妬みの門の門番現る
皆さんはお正月に何を食べましたか? 私はベビーカステラを頂きましたよぅ! 最近はベビーカステラも馬鹿にできないスイーツに生まれ変わりつつあります。各種お店において生地に力を入れているんですよねぇ^^ 実はダンタリアンさんとシアさんからお年玉を頂きましたので、何か春物の服でも買おうかと思っています!
「まぁ、座るん! そして麦茶を飲むんな? ここは『妬みの門』なん」
そう言ってヘカ、もとい獅黒はセシャトとクリスに麦茶を出す。セシャトは絶対こんなお茶は口にしないと思っていたクリスがグラスを持つとごくごくと飲み干す様子に一人で驚いていた。
「ところで、えっと……へ黒さん?」
「へ黒じゃないん! 獅黒なん!」
セシャトも同じようにお茶を頂きながら彼女に話す。
「獅カさん、ここは一体?」
「歯医者みたいになってるん! 獅黒なん! さぁ、話すん! 獅黒より面白い話がかけるとは思えないんけど、妬む程面白い作品の話を聞いてやるん!」
セシャトとクリスは顔を見合わせると今の状況を作り出した物語を自称獅黒に話す。
「豊穣の神が鬼っておかしくないん?」
「うん、僕は君の存在がおかしく感じるけどね。そもそも豊穣の神様は日本では稲荷が有名だけど、地母神だなんて言われる事もあるんだ。これ起源はいくつかあるけど、君たちに近しい名前で言えばイシス、僕等のよく知る名前で言えば獄卒エンマ大王、どちらも鬼を統べる者だよね?」
クリスは手の中でスマートフォンのような物を遊ばせながらそう語るのでセシャトは何処で話に入ろうか麦茶を飲みながら考える。この物語におけるある種の禁忌について質問してみた。
「お二人は異性の方に告白された事はありますか?」
「獅黒はモテモテなんな! いつも何処でも告白されるん!」
「僕は異性だけでなく同性にも数えきれない程に」
一人は見栄、もう一人は事実なんだろう。セシャトは呆れながら聞かなければ良かったと後悔した。されど、この空気をぶち壊すのはヘカもとい獅黒。
「そこのイケメン、異性に言い寄られて頭が沸騰する気持ちになっあ事はあるん?」
「ない……と言えばウソになるかな? あると言えば冗談になるかもしれない。僕の中では世界で女性として意識できる人はただ一人ですよ。ですから、こんな素敵なお嬢さん二人に囲まれても何とも思えない性がにくいかな」
ウィンクしてみせると獅黒はうんうんと満足そうに頷く。されど、クリスは空気をぶち壊す事を言ってのけた。
「陽介氏と和泉氏の二人乗りは非効率的だね。腰ではなく、肩に手を置く方が運転側が安定するんだよ」
セシャトは原付の免許を取りに行った時に同じ事を教習で教わり、物語的にはなんとも味気の無い話だなと苦笑した。
「クリスさん的にはお料理の上手な女の子はポイント高いんですか?」
「えぇ、何か一つでも自分に自信があるという事は良い事だよ」
ヘカもとい獅黒もクリスに質問。本来、古書店『ふしぎのくに』にやってきた客の反応をセシャトとヘカもとい獅黒が聞き手に回る。
「イケメン的には同性愛はどう思うん?」
「生産性のない無意味な行動だね。ただ、僕は薔薇も百合も物語作品としては愛してるよ。だけど、現実でそれをする連中は残念だけど分かり合える気がしない」
大企業のCEOである彼の言い分は面白かった。同性愛者を否定する気はないが、同性愛者は自分達の自由を宣言するばかりで受け付けない人間の考えを無視している事に関して矛盾している事を述べた。これを週刊誌にでもリークすれば、大きな炎上騒ぎくらいにはできそうだが、そんな考えを忘れ去らせるクリスの一言。
「陽介氏の性癖はおかしくはないよね。綺麗な花や蝶に欲情する者もいるし、誰かの成功に欲情歓喜するものもいる。肉欲だけを性癖として重きを置くのは、むしろ獣的思考じゃないかな? 故に陽介氏は異常じゃないと僕は証明できるさ」
