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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第一章 『祈りの門 朱色の喪失 箸・にしきたなつき』
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一、読書。二、甘味。三、シンクロ

皆さま、新年あけましておめでとうございます! 今年もどうぞよろしくお願いします! 去年は私達の新しい仲間として制御不能なダンタリアンさんや静かに仕事を進めていただけるサタさんが入られましたね!

実はリアルゴスロリ、ヘカさんも古書店『ふしぎのくに』に参加していただけましたよぅ! 三年目、私達も試される年です! 応援宜しくお願いしますねぇ!

 この世の中にはシンクロという言葉がある。偶然そうなった。偶然、同じ事を考え、同じ答えにたどり着いた等……新年にとある古書店の女店主は金色の鍵を手に取った。



「хуxотоxунихуxакутоxуноберу(Web小説物質化)」



 また、とある会社の社長は自分の自宅地下作った研究所でとあるシステムを起動した。



「イシュタル起動」



 その二人のシントニーはシンクロを引き起こし、そして神の御業とそれを模した人の妙技はシナジーを起こした。

 神保町の小さな古書店と赤坂の豪邸という別の場所にいたハズの男女が同じ場所に移動した。

 女性の方は驚く。



「はわわわわ! なんでしょうここは!」



 男性の方は違った。



「どうやら、ここは物語と現実の狭間といったところかな? メジェド、僕を一度門の前に戻せ……メジェド、沢城さん……まったく使えない機械と人間の雌だ」



 そう言うも怒っているわけでもなくその男性は目の前にいる女性に微笑んでみせた。



「困りました。帰れなくなっちゃいました。確か……セシャトさんでしたか?」

「そう言う貴方は確か、アリアさんのお兄さん」

「はい! 棚田クリスです」



 本来出会うハズのない二人が……出会った。セシャトは金色の鍵を持って何かを呟く。それをクリスは真剣に見つめるも何も起こらない。



「むむむむ、これは困りました」



 セシャトが困っているのをクリスはほほ笑むと両手を見せてお手上げポーズをしてみせた。



「新年早々、実に面白いとは思いませんか? セシャトさんが何の作品に介入しようとしたか、当てて見せましょうか? 『祈りの門 朱色の喪失 箸・にしきたなつき』ではありませんか?」

「あら、そう……ですねぇ」

「ここが何処かを把握すると共に少し歩きましょうか?」



 そう言ってクリスはセシャトの隣に並んで歩く。クリスはそして自然に話し出した。それは二人に共通した物語。



「獅黒、蘇方、季朽葉、青螺。このいずれも。古い物、いや取り残された者と表現したかったのかな? う~ん、どうなんだろう?」



 クリスの質問にセシャトはふふふのふと笑う。そしてクリスの言う考えに対して指摘をしてみせた。



「お三方は分かるのですが、獅黒さんは完全な造語ですし、古い者でしょうか?」

「あはは、一本取られちゃったなぁ……そうだなぁ~なにか後付けできたかなぁ、鬼……とかどうでしょうセシャトさん」



 鬼とは解釈の仕方が違えど、古い者を意味する。というより、遺された者というクリスの解釈だが、クリスはこの四人をこう読んでみせた。クリスは目を瞑りながらクスクスと笑う。セシャトに続いて言った事。



「彼らの世界は僕達の世界に近いところにある。なにせ通販があるんだもの。是非とも僕の会社の製品を使って欲しいものだね。異世界の王に妖怪ときた。この作者は色々と盛り込んだね。それらはだだ”愛”の形を書きたいだけだというのに……まったく素直じゃない」



 棚田クリスの読み取り方にはセシャトは実に勉強になった。セシャトが聞き手に回っているのでクリスは話を続けた。



「この作品、誰かは縦文が良いと言ったんだけどね。僕は横文で読むのが好きなんだ。この作品ってさ、単純に飾らない文章がわりよく頭に入る。基本は三人称単数だ。この門に関わりのある人々は畏れ、う~ん違うな恨み。どちらかといえば憾みの方かな? 僕はそういう物が表現されるヘンテコな作品が大好きなんです」



 少年のように微笑む、どんな風な子供時代をすごしてくればこんな笑い方が大人になってできるのかセシャトには想像できなかったが、窮地に陥っているハズなのに、クリスと話しをしているととても安心できる。

 そもそも、物語の考察に集中したくなる。



「陽介氏の生活を読んでいると僕の子供の頃を思い出しますね。勉強を頑張れば甘く狂おしいオヤツを頂いたものです」

「はっひゃああ! クリスさんも甘い物がお好きなんですか?」

「えぇ、セシャトさん程ではありませんが、ですが……勉強も出来過ぎると反感を買いますね。僕が三つの頃、帝大を出た家庭教師をつけていたのですが、四つを数える頃には彼は自分の無能さを僕に虐待をするという事で憂さ晴らしをしていましてね」



 環境は違えど、いじめにあっていた陽介に境遇すら似ている。それも四歳の子供であればされるがままだっただろう。



「クリスさんはさぞお辛い気持ちだったんでしょうね……胸中お察しします」

「いえいえ、エウレカでした。僕はどうすればこの愚か者を合法的に処分できるかな? というトライアンドエラーを楽しめましたよ」



 セシャトは固まる。人の目ではない……そして感激した。次は逆にクリスが驚く。何故セシャトは感激しているのか……



「まさか、クリスさん! 同化をして私を楽しませてくれているのでしょうか?」

「はい?」

「クリスさんのその表情と演技。まさに祈りの門の住人ですよね!」

「ははっ……まさかここまでとは……そうですねセシャトさん、そういう事にしておきましょうか、貴女を観察するのもまたエウレカだ。それにしても陽介氏は中々強い男の子ですね! 子供の頃は足が速かったり、喧嘩が強いとモテると聞きました」



