第5話 武器入手
「……ところで、さっきから気になっていたんだけどさ」
ショーイチが云った。
「この建物は、一体何なんだ?」
「……ここは、今は使われていない公民館だ。今は私が家として利用している。もう一人だけ、一緒に住んでいる友達がいるんだが、今は町へ買い物に行っている。ちなみにこの町の名前はコナラ。そしてここはエリアGF」
ユウは一通り説明を終えると、立ち上がった。
「さて、これから2人の武器を調達しに行こう」
ユウはそう云うと、拳銃の残弾を確認して、回転式弾倉を戻した。そして拳銃を革製のホルスターに戻す。西部劇のガンマンや保安官のように、ホルスターは腰の位置に吊るされている。
「ん、そうだな」
「どこで?」
ゴローが少し嬉しそうに云う。
「え……えと『リベレーター』の支部であり、武器屋の『インドラ』でな」
ユウは、ゴローの予想外の食いつきに、少し驚きながら答える。
そういえば、ゴローって武器とかも好きだったな。ショーイチがゴローを見て思う。
「……早いとこ行こうか」
「そうだな。じゃあ、着いてきて」
ユウはそう云うと、二人を公民館の外に案内した。
「自動車がある。こっちだ」
ユウについていくと、そこには確かに自動車があった。オープンカーで、映画から出てきたような古い型のアメリカ車だった。ユウは運転席に座ると、どこからかキーを取り出して回し、エンジンを掛けた。アメ車特有の力強いエンジン音が轟く。
「えっ? 運転できるの!?」
ショーイチが云う。
「この世界では、人間界でいう運転免許のような資格は無い。当然、教習所のような訓練施設もない。だから運転することには制限が無いんだ。さ、適当に乗って」
ユウから云われ、2人は後部座席に乗り込む。2人が乗り込むと、ユウはコラム式のシフトレバーを操作し、ギアをドライブに入れてパーキングブレーキを解除した。
だ、大丈夫なのか?
「安心しろ。私は10歳の頃から運転しているんだ」
2人の不安そうな表情を読み取ったようで、2人は少し驚く。
「行くぞ!」
ユウはアクセルを床まで踏み込んだ。アメ車は一気に加速し、二人はベンチシートに押しつけられる。
「のっけからスピード出しすぎだぜ!」
ショーイチが叫ぶ。
「結構なスピード狂だな」
ゴローが意外にも落ち着いた口調で云った。
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アメ車に乗ってから10分くらい走って、武器屋『インドラ』に着いた。アメ車を店の近くに停め、二人はユウに続いて降りる。
ユウがドアを開けると、呼び鈴が鳴り、店の中から男性の声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませー」
店に入ると、そこにはカウンターがあり、カウンターの中にはヒゲ面でメガネを掛けた中年の男が立っていた。バーテンダーのような服を着た男は、白い布で銃の手入れをしていた。
「オーナー、お久しぶりです」
ユウが云った。
「おや、ユウじゃないか。その少年たちは……?」
「政府によって人間界からさらわれてきた被害者です。右側が西澤吾郎、そして左が須藤昭一です」
「ゴローです」
「ショーイチです」
2人は自己紹介した。
「初めまして。私は武器屋『インドラ』の店長でオーナーのチャールズ・ステビア。魔法は使えないが、君達と『リベレーター』を支援している。今や政府は権力によって魔法を使える人たちを強制的に徴兵している。警察も政府の犬としてしか機能していない」
オーナーは云う。
「かつてユーフラテスは文化的な国だったんだ。しかし、現在はまるで軍事政権や独裁政権のような国になってしまった。それは多くの国民が望んでいないことなんだ。昔のような文化的なユーフラテスを取り戻すために『リベレーター』は活動しているんだ!」
「……あの、オーナー、そろそろ」
ユウが口を挟み、オーナーはふと我に返った。
「あ……ああ、すまない。『リベレーター』のことになると、つい熱くなってしまうんだ」
オーナーは頭を掻きながら云った。
「えーと、今日はどんな用だったっけ?」
「ショーイチとゴローの武器を貰いに来ました」
ユウが云う。
「そうそう、それだそれだ」
オーナーは一回咳払いをした。
「それじゃ、本題だ。君達に武器を選んでもらおうかな」
「ホント!?」
ゴローの反応の速さに、一同が驚く。おいおい、なんて速さなんだ。ゴローよ。
「ゴ……ゴロー君、すごい速さだね」
オーナーが驚いた拍子にずれてしまったメガネを直す。
「普段はそんなに早くないですけどね」
ショーイチが云った。
「さて……じゃあ、まずショーイチ君」
「ハ、ハイ」
ショーイチは呼ばれて、少し緊張しながらオーナーの前に行く。
「どれにしたい?」
オーナーはそう云って、ガラスケースを開けた。ガラスケースの中には、大量の銃が置かれている。
「ん~……じゃあ、そいつ2つで」
ショーイチは、小型のサブマシンガンを指さした。手で持つ部分に弾倉を入れるようになっている、小型で軽量なサブマシンガンだ。
「これだね」
オーナーはガラスケースの中から、サブマシンガンを取り出した。
「両手撃ちだね?」
「はい」
「じゃあ、換えのマガジンを5個2セットつけておくよ」
オーナーはサブマシンガンと弾丸をショーイチに渡した。軽量なサブマシンガンでも、それなりの重さはある。
「ありがとうございます。そーいえば……」
ショーイチは思い出したように云う。
「これで人を撃って、死んだりしないですか?」
「強化ゴム弾だから、当たっても死にはしないよ。当たり所によっては実弾よりも痛いけどね」
「ひぃ」
ショーイチは小さな悲鳴を上げた。
「じゃあ、次はゴロー君」
「ハーイ!」
ゴローが少し嬉しそうに云った。
「君はどれにしたい?」
「俺は、それで」
ゴローが指さしたのは、ショットガンだった。
「ほう、君はこれか」
オーナーはガラスケースから銃を取り出す。
「このショットガンは、こちらでは『ガーディアンショットガン』と呼ばれている、レバーアクションのショットガンだ。さらに威力も高い10番ゲージ。それを選ぶなんて、お目が高いねぇ」
「いやぁ……それほどでも」
ゴローがどこかの嵐を呼ぶ園児のように、頭を掻きながら云う。
「じゃあ、換えの弾丸も多めにつけておくよ」
「ありがとうございますぅ」
ゴローは銃を受け取り、まじまじと眺める。ショーイチのサブマシンガンと違い、こちらは少し重さがある。
「でも、これで人を撃つのかぁ……」
さすがに、ゴローも引いている。
「よし。さて、それじゃあ君達」
オーナーは二人に云う。
「「はい」」
ショーイチとゴローが、同時に返事をする。
「銃を扱うのは初めてだろうから、少し店の奥の射撃スペースでトレーニングしていったほうがいい。撃たなければならないときに撃てないのなら、銃を持っていても意味が無いからね」
「えぇ!? な、なあ、ユウ……」
「オーナーの云う通りだ」
ユウが頷く。
「いざというときにあたふたしていると、撃つどころか逆に撃たれる。そうならないためにも、銃の扱いを知っておくべきだ。撃たれる前に撃つ。これは『リベレーター』の鉄則でもあるからな」
「えっ、ちょ……え?」
「お願いします!」
ショーイチはまだ戸惑っていたが、ゴローはすでにやる気になっていた。ここまで来てしまったら、とても断れる雰囲気ではない。
「……やるか」
ショーイチも心を決めると、オーナーに連れられて射撃スペースへと向かった。
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