「では、クリスさんの性癖とはどんなものなんでしょうか?」
セシャトの質問に対してクリスは狂気的な目を見せてから艶っぽく返す。
「秘密。そんな事より鬼や吸血鬼が太陽に弱いという意味をご存じですか?」
クリスが麦茶のおかわりを所望するのでヘカ、もとい獅黒が面倒そうにグラスに注ぐ。そして獅黒はこう返した。
「鬼は陰とも書いてオニなん。吸血鬼もその亜種なんよ。だから、日に弱いんな! これで決まりなんな!」
そんな獅黒を見てクリスは鼻で笑った。
「君は馬鹿代表だな」
「馬鹿じゃないん! 獅黒なん!」
「そもそも吸血鬼は光線過敏症。所謂紫外線アレルギーの事だね。そして白人に多い病気の一つだよ。そして、鬼。これは日本や大陸において海外から漂流してきた人々だよ。日のある内は外に出られず、夜ならたまには外を出歩ける。そんな連中を見たら何も知らない人はどう思う? あまつさえ、ほりの深い外国の顔立ち、太陽の下で身体に突然アレルギー反応が出たら……学の無い連中はこう思うんだよ。化物だ! 鬼だってね」
それに獅黒はスーツをがしっと掴んで悔しそうにクリスに反論してみせた。獅黒のヘカ成分が異常に強め、とうか角が生えてスーツをきただけのヘカである。言う事もわりとどうでもいい事。
「鬼は豆に弱いん! 吸血鬼は十字架とにんにくに弱いん! これはどうなん?」
「前者は大豆アレルギー、後者はネギアレルギーと金属アレルギー、以上反論終了。では僕からもお二人に質問をします。何故、人間は物を形に残すのか? この質問分かりますか?」
美しいまま永遠にしたいという陽介の考えと同じなのか、それとも違うのか? そしてそれを人間ではない、セシャトとヘカ、もとい獅黒に聞くというのだから中々に罪である。色恋沙汰をようやく理解し始めた陽介に和泉、後の事よりもそんな彼らの青さをただ楽しむべきその項でクリスは違うところに視野を持つ。そのクリスに並び立つのは人間ではない。それこそ、物語のテラーたる自分でなければならないだろうとセシャトは目を瞑り恐らくはクリスの望むべき答えを伝えた。
「神は人が作り出したものです。その神に並び立つ為の大いなる独り相撲ではないでしょうか?」
「マーベラス! 素晴らしいですセシャトさん。人間は自己満足、自画自賛、承認欲求。全てはただ自分の為に生きているんです。だから、物を形として残すのですよ。故、僕も神に挑もうと思って気が付けばここにるわけです」
妬みの門を守るヘカもとい獅黒は本来自分のステージで自分が自信満々に話すハズのこの場所でクリスに殆ど主導権を奪われている事に頬を膨らませる。
「陽介氏は時間と精神をすり減らし、ひと月を生きていく給与をもらう。僕の会社はフレックス制だから、精神面のケアは出来そうだけど、多くの都心の企業は、こうなんだろうね。煙管といえば、ダンタリアンと神様がよく吸っていた」
その時のクリスの表情は何処か幼くなつかしさを感じていた。それを耳ざとく聞いていたのはセシャト。
「神様はおタバコを吸われてたんですか?」
「あれは、弱いくせに酒も博打もするろくでなしだったよ。それに比べて陽介氏の人ならず家族たちは陽介氏に甘すぎる……そして羨ましくもあるね。僕は家族とこうした団欒をする事もなかったんだ」
クリスの表情は一切変わらない。セシャトとヘカもとい獅黒もクリスの感情を読む事ができない。それは悔しいのかそれとも悲しいのか全く伝わってこないのである。
「クリスさん、アリアさんとは一緒にお食事を取ったりしないのですか?」
セシャトの質問に対してクリスは固まる。一体何を言われているのか理解できないようにも見えた。
