部活の門 閑話の雑談
さてさて、この前。ダンタリアンさんとサタさんと文芸部さんとお昼ご飯に行きました。サタさんが大きな車ハマーという車種でコストコに連れて行ってくれましたよぅ^^ そこで大きなピザやジャンクな物を頼まれていたのですが、ダンタリアンさんとサタさんはそういう物ばかりお食べになるので大きな子供みたいですね!
「お前ら遅ぇんだよっ!」
妬みの門、三番目の門番にして第二の面接会場にいたのは女子高生。制服にパーカーを羽織った少女が行儀悪くゲーミングチェアに腰をかけていた。
「まさか君とここで遭えるとは思わなかったよ。明けましておめでとう茜君」
「理穂子さん、明けましておめでとうございます!」
先ほどまで随分疲れていたクリスが次の門番に会うやいなや嬉しそうに人懐っこい笑みを浮かべる。そしてセシャトもまた。
それに顔を紅潮させながら否定する。
「私は茜ヶ崎でも理穂子でもねぇ! 青螺だ! ん? なんだよその待ってました! みたいな顔しやがって。くっそっ! 人が折角冬休みに里帰りしようとしたところ、捕まえやがってあのピンク髪の頭イカれ女。何がイケメンばっかりの祈りの門に連れて行ってやるだ! 馬鹿ばっかりで、それも女ばっかりじゃねーか! あぁ! 思い出しただけでイラついてきた」
首にかけたヘッドフォンを耳に当てると、その辺にある物に八つ当たりする。彼女は自らを青螺と名乗る。彼女が言うのでそうなんだろう。
「とりあえず履歴書を置いて、部活でもしようか? この部活の門でさ」
クリスにそう言われて、茜もとい青螺は嫌々と言った感じで履歴書を受け取り、これまた適当にハンコを押してから、悪ガキみたいな表情を見せて言う。
「いいぜ! じゃあさここで語られてるある民族の儀式って何さ? クリス」
「そうだねぇ、普通に考えればイオマンテかな? 実は僕も陽介氏と同じで民俗学大好きなんだ。きっと祈りの門に遊びに行ければ皆と仲良くなれる気がするよ……この作者は僕と同じで片足っつこんでるから、イオマンテなんて可愛い方じゃなくてタラニスの儀式あたりを選んでるかもね」
茜もとい青螺はマジかよと呆れる。実際、恐らくはイオマンテの事を語っている部分で英国の悪しき儀式について語るクリスと茜。
セシャトは全くなんの事か分からずに珍しく吼える。
「なんですかそれ! 教えてくださいよぅ!」
にっこり笑ったクリスはセシャトの髪をかき上げ耳元で呟く。それを聞いてセシャトは少し引いてしまう。
「むむむむ! それは、なろうや、他投稿サイトでは表現できないものですねぇ……タラニスさんは豊穣の神様ですけど、そんな感じだったんですか……」
セシャトがそう言って色んな意味でブルっている時に茜こと青螺とクリスは実に仲睦まじく楽しそうに作品を語る。
「前の章がファンタジーだったのに、次は都市伝説を探りに行くように現代ファンタジーをはじめてくれる。全く全部のせをしてくれるねこの作品はさ!」
「だな! 杉沢村伝説でも探しに行くくらいのノリで陽介の故郷に行くんだもん。ここで読ませにくるか……前章の鬱々とした展開が好きかどうか、読みてを選びそうだけど、逆にこの章は万人受けしやすいよな」
二人は笑う。セシャトはなんとか話しに入ろうと思い出したかのように言う。
「テスカトリポカさんとかも、陽介さん達の村の風習に似ていますよねぇ!」
子供達を生贄に捧げていたという事だけしか一致しないのに、茜こと青螺、アナザー魔王ことクリスは狂気的に嗤う。それは同朋サイコパスたる文芸部として歓迎するように。セシャトはこの二人を見て呆れる。物語を書く事が好きで、読む事が好きで……人でありながら片足を突っ込んでしまっている部類。クリスは突然話を変える。
