第17話 襲撃とゴローの魔法
突然、フライングマシンが大きく揺れた。
「うわあああ!」
全員が叫び、メインキャビンの中を転げ回る。揺れが収まると、最初にユウが立ち上がった。
「いてて……みんな大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ」
ショーイチが云う。
「大したことない……マリアさんは!?」
ゴローが慌てて云う。
「わ、私も大丈夫です……」
マリアが云った。
「一体……何が起きたんだ?」
「分からない。ちょっと、コクピットを見てみよう。万が一ということもある」
4人は前方のコクピットに向かい、そっとコクピットへの扉を開けた。
「な……」
ショーイチは声を上げた。
「コクピットに……誰もいない!?」
コクピットには誰も居らず、ただ、計器と操縦桿、無人のパイロットのイスがあるだけだった。
「このフライングマシンは確か……オートパイロットとかいう、自動操縦機能がついているはずなんだ」
オートパイロットなら、ショーイチとゴローも聞いたことがある。飛行機や船をコンピューターで自動的に操縦する機能のことだ。実際に取り扱ったことは無くても、名称くらいは知っている。
「だからって、操縦士もいないのか?」
飛行機などにオートパイロットがついていることは、そういうことに詳しくないショーイチも、一応知っていた。それに、たとえオートパイロットがついていても、操縦士が必ずいることも、知っていた。
「……こちらの世界には、空を飛ぶ乗り物はほとんどないんだ。だから、操縦できる人もほとんどいないんだ」
さきほどのユウの言葉を思い出す。完全に忘れていた。
そのとき、またフライングマシンが揺れた。
「くそっ! これは政府軍の攻撃だ!」
計器盤にあるモニターに表示された警告の表示を見て、ユウが叫んだ。
「オートパイロットがやられた!」
「ど、どうやって攻撃してきたんだ!?」
ショーイチがユウに訊く。
「分からん! だが、きっと魔法に違いない!」
『緊急事態発生、緊急事態発生。総員退避してください』
緊急アナウンスが、機内に響き渡る。
「おい、退避といっても空の上だから逃げようがねぇ! スカイダイビングでもやれってことか!?」
「落ち着け! まだ手段は残っている!」
ユウはそう云うと、計器盤についているボタンを押した。
「ここを押せば、オートパイロットが解除されて、手動操縦に切り替わるらしい。出発前に、カプシカム司令官から教えてもらった!」
「操縦できるのか?」
「や、やってみる……!」
ユウはそう云うと、操縦桿をゆっくりと動かす。しかし、フライングマシンは少しずつ高度を下げていった。
「お、思うように動かない……!」
ユウが自信無さげに云う。まずい。このままでは墜落だ。
ショーイチが動き出そうとしたとき、ショーイチの隣から1人の人影が躍り出た。
「俺がやる!」
ゴローがそう云って、ユウから操縦桿を奪い、パイロットのイスに座った。
「お、おい、ゴロー!」
ゴローが操縦桿を握って動かすが、高度は回復しない。フライングマシンはまだ降下を続ける。高度計が、フライングマシンの高度が下がっていることを示していた。
「ゴローさん……」
マリアが不安そうに云う。
操縦桿を握ったゴローの中には、不安が渦巻いていた。このままでは、全員死んでしまう。何とかして、高度を立て直さないといけない。
もう、後戻りはできない。
思えば、いつも誰かに守ってもらってきたような気がする。いつだって、何かあったら逃げてきて、何かに立ち向かったことなど1度もない。
しかし、こっちの世界に来てから俺は変わった。今までの自分が嘘だったかの如く、使った事も無かった銃を手にして、ずっと戦ってきた。
そうだよ。俺だってやればできるじゃないか。俺だって、ちゃんと戦えるんだ。これからは守られる側じゃない。守る側だ! それに、今はマリアという最愛の人だっている!
マリア、ショーイチ、ユウ。
絶対に、みんなで生きて本部に辿り着くんだ!
俺が……絶対にみんなを守るんだ!
「うおおおお! 上がれえええ!」
ゴローが操縦桿を引きながら叫ぶ。すると、ゴローの空色の左目が光った。それと同時に、フライングマシンが風にあおられ、高度を持ち直す。
「うわっ!」
いきなりフライングマシンが上昇し、ユウとマリアが驚く。
「高度が上がっていく!」
ショーイチが叫ぶ。高度計が、少しずつ上に向かって動いていく。
「やったぁ! ……あれ?」
ゴローが我に返ったように云う。
「今のって……?」
「なんか、フライングマシンが風にあおられたように揺れたな」
ショーイチが云う。
「ゴローの左目が光ったのを見た……。間違いない、これは魔法だ!」
ユウが叫ぶ。
「――ということは、ゴローさんは……風属性なんですか!?」
「ね、ねぇ、俺がどうかしたの!?」
操縦桿を握りながら、ゴローが訊いた。
「ゴローさん! ゴローさんは風属性の魔法が使えることが分かったんです!」
マリアが嬉しそうにそう伝える。
「俺が……風属性だって?」
ゴローが目を丸くしながら云う。
「これで全員の魔法の属性が分かった。後は本部で詳しく調べてもらおう。政府軍の攻撃も、どうやら振り切れたらしい」
「じゃあこのまま、本部まで一直線だな」
ショーイチが云った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
アクセスが179PV達成しました!
ユニークアクセスが100PV達成しました!
ありがとうございます!