「アリア……?」
「あの可愛らしい、クリスさんの妹さんですよぅ!」
「あぁ、ああ! アレか。うん、全部元気ですよ。ですが、アレと食事を一緒に取った事は一度もないですね」
ヘカもとい獅黒がその発言を怪訝そうに聞く。そしてクリスを警戒しながらも語る。
「ここは少し読者がダレるかもしれないんな? 小さな伏線を気にするような昔ながらの読者でないと、Web小説の読者は視野が基本狭いん」
「ヘ黒さん、まさか君と気が合うとは思わなかったよ」
「へ黒じゃないん! 獅黒なん! このバラバラ死体の事件、気になるんんな!」
「井之頭公園の事件をモデルにしているのかもしれないね。あれの犯人、警察はめぼしをつけてるんだけど、国外逃亡中で手が出せないんだよね」
なんでそんな事を知っているのかとセシャトは聞きたくなったが、今は不要な質問。そしてセシャトは吸わないが、神様は昔吸っていたというタバコについて興味がわいた。
「クリスさんは喫煙されるんですか?」
「好んでは吸いません。作品作りの為に何度か吸った事はありますが、電子タバコや加熱式タバコは不味いですね。どうせなら彼らのように紙タバコを吸うべきだ。でも、琥珀氏のように僕はラムネ菓子の方が好きだね。彼は味のよく分かる男のようだ。落雁や和三盆糖程ではないけど、あのラムネの瓶型のラムネ菓子はほぼ百パーセントブドウ糖。子供用の駄菓子にしてはよくできているんだ」
クリスがそう語る中でセシャトは気まずそうにそのラムネ菓子をポシェットから取り出してみせた。セシャトは森永のラムネとキャラメルを常備している。
「お一ついかがですか?」
「「えっ?」」
クリスとヘカ、もとい獅黒が若干引きながら変な声を出す。さすがにそんな物を持ち歩いているセシャトを変人であると理解してしまった。クリスは気を取り直してから、ややセシャトを警戒して語る。
「ようやくこの作品らしい不穏な空気になってきましたね。でも、僕は思うんだけどね。役に立たない人間より、人一人の命程度で豊穣が約束されるなら、僕ならいくらでも人間を用意してあげるけどね。まぁ、ここで本物の獅黒氏が現れるわけだけど、物語の構成としては中々に良いタイミングだよね」
ヘカ、もとい獅黒は自分も本物なん! と叫ぶがクリスはそれを無視する。代わりにクリスは辛そうな表情を作る事もなく呟く。
「本当に祈りの門があれば、僕も救いたい家族がいたんだよね。でも、そうはいかない。甲を成すべくには乙はならない? バカバカしい、僕は全てを元に戻して見せるさ、この混ざった世界の事もある程度は理解してきた。君はついてくるのかい? 妬みの門の番人」
ヘカもとい獅黒は難しい顔をする。
「獅黒は受付なんな! ここをまっすぐいくと第一試験会場があるん! そこに向かって二人は行くといいん! この先には二人を精査する番人たちが待ってるんな!」
ない胸を張って笑う獅黒にセシャトは頭を下げる。
「では獅カさん、行ってきますね!」
「歯医者じゃないん! 獅黒なん!」
セシャトとクリスはヘカ、もとい獅黒のテリトリーを後にすると次の建物らしき場所が見えてきた。
「中華風なれど何処か和を感じる。ここは首里城を意識してるのかな?」
「聚楽第のようでもありますよね」
「うん、セシャトさん。君とは何処かでじっくりと物語について話したいものだね」
クリスの大きな独り言と共にセシャトは次なる建物をノックした。
『祈りの門 朱色の喪失 箸・にしきたなつき』本作は中盤以降からの盛り上がりが非常に面白いと思われます。そういう意味でもWeb小説より一般文芸よりなのかもしれませんね。読み応えが非常にある作品ですので、ゆっくりと時間をかけて読んでみてくださいね^^




