘樹。そろそろ時間じゃないのか?」

「え? あっ、本当だ。んじゃ、行ってきます。」

「はいよ。それと弘樹、チクるなよ?」

「………ふっ。」

「おい! 何だよ、その意味深な笑いは!」

「行ってきまーす。」


 後ろで、なんか喚いている叔父さんは置いといて、俺はもう1つのバイトをするために由美さんの所へ向かうのだった。







************







「由美さ〜ん。こんにちは〜。」


 さっきまでバイトをしていた動物病院を出て徒歩1分。

 今度は、由美さんが経営しているペットホテルへと着いた俺は、いつもの様に入口から入り、由美さんに挨拶をした。


「おっ、来たわね。猛獣使い君。」

「猛獣使いって……。」


 由美さんが経営するこのペットホテルは、隣が動物病院であることや、由美さん自身がトリマーの資格を持っていて、そういったサービスもあることから、なかなか人気らしい。

 さらに、この夏の行楽シーズンと相まって、旅行に行く家族がペットを預ける場所として大盛況だった。


「今日は、特に荷物は来てないから、動物の世話だけで良いわよ。」

「お、ラッキー。」


 ちなみに、ここでの俺の仕事は、主に預けられたペットたちの世話である。

 やってることは叔父さんのところとあまり変わらないのだが、ただ、1つ違うところは、病院にいる動物たちよりも、ここにいる動物たちの方が、明らかに元気でやんちゃなところだ。


 つまり、どういうことかと言うと……


「メシ出せ! メシー!」

「おなかへったーー!」

「ゴハンマダー?」

「散歩! 散歩!」

「おしっこ……もれ…」

etc


 ああ、やかましいことこの上ない…。

 しかも先程も言った通り、行楽シーズン真っ只中ということもあり、その騒々しさはいつもと比べものにならないのだ。


「ちぇっ、いいよなぁ、ご主人様たちは。俺たちを置いて海水浴へ行っちゃうんだもんなぁ。」

「お前のところは、すぐ帰ってくるから良いじゃねえか。ウチのところなんか、おフランス行くから良い子で待っててねぇ、とか言って、もう2週間は帰ってきてないよ。」

「まあまあ、お二人とも良いじゃないですか。ここはご飯も美味しいし、マッサージも気持ち良いですよ。」

「そうそう、私らペットにとっちゃ、ここは天国さね。」

「おしっこ……でちゃ……」


 ちなみに預けられる動物は、犬や猫が多い。

 いま、ご主人様についてギャーギャー言ってたのも最近預けられてきたばかりで、雑種だったりいろいろだった。

 たまに、ヘビやトカゲの仲間といったハ虫類なども預けられるときもあるが、奴らは、ほとんど動かないし、こんなに騒いだりしない。


「たしかにご飯は美味いよなぁ。」

「そうそう、つい食べ過ぎちゃうんだよねぇ。」

「うんうん。でもカロリーとか以外と低いらしいですよ。」

「まあ、私は食べられれば何でも良いさね。」

「…………ふぅ。」


 今時のペットは、カロリーとか気にしてんのか?


 最後に聞こえてきた声も気になるが、とりあえず、このペットホテルには不満は無いようだと思いながら、動物たちにエサをやったり、何か欲しいものはあるか聞いてまわりながら世話をしていく俺。

 今日は、これで終わりだ~と思いながらやっていくと、珍しく知っている犬に出会った。


「あれ? ボブじゃん。」

「あっ、ご主人様は渡さないです!」


 久しぶりに会って最初の言葉がそれかよ。


 ボブの言葉に苦笑しながらも、ここでバイトしていて初めて知り合いに、といっても犬だけど、出会って、何かこそばゆい感じがした。


「身体は、もう大丈夫なのか?」

「はいです。もうすっかり良くなったです。」

「そうかそうか。それは良かったなあ。」


 世話をする動物が、ボブで最後ということもあって、ちょっと世間話をすることにした。

 犬と世間話をするなんて、周りから見たら、なんか人生に疲れた人が動物に愚痴ってる光景に見えるんだろうな。

 まあ、そんなことは気にしないとして、最近あったこととかをいろいろ話していたときだ。

 ふと、気になったことがあったので、それをボブに聞いてみた。


「そういえば、ボブがここにいるってことは、ご主人様はどこかにお出掛けか?」

「はいです。なにやら二泊三日で合宿に行くって言ってましたです。」

「へぇー、合宿ねえ。」


 佐々木さんてウチのサークルの他にどこか入ってるのかな?

 まあ、サークルの掛け持ちなんてのは、別に珍しくもないからなぁ。


「そういえば」


 どこのサークルだろうなぁと考えを巡らしていたら、ボブが何か思い出したように切り出してきた。


「ご主人様は、高井さんは来るのかな~っと言っていたです。」

「へ? 俺が? なんで?」

「そんなの僕に聞かれても分からないです。」


 はて? どういうことだろうか?


「あっ!」


 そういえば同じサークルだったと思い出したが、しかし、明日から合宿があるなど知らないし、そんな連絡もない。


「はぁ…。まあいいや。それは後で確認するとして、どうだボブ? ご主人様と離れて寂しいだろう?」

「べっ別に寂しくなんかないです! ボクは一匹のオスとして、ご主人様の留守をしっかり預かるのです!」


 留守を預かるって、いま君は、ホテルにいるわけだが…。

 それと、ボブ。尻尾が寂しいと言ってるぞ。


「くっくっ。まあ頑張れよ!」

「あっ、信じてないですね?」





 その後は、ボブと少し話してから本日のバイトを終え、日当という名のおこづかいを由美さんから貰い、家路に着く俺だったのだ。




 ああ、そうそう。合宿のことは、吉田に確認したところ「あれ? 言ってなかったっけー?」と、ふざけたことを言ってきたので、「後で、一発殴るから覚悟しておけよ」とメールしておいた。



 九月の初めから、だらだらと書いていたので、季節感もめちゃくちゃで、内容もまとまってない様な話になってしまいました。


 もっと軽い感じで書きたいです……。

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