茜こと青螺に何か食べる物はないかと聞いてキャベツしかない事に苦笑しながらそれを炒めた。
「藤子不二雄の漫画に『まんが道』って作品があってね。そこに出てくるみすぼらしい食事が実に美味しそうなんだ。キャベツ炒め。食べようか?」
きっと普段絶対こんな物を食べないであろうクリスが作った手作りのただのキャベツ炒め。それに冷蔵庫から取り出した三ツ矢サイダー。
「本来は宝焼酎をソーダで割ったチューダで食べるのが伝統なんだけどね」
あまりにも古い作品。そしてマニアック故にセシャトには分からない。茜もとい青螺はドラマで見た事があったが、何故クリスがそんな作品の話をしているのかは分からない。ドラえもんで有名なあの漫画家だが、彼らは狂気を描かせたら彼らが尊敬している手塚治虫をも凌ぐ才能を持っている事をクリスだけは知り、一人三ツ矢サイザーに舌鼓を打ちながら楽しむ。そしてクリスは少しだけ悲しそうな顔をしてみせた。
「あの愚かな髪や、茜君のけぎらっている桃色の髪をしたビッチならすぐさま、それを言うなら『ミノタウロスの皿』だろ。とでも言ってくれたかもしれないね。それにしても神と名乗る奴はどいつも愚かだ」
珍しくクリスが悪態をつく。人の心がまだ残っている陽介を羨むように、作品に同化しているクリスにセシャトは嬉しく思い。そして茜こと青螺は憂いを帯びた眼差しでクリスを見つめる。
「魔法ねぇ……私はこの門番になっても特殊な力の一つも授かれやしない……マジで攫われ損だな。それにしても熊の扱いがリアルだな」
熊という猛獣に関してはたしてどれくらい知っているだろうか? 熊は臆病で、しつこくて、頭がよくて、そして……中々死なない。ライフルを持てるハンターは限られているので、ショットガンで熊を狩る場合、四人同時に至近距離からスラッグ弾を叩き込んで仕留める必要があるが、これまた中々死なない。そして手負いの猛獣程恐ろしいものもない。
「まさにイオマンテだね」
炒めキャベツを実に美味しそうに頬張りクリスは頷いた。
「茜くん、いや青螺君。季朽葉氏達は実に面白い話をしていると思わないかい? 神に似ている生物だってさ……ははっ! これは滑稽だ」
瓶入りのサイダーを自分にも注いで青螺もくいっと一杯酒でも嗜むように飲む。
「あぁ、人間こそまさに神の化身みたいなものだもんな」
「神が何をできる? 所詮は天変地異を起こすか、軍勢を用いて人間を殲滅する程度だ。今や人間は指一本で地球を滅ぼす程の力を持っている。まさに神を越えた」
「実に人間らしい言葉だなクリス、人間は万物の霊長ぶってるから、夢魔に一泡吹かされるんじゃねーのか? それとお前……本当にクリスか?」
茜もとい青螺はまじまじと見つめる。セシャトにはどういう意味か分からなかったが、クリスはサイダーを飲みうんうんと頷く。
「陽介氏は実に心が広い。是非とも一度お茶でも一緒にしたい事だよ。なんなら、彼さえよければ僕の身体を差し出しても構わない」
「ぶっ!」
茜もとい青螺は飲んでいたサイダーを噴き。セシャトはその本が出れば購入して古書店にまれにやってくるそっち系の作品を好む女の子達に卸してもいいなとふとそんな事を考えていた。
「まてまてまてまて! どっちが受けでどっちが攻めなんだ?」
茜もとい青螺の超どうでもいい発言。それにクリスは口元に手をやりふむと考える。そして娼夫の表情を作ってからこう言った。
「僕はどっちも大丈夫だよ」
茜、もとい青螺は鼻血をぶしゅつと噴いて倒れそうになりながら、鼻にテッシュを詰めて首元をトントンと叩く。