 そういう物なんだろうとクリスは学校という組織に所属した事がないセシャトのように語るので不思議に思った。



「クリスさんの子供の頃はそうではなかったのですか?」

「僕は小学校と中学校には行った事がないんですよ。ステイツの大学を出て、編入で少しだけ日本の高校に入ったくらいです。ですから、幼少期は一人遊びをするように研究ばかりしていましたね」

「研究ですか?」



 クリスはジャケットの懐からタバコでも取り出すようにチョコレートの箱を取り出した。そしてそれをセシャトに一つ手渡す。



「どうぞ」

「あらあら、レオニダスですねぇ! ありがとうございます」

「ペルソナモデル。デザインチルドレンと言った方が分かりやすいですか? そうですね。この物語で言うところの豊穣の神様を作る為の施設がありました。僕の両親は僕をそこに入れ、あらゆる問題解決ができる人間に育てたかったんでしょうね。重工棚田の為にね……神事というものを今の目線で語れば仕掛けなんです。僕は沢山の仕掛けを行いましたよ。僕の会社を豊穣させる為にね。セシャトさん、果物を沢山実らせる為に必要な事ってご存知ですか?」



 セシャトは考える。このクリスは物語を直接な具体例を出して話す事を得意としているんだろう。それ故に応えてみる。



「肥料を撒くとかでしょうか?」

「そうですね。ですが、実がなりだすと、間引きが必要なんです。ですから僕は僕の会社の不要人材を間引きしていきました。その中に父と母もいましてね」



 ごくりと喉を鳴らすセシャト。陽介はまさに人身御供に差し出されるというところ、まさかまさかクリスは両親を……



「ご両親は……今どちらに?」



 ドキドキと高鳴る心臓。そうあってはいけない。されど、期待してしまう。もしかして、クリスの両親は豊穣の鬼神への供物となったのか?



「僕の両親は……モナコで隠居してます! ふふっ、死んでしまいました。とくると思いましたか? これが僕の十八番の物語なんです。正直彼らに商才はなかった。ですから退いて頂き僕が総帥をというお話です」



 セシャトはドッと笑ってしまった。このクリス、大企業の総帥でなければ是非とも古書店『ふしぎのくに』の従業員に欲しいくらいだ。

 相手を楽しませ、考えさせ、そして引き込ませる語り。人間ではないセシャト以上にテラーとしての本質を体現している。



「セシャトさん、不思議だと思いませんか? 鬼や神等と呼ばれる存在について」

「それはどういう事でしょうか?」

「人は死んだら仏になる。人を殺したり、食べれば鬼となる。そして愛すらも凌駕する尊敬を持ってその人物は神へと昇華します。崇拝している人の勝手なエゴですけどね。真永と言う神様は実に甘いですね……セシャトさん、貴女を生み出した神様のようです」



 クリスは感情こそ出さないが、セシャトのよく知る神様に対して不快感を露わにした。セシャトは神様が人に迷惑をかける事はしょっちゅうなので、そこよりもクリスが神様の事を知っている事に驚いた。



「神様の事、御存知なんですか?」

「えぇ、僕が真永に出会った陽介氏の年齢くらいの時に、少しお世話になりました。今よりももっと高身長で足元くらいまで髪の毛が長かったですけどね。他にも何人かいましたが、陽介氏程、大事にはしてもらっていないです」



 一瞬セシャトはクリスから憎悪を感じたが、いつもの調子でクリスは冗談まじりに笑ってみせた。これもクリスの演技だったのかと再び笑ってしまう。



「クリスさんは本当にお上手ですねぇ」

「陽介氏、これは作者のありたかった自分。あるいはもしも、自分が存在していたらというキャラクターかもしれませんね。彼に対する感情。いいえ筆の入れ方は誰もが感じるでしょう」



 神様の事をもう少し聞きたいと思っていたセシャトだったが、突然話が変わり、そしてこれまたセシャトが気になる話をしてくれる。作品は作者の鏡とは言うが、この作品はもしかすると心なのかもしれない。

 そんな事をセシャトは返そうと思った矢先思い出したようにクリスはセシャトに教えた。



「そういえば、神様のお小遣いは一日三十円でしたね」

「えっ……神様は一日三千円だったと仰っていたのですが……」

「セシャトさん、門があります」



 クリスもセシャトもまさか! この門の意味はあの門なんじゃないかとそう思う。二人の思考が形となって現れたのか?

 でもどう考えても中華系の王宮門。そこがガチャンと開くとセシャトとクリスがよく知る人物が現れた。おかっぱに不健康そうな隈をつけた少女。



「ヘカさん!」

「ヘカさんじゃないん! 獅黒なん!」



 完全にヘカなんだが、スーツを着て、確かに角も生えている。セシャトがクリスに助けを求めようと思ったら、今までの余裕の表情ではなく、心底嫌そうな顔でヘカもとい獅黒を見つめている。



「セシャトさん、多分混ざりましたね」

『祈りの門 朱色の喪失 箸・にしきたなつき』、本作を読んで頂きたいのですが、ご本人はBL強めと仰っていますが、私はどうも本作に関してはミステリー強めの人間ドラマ、所謂歌舞伎であると考えています。これは私、セシャトの意見であり、古書店『ふしぎのくに』の考えてはありませんが、的を得ているのではないかと考えています。非常に洗練された文章も読者を飽きさせませんよぅ! 今月は本作を読んで、1月は逝くという言葉を考えてみませんか?

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