第3話 魔族の運命
二人が案内されたのは、教室のような部屋だった。机と椅子が置かれていて、黒板のようなものもある。
「適当な所に座って」
少女に促されて、二人は椅子に座る。少女も椅子を持ってくると、二人と向かい合う形で座った。まるで、面接をするみたいだ。
「自己紹介しよう。私はユウ。ユウ・メンタスピカータ。17歳だ。ユウと呼んでくれ。君達は?」
「須藤昭一。17歳。ショーイチでいいよ」
「西澤吾郎。同じく17歳。ゴローと呼んでくれ」
二人は自己紹介した。
「さて、じゃあ本題に入ろうか」
ユウと云った少女が口を開いた。
「君達は人間だな?」
「あぁ、そうだ」
ショーイチが首を縦に振る。
「それがどうかしたのか?」
ゴローが云った。
「私は、魔族といって、君達人間とは少し違うんだ」
「えっ!? こんなに似ているのに!?」
ショーイチが驚いて云った。
「そうだ。その証拠に、眼の色が違うだろう?」
ユウは自分の目を指さして云う。ユウの目は、海のような深い青色だ。
「私達魔族は、普通の人間と違って目の色が多種多様なんだ。魔族と普通の人間を見分ける一番大きなポイントでもある」
「なぁ、俺達の目の色は、どうして片方が変わっちまったんだ?」
ゴローが云った。
「分からないが、おそらくこの世界に来て、眠っていた力や適性が目覚めたんだ。魔族の血が身体の中に流れている、とかじゃないことは確かだろう」
ゴローは、ユウの発言に首をかしげた。云っていることが全く分からない。
「眠っていた力? 適性?」
「魔法を使える力のことだ」
ユウは当たり前のことのように云った。
「えっ……魔法?」
「見ればわかる。こういうことだ」
ユウはそう云って、仏像のように左手の掌を上に向けた。すると、ユウの左手にどこからか水の塊が現れた。
「え、え、えぇえ!?」
コップも何もない場所に、いきなり水が球体になって現れた。ユウの掌で浮かんでいるのを見て、二人は驚く。
そして次に、水は最初から存在しなかったかのように、ユウの掌から消えた。
「どう? これが魔法だ」
「す……すげぇ」
ゴローは感嘆した。
「この世界の半分くらいの人は、魔法を使うことができるんだ。自分自身の持つ魔力と外部から得られるエネルギーを変換して、魔法として使っている」
「外部から得られるエネルギー?」
ゴローが首をかしげる。
「食べることだ」
ユウが答えた。
「なぁ、魔法って、俺達のような普通の人間でも扱えるのか?」
ショーイチの質問に、ユウは返答に詰まった。
「申し訳ないが……私もそこまでは分からない。しかし、君達の眼の色が変わったということは、魔法に対する何かしらの力や適性があるらしい。もしかしたら、魔法を使えるかもしれない」
二人は驚いて、しばらく言葉を失った。魔法が使えるなんて、物語の中のことだと思っていた。
しばらくして、ショーイチが口を開いた。
「ところでさ、ここはどこなんだ? どっかの国かなんかなのか?」
「さっきも云った通り、ここは、ユーフラテスという国だ。そして、ここの世界はバロッキニアといって、人間界ではない。君達からすれば、ここは異世界ということになる。ユーフラテスは、私のような魔族の他にも、様々な人が暮らしている」
「つまり、ここはアメリカのような多民族国家なのか?」
ゴローが訊いた。なるほど、多民族国家か。ショーイチはふと、ゴローが地理や歴史といった社会科の科目の成績がいつもトップであったことを思いだした。地図帳と、よくにらめっこをしている姿を、何度も目にしてきた。
「アメリカとは……人間界のあの大きな国のことか?」
「そうだ。アメリカが分かるのか?」
ゴローが云った。
「もちろんだ。私も人間界のことは、少しだが知っている」
アメリカが分かるということは、どうやらこの世界では、人間界のことはある程度知られているらしい。理由は分からないが。ショーイチはそう察した。
「人間界のアメリカのように、ユーフラテスでは、私のような魔族の他に獣人と呼ばれる種族がいる。他にも小人や少数民族もいる。そして、さっきも云ったように、この世界の住人の約半分くらいの人々は魔法を使えるんだ。しかし、私のような魔族は、獣人に比べて数があまり多くないんだ」
ユウがそう云うと、表情が沈んだ。
「だから、このユーフラテスに生まれ落ちた魔族は……」
ユウは一息置くと、再び言葉を繋いだ。
「生まれながらにして、戦わなければならない」
「な、なんだって!?」
ショーイチが云う。ユウの目には、うっすらと涙が光っていた。
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