「茜螺さん、その鼻血止めは迷信だそうですよ?」
セシャトのツッコミに青螺は鼻をつまんで上を向く。そんな様子を見ながらクリスは獅黒がオーバーキルに近い魔法を放つシーンを読みながら茜もとい青螺に尋ねた。
「そうだ。螺穂子君。君も魔法を使えたね? 実際どうなんだい? 本物の獅黒氏の魔法は相当な威力なのかい? さすがに僕でも魔法なんて未知の力は使えないからね」
クリスはそう、訳の分からない事を言ってのけた。セシャトと茜もとい青螺は顔を見合わせてまたまたクリスの時々見せる不思議ちゃん気質なのかと笑って流していたら、突然真顔になりクリスはこうつぶやいた。
「やはり東京上空で死んだ茜君とは別人か……どうやら僕がこの偽物の祈りの門に来た理由が少しわかってきたような気がするね……それにしても茜君じゃなくて青螺君は人のカウンセリングなんてできるのかい?」
セシャトはニコニコと笑いながら黙って話しを聞いていたが、絶対に無理だろうなと思っていた。神保町でも茜ヶ崎理穂子もとい青螺の世紀末女子高生伝説は広く住民達に知れ渡っている。鳴かんなら、喰ろうてしまえとホトトギスと小学生の青螺が読んだ川柳が張り出された時は誰もが納得の一句だったという。
「はぁ? そんなもん出来るに決まってんだろーが、一応私はここの門番やってんだぜ! それにしてもこの閑話にも近い停電の話は安心して読めんな!」
そもそもが内容というより読み取りが難しい作品であるから、たまにこういう話を読んで和めるのは随分と助かるなと茜もとい青螺は語る。
「そうだね。是非僕はこの社畜眼鏡が人材として欲しいところだよ。沢城さんに獅黒氏、両手に華だ」
「メジェドさんやアリアさんをお忘れじゃないですか?」
セシャトのその発言にクリスは少し固まる。何かを思い出すように数秒考えてからセシャトと茜もとい青螺に微笑んでみせた。
「あぁ、いたね。そういうのも。僕の会社は商品多いから何の事が思い出せなかったよ。職業病って怖いね」
獅黒が鬼畜眼鏡ならば、このクリスは鬼畜ハーフじゃないだろうかと青螺は思いながら、やはりどこかこのクリスに違和感を感じる。
「じゃあそろそろ次のテリトリーにお邪魔してみようかな。次に誰が出てくるのかだいたい予測はできてるけどね」
「あの頭と頭の中がピンク色のイカれ女か?」
「いや、あれは出てこない。あれが出てきたら僕は多分我慢できないかもしれないからね。じゃあセシャトさん、行こうか!」
「あっ! はい」
「おい! 忘れ物だ」
そう言って青螺は二人に履歴書を渡す。それを受け取るクリスに茜は瞳孔が開いた狂気的な表情で聞いた。
「お前さ? 祈りの門に何を願うんだ?」
「僕が願うもの? あの日の時間……」
「あの日の時間?」
茜もとい青螺が聞き返すとクリスはいつもどおりの女性を殺す笑顔を見せる。そしてクリスは呟くように、読み聞かせるように二人に言う。
「祈りの門の住人達が気づけば人ではなくなったように、何かを願えば代償として人ならざる者になるのかもしれないね。そういう意味ではもしかすれば既に僕は人じゃないかもしれない」
そう言って両手を上げる。鬼気迫るクリスから目が離せないでいるとクリスは舌を出して言う。
「なぁーんちゃって」
毎回紹介小説は資料を集めたり、各種得意分野の人々にアポを取りその作品を読んでいただき(部分的でも)、お話を伺う事があります。今回は社会学者さんと民俗学者さんです。やはり学者さんは鋭い目線で色々教えてくれたそうですよぅ^^『祈りの門 朱色の喪失 箸・にしきたなつき』色んな方面から考えて読んでみるのも楽しいかもしれませんね!